第12回WTO閣僚会議の知的財産保護義務免除(TRIPSウェーバー)合意について

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2022年06月20日
日本製薬工業協会
会長 岡田安史

日本製薬工業協会(製薬協)は、2022年6月17日にジュネーブで行われた第12回世界貿易機関(WTO)閣僚会議(MC-12)において合意されたCOVID-19ワクチンに関するTRIPSウェーバーに大きな失望を表明します。本MC-12合意は、知的財産権がより安全かつ迅速に患者さんに新しい医療技術を提供するものではなく、パンデミック対策の障壁となっているとの誤ったメッセージを、世界中の人々に送るものです。

知的財産権は、これまでにない速さで安全で効果的なワクチンの開発および生産拡大を支え、今日までに139億回分のCOVID-19ワクチンの生産を可能としてきました。知的財産権の枠組みは、COVID-19ワクチンの380を超える自主的なパートナーシップ(その88%が技術移転を伴います)を記録的な時間で設立するための基盤を提供してきました ※1。TRIPSウェーバーは、知的財産権が果たしてきたこのような役割を認めず、さらに何ら効果的な解決策を提示できていない合意であり、イノベーションと世界的な健康安全保障に深刻な影響を及ぼす可能性があると考えます。すなわち、上記のような知的財産権の枠組みは、COVID-19に取り組むための解決策をもたらし、このパンデミックの間に行われた、かつてない数のパートナーシップ、自主的なライセンス供与および知識共有を促進してきましたが、TRIPSウェーバーはまさにその枠組みを解体することにつながり、将来の同様な枠組みに負の波及効果をもたらします。

また、十分なワクチンの生産量が得られている現状ではTRIPSウェーバーが時機を失した不要な解決策であることは明らかであり、ワクチンを必要とする人々にワクチンを届けるために輸出規制等の種々の貿易障壁及び薬事行政、流通、医療従事者等の不十分なインフラの改善こそが各国が取り組むべき課題です。本MC-12合意は製薬産業だけでなく、すべてのイノベーションを担うセクターに間違ったメッセージを送るものと言えます。

製薬産業は、本MC-12合意に関わらず、一日でも早く新型コロナウイルス感染症が収束し、一人でも多くの命を救うために、各国行政機関をはじめ関係者の皆様とより緊密な連携を図りながら、引き続き全力で取り組んでまいる所存です。

以上

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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