令和4年度薬価制度改革について
2021年12月22日
日本製薬工業協会
会長 岡田 安史
製薬協はイノベーションを推進することで医療の質向上及び経済成長に貢献する観点から、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)を中心とした薬価制度に係る議論の場において意見を述べてきました。
今般、中医協で了承された「令和4年度薬価制度改革の骨子」では、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定)に記載された「革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点」を踏まえ、一定のルール改善が図られたものと認識しています。新薬の適正な薬価水準が維持される仕組みの構築に向けた検討は今後も進められるべきであり、その政策決定プロセスについては、中医協における丁寧で透明性の高い議論を十分に踏まえられることが重要と考えます。その上で、以下のとおり主な事項について所感を申し上げます。
1.薬価収載後のイノベーション評価
新薬創出・適応外薬解消等促進加算については、品目要件に「効能・効果等の追加に係る評価」が加えられ、イノベーションを推進する仕組みとして一定の改善が図られました。一方で、薬価収載時には確認できなかった有用性が市販後のエビデンス等によって認められた品目など、薬価収載時には捕捉しきれない価値は他にもあると考えられることから、引き続き検討を行う必要があると考えます。
2.市場拡大再算定の対象品目の類似品の取扱い
市場拡大再算定の特例の対象品又は類似品として引き下げられた品目は、一定期間内は1回に限り、類似品の対象外とすることとされました。しかしながら、類似品の除外基準に係る根本的な課題の解決には至っておりません。再算定の在り方を含め、本質的な議論が引き続き必要であると考えます。
3.原価計算方式における製造原価の開示度向上
原価計算方式における開示度向上に向けた取組みを進めることについて賛同しており、製薬協としても引き続き真摯に対応していく所存です。しかしながら、開示度50%未満の品目全てにおいて、有用性加算及び先駆的医薬品に係る加算等が全く薬価に反映されないという今般の見直し(加算係数“0”)は、イノベーションの評価や、特に医療上必要とされる医薬品の開発・上市を促進する観点から適切ではないと考えます。今回の見直しが我が国における新薬の開発・上市等に与える影響について、今後注視していく必要があります。
加えて、薬価算定の透明性・納得性を向上する観点から、「臨床的位置づけ等の医療実態」を含めて総合的に類似薬の有無を判断する仕組みの導入について、引き続き事例を集積しながら検討を進めることが重要です。医薬品が持つ多様な価値を反映し得る仕組みについても検討を進めてまいります。
4.診療報酬改定がない年の薬価改定(中間年改定)
今後の中間年改定の対象範囲や改定方法については、令和3年度の中間年改定の延長線上ではなく、薬価制度抜本改革にて示された「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」という趣旨に立ち戻って検討されるべきと考えます。その上で特許期間中の新薬は中間年改定の対象となるものではないと考えます。
なお、「令和4年度費用対効果評価制度改革の骨子」も中医協で了承され、制度の大枠は変えず、運用を中心として見直しが行われることになりました。今後も事例を積み重ねつつ、効果が同等で費用が増加する場合(費用増加)や比較対照技術に対して費用が削減される場合(ドミナント)の価格調整方法のあり方に関する課題を含め、制度の改善について検討を継続する必要があると考えます。
コロナ禍でワクチンや医薬品の重要性・必要性が再認識されました。このような中、本年6月に「成長戦略実行計画」が閣議決定され、ライフサイエンスはデジタルやグリーンと並ぶ重要戦略分野であり、安全保障上も重要な分野と位置付けられました。そして9月には厚生労働省より8年ぶりに「医薬品産業ビジョン2021」が発出されました。イノベーションの評価に関する薬価制度上の課題は、「革新的創薬」や「経済安全保障」といった本ビジョンの主要テーマに直接関係するものです。製薬協としては今後、本ビジョンを実現させるための官民の議論に積極的に参画しつつ、上記の点も含めた薬価制度の諸課題について検討及び提言を行っていく所存です。
以上
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