トピックス 「欧州製薬団体連合会(EFPIA)との定期会合」を開催
製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(LEEM)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しております。今般、EFPIAとの定期会合が2021年12月2日にオンライン形式で開催されました。EFPIAとは年2回の定期会合を開催しており、2021年度2回目の開催となりました。双方合わせて約25名が参加し、活発な意見交換が行われました。以下、会合の概要を報告します。
はじめに
冒頭、EFPIA Executive DirectorのKoen Berden氏より挨拶があり、EFPIAと製薬協の双方より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現況についての報告がありました。
その後のセッションでは、EFPIAからはTRIPS Waiver(COVID-19関連の知的財産の放棄)への対応状況、EU HTA Regulationの概要と、それに対するEFPIAのエンゲージメント戦略、EU Pharmaceutical Strategyの現況とそれに対するEFPIAの戦略について説明があり、ディスカッションを実施しました。
製薬協からは、「製薬協 政策提言2021」、厚生労働省により今般発表された「医薬品産業ビジョン2021」のサマリーと、製薬協からのステートメントを紹介し、EFPIAからの質問に対して意見交換を行いました。
COVID-19 TRIPS Waiver
製薬協 国際委員会 欧米部会 三浦 慎一 部会長
Executive Director, International Affairs, EFPIA Koen Berden 氏
このセッションではまず、双方の新型コロナウイルス感染症の状況についての情報共有が行われました。製薬協からは、日本での患者数やワクチン接種率の状況、最近問題となっているオミクロン変異株への日本の水際対策について報告があり、EFPIAからも同様にオミクロン変異株の急拡大の状況、およびEU加盟国の国ごとの異なる対応状況の共有がありました。
次いで、2020年10月以来、世界貿易機関(WTO)で議論が続いているTRIPS Waiverについて、日本、EU双方の政府の現在のポジション、さらに製薬協、EFPIA双方のポジションを共有し、議論しました。
Environment Changes in Japan: New government, Recognition of the innovative pharmaceutical industry as contributor to growth and innovation
製薬協 国際委員会 欧米部会 三浦 慎一 部会長
このセッションでは、冒頭に「製薬協 政策提言2021」と、厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021」の背景について紹介がありました。そのうえで、「製薬協 政策提言2021」のサマリー、2021年5月17日のPhRMA Japan、EFPIA Japanとの共同記者会見の模様に触れ、その後、「医薬品産業ビジョン2021」のサマリーと、それに対する製薬協のステートメントについて紹介しました。最後に、新たに発足した岸田文雄内閣とその政策について紹介しました。
ディスカッションでは、EFPIAから、経済安全保障に対する日本の政府の考え方や日本の国内企業のアプローチ方法、「医薬品産業ビジョン2021」の官民対話ワーキンググループにおける重要業績評価指標(Key Performance Indicator、KPI)等について質問があり、製薬協の考え等の意見交換を実施しました。
EU HTA Regulation: EFPIA Engagement Strategy
Senior Manager, Market Access, EFPIA Mihai Rotaru 氏
このセッションでは、近日中に成立が予定されるEU HTA Regulationの概要と、それに対するEFPIAのエンゲージメント戦略について説明がありました。EU HTA Regulationは柱となるJoint Clinical AssessmentとJoint Scientific Consultationに、Horizon ScanningとVoluntary Cooperation in other areasを加えた4つの分野で構成され、次の3年間で詳細を確定した後、2025年1月から段階的に導入される見通しです。これに向けて、EU HTA Regulationが適時かつ高品質な評価を提供し、患者アクセスを改善する原動力となるよう、HTAワーキンググループのワークストリームをはじめとしてEFPIAがEUと加盟国双方のレベルで実施するエンゲージメントや、アドボカシーについて紹介がありました。
■EU Pharmaceutical Strategy
1. Revision Orphan and Pediatric Medicines Regulation
Director, Market Access & OMP Policy Lead, EFPIA Tina Taube 氏
このセッションでは、欧州委員会が提唱しているPharmaceutical strategy(50以上のさまざまな規制の見直し)の現況と、それに対するEFPIAの戦略に関して説明が行われました。Pharmaceutical strategyを通して、EUが、グローバルのイノベーションを牽引する規制の枠組みを形成すること、オーファンドラッグや小児を含む知的財産インセンティブを確保すること、アクセスおよびR&Dコストの透明性に関する要件に関する議論を形成すること、厳格な供給義務や撤退に関するルールに陥らないようにすること、を重要としており、これらを実現するために、直面するリスクについての説明がありました。また、EFPIAの戦略を、規制、インセンティブ、アクセスの3つに区分し、さらにオフェンシブ(積極的に提案し実現できる)なトピック、ディフェンシブ(積極的に取り組めない)なトピックに整理していることが紹介されました。
ディスカッションでは、製薬協からは、EFPIAの考えるアンメット・メディカル・ニーズの定義、欧州の規制改革に伴う日本企業を含む外資企業への影響(対応が困難な事項、参入障壁になり得る事項)について質問をし、EFPIAから詳細な回答がありました。
2. Structured Dialogue, Supply Chain Security
Director, International Affairs, EFPIA Jana Nackberg 氏
このセッションでは、Structured Dialogueについて紹介がありました。EFPIAとしては、本戦略にはポジティブな点も見られるものの、欧州の製薬企業にとって懸念される項目、たとえば、供給の義務化や、供給価格の透明性等もあり、今後も注視していく必要があると説明がなされました。
ディスカッションでは、製薬協からは、2021年9月に設置されたHERA(欧州保健緊急事態準備・対応局)との関係性についての質問がされ、EFPIAからは詳細な回答がありました。
終わりに
その他のディスカッションでは、2021年度EFPIAと製薬協国際委員会で連携して対応したBrexitにかかわる関係当局へのロビイング活動のフォローアップや、今後の連携についても確認しました。
会の最後には、製薬協国際委員会の伊藤達哉委員長より、EFPIAからの興味深いプレゼンテーションへの御礼と、イノベーションの公正かつ適正な評価という共通の目標の達成に向けて、今後も協力していきたいとの挨拶で、3時間にわたる会合は締めくくられました。
今回もオンライン開催となりましたが、各セッションにおいて活発な意見交換が行われ、相互に理解を深めることができ、非常に有意義な会合となりました。 次回は2022年の春に開催の予定です。
(国際委員会 欧米部会 欧州グループ)