日米欧製薬3団体共同声明
2026年度(令和8年度)薬価制度改革及び費用対効果評価制度改革に関する意見

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2025年12月16日
日本製薬工業協会(JPMA)
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)

現在、中央社会保険医療協議会(中医協)において「2026年度(令和8年度)薬価制度改革」及び「2026年度(令和8年度)費用対効果評価制度改革」に向けた議論が進められています。革新的新薬の研究開発・安定供給を通じて健康長寿社会の実現を目指す製薬産業の立場から、下記の通り意見を表明いたします。

私たちは、これまで、約10年間にわたり、度重なる薬価算定ルールの変更や特許期間中の新薬に対する毎年の薬価改定により、日本の創薬イノベーション・エコシステムの環境が競争上不利な立場に置かれていることについて懸念を表明してきました。私たちは、国民皆保険の持続可能性と財政の健全性を確保するという日本政府の目標を共有していますが、現行のエコシステムは十分に機能していません。事実、日本の初期開発段階のパイプラインのシェアは減少し、研究開発投資も停滞し、他国で利用可能な革新的医薬品が日本で発売されないドラッグ・ロスが生じています。この点、過去10年間で革新的医薬品産業界の研究開発投資は世界全体で倍増した一方で、日本での伸びは極めてわずかであり、その結果、日本の世界シェアは半減しています。

世界最先端の治療及びワクチンの開発とアクセスに日本が取り残されないためには、日本の創薬イノベーション・エコシステムの強化が喫緊の課題です。しかしながら、現在の薬価政策が国際競争力を損ない、日本で活動する革新的医薬品企業が持つ本来のポテンシャルを発揮することを妨げています。また、米国の最恵国待遇価格政策により、日本が薬価の参照国となる可能性があることから、グローバルなインセンティブ構造が変化し、個々の製薬企業が日本での製品開発や上市戦略を見直し始めています。改革の緊急性は一段と高まっており、機動的な対応が求められています。

こうした深刻な課題を踏まえると、高市新内閣が掲げるイノベーションの投資拡大を前進させるとともに、11月5日にとりまとめられた創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループ中間報告書(議論の整理)の内容を適切に反映させる改革を実行することが不可欠です。また、長期的な財政の健全性を確保し、投資を呼び込むためには、現行の薬価引き下げに過度に依存している財政フレームを見直すべきです。社会保障予算に占める薬剤費支出の割合は10%以下にも関わらず、予算削減額の70%が薬価引き下げによるものとなっています。そこで、この負の流れを変え、日本がイノベーションのリーダーとしての未来を確保するため、2026年度(令和8年度)薬価制度改革及び2026年度(令和8年度)費用対効果評価制度改革において、以下の2つの改革を優先すべきです。

堤言1:特許期間中の薬価の維持

現行の制度では、特許期間中の医薬品の半数を占める新薬創出等加算対象外の製品は、毎年の薬価引き下げの対象となっています。また、新薬創出等加算対象の製品であっても、費用対効果評価や市場拡大再算定による薬価引き下げの対象となり得ます。さらに、収載後、時間の経過とともに他の主要先進国価格との格差が拡大し続けています。こうした課題を解決するためには、特許期間中の薬価の維持のための特に以下の取組が不可欠です。

  1. 費用対効果評価制度について、安易に制度を拡大するのでなく第三者の専門家による客観的検証を行うこと。
  2. 薬価制度について、イノベーションを著しく阻害する特例拡大再算定及び類似薬への適用(とも連れ)ルールを廃止するとともに、再生医療等製品など新規モダリティに対応した市場拡大再算定ルールに改善すること。また、特許期間中の医薬品の中間年改定は廃止すること。

提言2:新薬の薬価算定の改善

現行の新薬の薬価算定方法は、算定基準が制限的であり、日本の患者さん、医療制度、社会にもたらす価値が適切に反映されていません。特に、再生医療等製品など新しい治療法やモダリティを有する高度な革新的医薬品は、現行の算定基準の下では適切な類似薬がなく、一段と厳しい状況となっています。革新的新薬の薬価算定を改善するため、類似薬の選定対象を拡大し、また、再生医療等製品の薬価算定の運用を見直すとともに、収載後に明らかになった価値を評価することを提言します。

以上

参考

日米欧製薬3団体共同声明(英語版)

お問い合わせ先

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電話
03-3241-0374
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米国研究製薬工業協会(PhRMA) 広報事務局

電話
03-5427-7322

欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan) 渉外・広報委員会 下野由絵 (サノフィ株式会社内)

電話
090-2736-8171

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