医薬品評価委員会

重点課題

医薬品評価委員会としての重要な活動課題としては、まず日本における創薬力強化、ドラッグ・ラグ/ロス解消に向けて、治験・臨床研究エコシステム確立とGCP Renovationの治験・臨床研究の国内実装が最重要な取り組みとなる。また医療の発展に向け患者さん・市民が参画する機会が増加しており、医薬品業界においても重要な課題として採り上げられている背景を踏まえ、委員会内の各専門部会、委員会タスクフォース(TF)で行われているPPI活動について委員会内外で連携し、製薬協全体としてより効率的な活動にまとめていくことが必要と考えられる。また非臨床分野の課題としては、動物愛護管理法改正への業界の立場での適切な提言等対応である。本法は5年ごとの改正であり、来年の改正での主な改正論点は「3Rs (動物試験の代替、削減、苦痛の軽減)の義務化」と「製薬企業の第一種動物取扱業者化(義務化)」の2つである。これらが改正に含められると動物試験に大きな影響があることから、製薬協としても関連団体と連携し、今後の改正に向けて適切に意見を述べる必要がある。

2025年度委員会活動計画としては以下の10の活動を重点テーマとし、革新的技術・方法に関する活動や政策提言を行うことにより、「日本の創薬力強化」を推進するとともに、世界の人々の健康増進に貢献することを、医薬品評価委員会の目標とする。ICH E6 R3を含むGCP Renovationの治験・臨床研究の国内実装を進めるうえで重要な年となり、テーマの(1)治験・臨床研究エコシステム確立の推進、および(2)ICH-GL臨床研究/薬機法改正の規制対応をより重要なテーマとした。

  1. 治験・臨床研究エコシステム確立の推進
  2. ICH-GL臨床研究/薬機法改正の規制対応
  3. 分散化臨床試験(DCT)を含むデジタルトランスフォーメーション(DX)・AI活用
  4. リアルワールドデータ(RWD)/リアルワールドエビデンス(RWE)活用
  5. ファーマコビジランスの最適化
  6. 適合性調査の最適化
  7. ニューモダリティの取り組み
  8. アジア地域の環境整備と活性化
  9. 患者市民参画(Patient and Public Involvement and Engagement、PPIE)活動
  10. 国内情報の海外発信(成果物の英語化、公表目的なども整理)

取り組み内容

医薬品評価委員会では、基礎研究部会、臨床評価部会、ファーマコビジランス部会、データサイエンス部会、電子化情報部会、メディカルアフェアーズ部会の各専門部会に分かれて、委員会の実施計画に則し、かつそれぞれの専門性を活かした課題に取り組む。

委員会タスクフォースは昨年から継続の医療情報データベース活用促進タスクフォースおよびデジタルトランスフォーメーション(DX)検討タスクフォースの2つに加え、2025年度より“GCP Renovation/治験・臨床研究エコシステム対応検討タスクフォース”を新設し、医薬品評価委員会の10の重点活動テーマのうち、(1)治験・臨床研究エコシステム確立の推進および(2)ICH-GL臨床研究/薬機法改正の規制対応を担当する。

いずれのタスクフォースにおいても、原則として主幹部会あるいは運営委員を定めて部会横断的に対応するとともに、他委員会や外部機関とも連携し、研究調査や施策の立案、行政への政策提言に向けて活動する。各委員会タスクフォースの活動は以下の通り。

1. 医療情報データベース活用促進タスクフォース

前年度から引き続き、RWD活用促進へ向けて以下の活動を進めていく。

1)規制要件の適切な更新に関するロビー活動

次世代医療基盤法が改正されたものの、未だ活用が促進されているとは言えない状況になるRWDであるが、積極活用に向けてはさらに踏み込んだ規制要件の更新と活用に向けた取り組みが必要だと考えている。より具体的には、EUにおける欧州保健データベース(EHDS)を参考とした、医療情報活用”特別法“としての「日本版EHDS」の実現である。活動計画としては、ロビー活動としての産業政策委員会活動のバックオフィスとして、実務担当者が考える利用場面や、それによって得られる世界観、恩恵の具体化等の折衝用資料の準備等。経団連が作成する提言書や政府の骨太方針等の執筆にも関与する。

