From JPMA 創薬力強化の議論の継続に向けて

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本稿を執筆中の2024年8月下旬、岸田文雄内閣総理大臣が次回の自民党総裁選への出馬を見送るとのニュースが入りました。2021年10月に誕生した岸田内閣は、約3年でその役割を終えることとなります。岸田政権時代を振り返りますと、ポストコロナの取り組みに始まり、2022~23年にかけて開催された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で創薬力強化の必要性が認識され、施策が打ち出されました。また、薬価制度では革新的医薬品の導入に向けて大きな一歩を踏み出しました。各種課題に向き合い、打ち手を追求した3年間だったと思います。

創薬力強化の議論の場として、2023年末から2024年にかけて「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」、またその中間取りまとめを受けた「創薬エコシステムサミット」が開催されました。同サミットでは岸田首相より「日本を世界の人々の健康に貢献できる創薬の地とするべく、政府が創薬力強化にコミットしていくことを本日宣言する。医薬品産業は我が国の科学技術力を活かせる重要産業であり、我が国の成長を担う基幹産業である」という発言があり、創薬力強化を重視する姿勢が強く感じられました。

日本製薬工業協会 会長 上野 裕明 日本製薬工業協会
会長 上野 裕明

新薬の創出には長い期間と多額の投資を要します。また、創薬手法の多様化やコストの増大等により、新薬創製の難度は増す一方です。これに対し製薬業界は、新たな産学連携コンソーシアムの設立、アカデミア研究への企業研究者の知恵・経験の導入、人材育成等に取り組んできました。このような状況の中、政府による後押しは大変心強く、製薬協は業界の代表として、政策立案から実行に至るまで積極的に活動してまいります。

また、継続的な新薬創出のためには、生み出された革新的新薬がその価値に応じて評価され、次の創薬の原資となる仕組みが不可欠です。2024年度薬価制度改革では革新的医薬品の評価という点で一歩前進があったと認識していますが、今後、ドラッグ・ラグ/ロスの解消や、国内での新薬開発の活発化といった効果検証を求められています。さらには、2025年の中間年薬価改定の実施可否の問題にも業界を挙げて取り組んでまいります。

創薬力の強化に向けての具体的な施策の実行は次期政権に引き継がれることになりますが、私たちは岸田政権時代に灯された火を消すことのないよう、創薬力強化の議論を継続する必要性を訴えてまいります。

日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)

製薬協は、研究開発志向型の製薬会社が加盟する任意団体です。1968年の創立以来、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献し続けています。

製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会

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