トップニュース 「ICHアテネ会合」初のハイブリッド形式で開催される

印刷用PDF

2022年上期の医薬品規制調和国際会議(ICH)本会合が、2022年5月21日~25日にアテネ(ギリシャ)にて開催されました。会議はICH史上初となる対面会議とWeb会議を組み合わせたハイブリッド形式で運営され、対面会議の規模はかつてより縮小されていますが、日米欧アジア等、世界各国から多くの参加者がアテネに参集しました。

集合写真

本会合では、総会への提案内容の準備やICHの運営を担う管理委員会、全メンバーが参画する総会等が行われました。また、専門家作業部会(ワーキンググループ)の議論も同時期に並行して実施され、ICHガイドラインの作成進捗が図られました。ここ2年半のICH会議はWeb形式のみにて行われておりましたが、今回対面形式がいかに濃密な議論をもたらすか実感することができ、対面会合の重要性が明確になりました。

アテネ会合の参加団体の内訳は、創設会員である日米EUの産官6団体、常任会員2団体(ヘルスカナダ、スイスメディック)、会員12団体、常任オブザーバー2団体、オブザーバー21団体でした。現地アテネには、製薬協から12名が渡航しました。参加者は日米欧アジアをはじめ世界中に及ぶため、世界中からWebで参加可能なコアな時間帯を各日設定し、重要事項はその時間に集中して議論されました。このコア時間帯は、基本的にギリシャ時間で14時から16時に設定されました。これは、日本では20時から22時、米国東海岸では7時から9時となります。この設定は今回の本会合が欧州開催であったため機能しましたが、それ以外の地域で本会合を開催する際には非現実的なものとなります。より効率的な会議運営を図るため、2022年秋の仁川会合(韓国)はハイブリッド形式ではなく基本的に対面形式で行うこととなりました。

以下にアテネ会合での特記事項を記載します。

1. ICHメンバー、オブザーバーの承認

ICHの新規メンバーとして、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)が承認されました。MHRAは、以前は欧州理事会(EC)の構成員として創設規制団体の地位で活動していましたが、英国の欧州連合(EU)離脱によりその地位を失い、それ以降独立したオブザーバー団体として参加していましたが、迅速プロセスを経て今回メンバーへの昇格が認められました。また、新規オブザーバーとして、アルジェリア医薬品庁(ANPP)の加入が承認されました。

この結果、ICHメンバーは従来の19団体から1増の20団体、オブザーバーは1増1減で35団体となり、ICHは総勢55団体の組織体制となりました(末尾の参考資料参照)。

2. ICHトピックの動向

アテネ会合では、技術トピックの議論もハイブリッド形式(対面/Web会議)で行われました。通常より少ないワーキンググループ数ではありましたが、以下の全7トピックのワーキンググループが、この期間を活用して会議を精力的に実施し進捗を図りました。そのほか、管理委員会、総会では、全既存トピックの進捗管理やStep移行判断、また新規トピックの議論も行われました。

専門家・実施作業部会

今回のアテネ会合で会議を実施したトピックは以下の7トピックでした。

  1. E6(R3):「医薬品の臨床試験の実施の基準」の改定
  2. M4Q(R2):「コモン・テクニカル・ドキュメント—品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン」の改定
  3. M10:生体試料中薬物濃度分析法バリデーション
  4. Q5A(R2):「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価」の改定
  5. Q9(R1):「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」の改定
  6. Q13:原薬および製剤の連続生産
  7. S1B(R1):医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの補遺

Step4到達

以下のトピックについて、Step4到達が報告されました。これらについては、各規制当局における実装のプロセスに入ります。

  1. M10:生体試料中薬物濃度分析法バリデーション
  2. M8:「eCTD(電子化コモン・テクニカル・ドキュメント)v4.0の電子化仕様について」に関するQ&Aについてv1.7およびeCTD v4.0実装ガイドv1.5

Step2到達

M12:「薬物間相互作用」について、Step2到達が報告されました。今後、各国・地域でパブリックコメントが実施されます。

新規トピックの承認

今後ガイドライン作成を行う新規ワーキンググループ立ち上げに向け、「臨床試験への妊婦及び授乳婦の組み入れ」が採択されました。

3. 次回ICH会合

2022年11月12日~16日の日程で、仁川(韓国)で開催予定です。今回のアテネ会合における経験を踏まえ、原則として対面形式での開催を予定しています。

なおICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるようにしています。今回のICHアテネ会合の成果や各トピックのコンセプトペーパー、作業計画等はICHウェブサイト(https://www.ich.org/ )よりご覧いただけます。

【参考資料:ICHメンバー、オブザーバー一覧(2022年6月現在)】


表1 メンバー(20団体)
表1 メンバー(20団体)

表2 オブザーバー(35団体)
表2 オブザーバー(35団体)

(国際規制調整部長 加藤 真理子


このページをシェア

TOP