市民・患者とむすぶ 「第39回 製薬協 患者団体セミナー」をオンライン開催 ともに考えましょう、これからの医薬品開発(治験)~ともに開きましょう、未来への扉~

印刷用PDF

製薬協患者団体連携推進委員会は、2021年11月24日にオンラインを利用して「第39回 製薬協 患者団体セミナー」を開催しました。今回のセミナーでは、「ともに考えましょう、これからの医薬品開発(治験)~ともに開きましょう、未来への扉~」というテーマのもと、当日は約70名の参加者があり、多くの患者団体のみなさんにとって、有意義な情報提供の機会となりました。

セミナーの様子 セミナーの様子

情報提供

患者さんの声を活かした医薬品開発 ~製薬企業の取り組みと今後の期待~

製薬協医薬品評価委員会臨床評価部会より、患者さんの声を活かした医薬品開発について情報提供が行われました。

1. くすりができるまで(医薬品開発の流れ)

  1.  基礎研究(2~3年)
  2.  動物等を用いた研究(3~5年)
  3.  治験(3~7年)
  4.  承認申請・審査(1年)
  5.  承認
  6.  製造販売箇条書き

2. 医薬品開発への患者さんの参画(PPI)について

PPIとは「Patient and Public Involvement(患者市民参画)」の略で、患者さんや市民のみなさんの意見を取り入れて、医療や研究を進めることです。医薬品の開発では、これまで製薬企業と医師等の専門家が協議して医薬品候補について評価を行い、治験計画の作成をしてきました。最近では、患者さんが治験に参加するだけではなく、治験計画を作成する際に、自らの実体験を活かした意見を述べてもらい、ともに治験を創り上げていくことが大切だと考えられています。

3. 製薬企業での患者さんの参画に関する取り組み

医薬品開発(治験)に患者参画が進んでいない背景として、製薬企業側から患者さんとのコミュニケーションの取り方がわからない、という理由が挙げられています。そこで、製薬協では患者団体のみなさんに意見をうかがいながら、製薬企業が患者さんとコミュニケーションを取るための内容をガイドブックにまとめました。また、患者さん向けの治験に関するパンフレット「『くすり』と『治験』」を患者団体のみなさんと協働して、14年ぶりに改訂することができました。

4. 行政機関(PMDA)での患者さんの参画に関する取り組み

医薬品の審査等を主に行う行政機関(独立行政法人医薬品医療機器総合機構、PMDA)でも患者さんとの参画が進められています。2019年に患者さんの参画を検討するワーキンググループが発足し、2021年9月7日に患者さんの参画を告げるガイダンスを公表しました。

また、2018年に治験情報の登録公開が義務化されました。さらに、2020年9月1日以降は、治験実施医療機関名の公開が義務化されました。治験情報の登録先も一元化され、国内の治験はすべて臨床試験情報登録センター(jRCT)臨床研究実施計画・研究概要公開システムというウェブサイトで、日本語での検索が可能になりました。

5. 患者さんの参画により期待される効果

患者さんの声が反映された医薬品の開発は、患者さんおよび製薬企業にとって共通の願いである「患者さんに、より早く価値のある医薬品を届けること」につながると期待されています。これまで以上に、患者さんの声を聞く医薬品開発を促進すべく活動を進めていきます。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、一般社団法人全国がん患者団体連合会副理事長の松本陽子氏の進行のもと、パネリストとしてNPO法人GISTERS副理事長の櫻井公恵氏、NPO法人日本ナルコレプシー協会副理事長兼事務局長の駒沢典子氏、製薬協医薬品評価委員会臨床評価部会の2名が参加して、それぞれの立場から医薬品開発(治験)に対する想いを述べました。

1. 団体紹介

(1)NPO法人日本ナルコレプシー協会

ナルコレプシーを中心とした過眠症関連疾患の患者会です。ナルコレプシーは睡眠障害の一種で、若年性の慢性希少疾患です。オレキシンという覚醒と睡眠の機能を調整する脳内物質を、体内で作り出せなくなることにより、一日中眠ったり起きたりを繰り返す病気です。1967年に設立し、会員数は約400名です。

