医薬品評価委員会
重点課題
1. 医薬品開発のイノベーション促進
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で注目された分散化臨床試験(DCT)など開発手法や多様な医療情報の活用による医薬品開発の効率化を検討し、イノベーション促進と患者アクセスの迅速化に結びつける。また、小児領域の医薬品開発の課題はいまだ議論が継続されているところであるが、限られたデータを有効に活用し小児患者アクセスの迅速化につなげるための検討を行う。この「限られたデータの有効活用」は希少疾病用医薬品の開発や新たなドラッグ・ロスの増加を防ぐためにも重要な要素であり、モデル&シミュレーション等の技術を医薬品の評価に組み込む新たなチャレンジを伴う。
医薬品開発のイノベーションを考える際、従来通りの医薬品の定義や開発プロセスに固執していては時代の変化に則した活動にはならない。そこで、プログラム医療や未病、遺伝子情報を用いた新規医療や新規モダリティへの対応についても検討を進める。
2. 医薬品開発環境の活性化
開発環境の活性化は医薬品開発の基盤である。DXを有効に活用するような取り組み、たとえば治験手続きの効率化やコミュニケーションへの活用などが推進できるような取り組みやRisk Based Approach(RBA)の概念を取り入れた取り組みを行う。また、医薬品開発にとって重要な動物試験の適切な実施の徹底と3Rs(Replacement、Reduction、Refinement)の実践についても推進する。国内での医薬品開発にとどまらず、アジア地域における治験実施能力を高めることは重要な課題であり、そのためには国際開発のさらなる効率化、患者リクルートの確保、患者アクセスの向上なども必要である。治験環境の活性化によって、新たなドラッグ・ロスの増加を防ぐべく、各専門部会から広い視野を持って意見発信に努める。これらを当局主導の施策にくみこむべくコミュニケーションを取り、官民一体となった活動を展開する。
3. レギュラトリーサイエンスの深化の促進
医薬品開発の効率化を図る上で、適切な規制改革は重要である。臨床研究の結果を有効に活用するための議論、医療情報を有効活用するための法制度や運用に関連する議論、新たなドラッグ・ロスを増やさないための薬事規制のあり方に関する検討会議の議論、薬機法改正議論などに対し、総力を挙げて提言を取りまとめ発信し、適切な規制改革に向けた産学官間の対話を推進する。
また、ICH創設団体としての活動にも存在感をもって尽力し、国際調和ガイドライン作成とその適切な運用なども推し進める。
4. 環境配慮と健康増進への貢献
「革新的で有用性の高い医薬品をより早く患者さんや医療関係者、世界の人々にお届けする」というミッションを達成するためには、患者さんの声を取り入れた医薬品開発を推進していくことが重要である。これまでと同様、Patient Centricityの考えを中心に、治験情報の共有と業界活動の理解促進に努める。また、同様に重要な安全性対策についても、確実性を念頭に合理的な方法について検討・提言を行っていく。環境配慮に関しても、活動面でのデジタル化等とともに、医薬品による環境汚染防止への取り組みを検討していく。