2)RWD利活用の基盤整備

次世代医療基盤法の改正により、複数の医療データが連結された次基法DBや、種々の公的DB等と連結できるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の利用が法的には整備されつつあるものの、実際にワークさせるにはまだまだ基盤の整備が必要となる。

3)利活用者の支援と育成への貢献

RWDの基盤が構築されても、これを適切に利用できる人材が不足していたのでは適切にワークしない。本TFでは各部会で行う研修やワークショップとも連携しつつ、各フェーズ共通の課題について有益な指南書や海外文献の翻訳、ワークショップの開催などを予定している。

4)RWD活用に関する社会からの共感獲得

マイナ保険証の混乱にもみられる通り、未だ日本では個人情報漏洩に対する抵抗感等があいまって、自身の医療データを2次利用することについては賛同者が十分でない。医療データは適切に2次利用されることで医学を進歩させ、医薬品の価値を創造・適正化する。その意義を訴求するための活動として冊子や動画を制作し、そのアクセス数をプロセス指標としてより多くの社会からの賛同者を増やす活動を継続する。また、メディア戦略を講じ、より適切な論調の記事が書かれ多くの国民がそれを読むといった循環を裏から支えることも考えている。

5)関連団体、ステークホルダーとの協業

RWD活用にポジティブなステークホルダーは確実に増えている。厚労省、内閣府をはじめ一般社団法人次世代基盤政策研究所(NFI)や認定仮名加工の各団体、厚労科研や国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)等の要請によりTFから人材を派遣するなどして研究に協力し、共同執筆や講演、シンポジウム企画にも貢献する。またTF自らも関連学会へシンポジウムの企画を提示するなどして、医療者や製薬関連企業等へもRWD活用の重要性を訴求していく。

2. デジタルトランスフォーメーション(DX)検討タスクフォース

デジタル技術の進歩は、製薬産業の活動に大きく影響を及ぼしており、DXは製薬協全体、さらには私たち医薬品評価委員会においても重要なフォーカスエリアの一つである。本タスクフォースにおいては、対象を患者さんのみならず国民に視野を広げ、その健康増進に貢献するために、どのような課題が存在し、さらにはソリューションを提供できるかについて引き続き検討を進める。プログラム医療機器については、治療補助、あるいは治療としての医療への貢献はもとより、疾患の早期発見や未病段階での介入への寄与も期待され、他団体、更には行政との交流を活発化させ、政策提言等の活動につなげていく。また、AI/マシーンラーニングの活用が飛躍的なスピードで進んでおり、私達医薬品評価委員会の活動への影響について情報収集するとともに、何を実施すべきかについて委員会全体で議論を進めていく。その他、DXに関連する活動は、医薬品評価委員会の各専門部会、さらには製薬協全体でも多く展開され、関連する専門分野が多岐に渡るため、医薬品評価委員会内の専門部会、さらには他の委員会も含め、有機的なつながりをもって検討を進める。医薬品産業に押し寄せる環境変化に対応し、新たな世界を描き、具現化するための検討・発信を行っていく。

3. GCP Renovation/治験・臨床研究エコシステム対応検討タスクフォース

GCP Renovationとして検討されてきたICH-GCPの大改定は、2022年に行われたE8(R1)の改定に続き、2024年にはE6(R3) Principle およびAnnex 1がStep 4に至るとともに、Annex 2もStep2に至り国内でのパブコメも開始されている。E6(R3)が国内でも実装されることによりRisk proportionate approachという概念のもと、多種多様なデータソースを活用した新たなタイプの臨床試験が実施され、医薬品開発や医療エビデンスの創出が加速される。一方、日本ではドラッグ・ロス問題やコロナ禍での医薬品やワクチン開発の脆弱さが顕在化し、これらの一因として日本特有の非効率な臨床試験環境がある。

日本が欧米と肩を並べる臨床試験実施国となるためには、効果的に臨床試験が実施できる環境を整備し、E6(R3)の概念を着実に実装する必要がある。また、国をあげた事業としても、治験エコシステム事業等を含め環境改善に向けた取り組みが進められている。

医薬品評価委員会としても、GCP Renovationおよび治験・臨床研究エコシステムに関連する諸課題に速やかに対応できるよう、部会を越えた検討タスクフォースを立ち上げ具現化するための検討・発信を行っていく。

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