(2)NPO法人GISTERS

消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管に発生する粘膜下腫瘍で、推定罹患率は10万人に1人という大変希少ながんです。2003年に初めて分子標的薬が承認され、ようやく治療ができる病気になりました。珍しい疾患ながらこの病気への関心は高く、現在SNSの登録者数は550名弱です。

2. 治験の課題

(1)治験参加への不安、抵抗等

駒沢氏 治験に参加する際は、断薬による眠気のコントロールが大きなハードルです。ナルコレプシーでは喜怒哀楽の感情を表すと筋力が脱力する現象がありますが、断薬によってさらに行動制限が加わります。そのため、会社勤めの方が治験を受けることは非常に少なく、治験参加は学生や主婦が中心になっていると思います。
櫻井氏 私たちにとって、治験は標準治療から先の治療です。診療ガイドラインにも治験参加について示されています。当会では定期的に会員へアンケートを実施しています。特に治験について、2020年の結果を共有します(回答222名)。

  1. Q:
    治験の参加経験
  2. A:
    「ある」が5.4%でした。
  3. Q:
    治験の参加理由
  4. A:
    「必要性」「他に選択肢がない」が大多数でした。
  5. Q:
    治験のイメージ
  6. A:
    「希望」「新薬開発の過程」「標準治療後の選択肢」が多い一方で、「人体実験」という回答もありました。
  7. Q:
    懸念すること
  8. A:
    「予期せぬ副作用・体への影響」が一番多い回答でした。「交通費・宿泊費等を含めた経済的な不安」「主治医との関係性」「新たな病院に移ることへの不安」等の回答もありました。

(2)治験の情報は患者さんに届いているのか?

駒沢氏 治験は「主治医から紹介されない限り受けられない」と認識している患者さんが非常に多かったです。特に専門医がいない地方では、治験情報が届いていないため、受けたくても受けられない状況が続いていました。そのような中、製薬企業から治験の患者登録の進め方について相談があり、当会ウェブサイトで治験募集サイトを作成しました(現在は募集を締め切っています)。
櫻井氏 治験情報の収集はとても苦労しています。先述のアンケートでの治験情報に関する回答をご紹介します。

  1. Q:
    治験情報は十分に得られているか
  2. A:
    「はい」が5.4%でした。
  3. Q:
    治験情報はどこで探すか
  4. A:
    「患者団体のウェブサイト」という回答が大多数でした。「ポータルサイト等で検索したが見当たらない」「判別できない」という声もありました。

松本氏 がん研究振興財団ウェブサイトでは、「患者本位の『がん情報サイト』」があります。ここでは、治験・臨床試験にかかわる信頼できる最新のがん情報を調べることができます。現在、サイトを作成したばかりということもあって、検索方法が少し難しいと感じており、わかりやすい表現等を検討しています。
製薬協 われわれも治験情報を患者さんや、市民のみなさんに届けることは大切なことだと考えています。2つの取り組みをご紹介します。

  1. i. 正確にわかりやすく伝えるための取り組み
  2. 行政の取り組み:日本の臨床試験情報はすべてjRCTに掲載することが決められました。しかし、患者さんや市民のみなさんがサイトにたどり着けるのか、また、ほしい情報を得られるのかという点は、ハードルが高いと感じており、製薬協でも、さらなる取り組みが必要だと考えています。
  3. 製薬企業の取り組み:各社のウェブサイトにおいて、各社ポリシーに則り、治験情報を公開している企業があります。積極的に情報公開をしている企業もあれば、まだこれからという企業もありますが、情報公開について、各社が前向きな姿勢をもち始めています。
  1. ii. 治験啓発の必要性
  2.  
    製薬協では「『くすり』と『治験』」という治験啓発のためのパンフレットを2021年3月に改訂し、ウェブサイトで公開しました。本日のセミナーのようなイベントも含めて積極的に発信していきます。

(3)患者団体と製薬企業の治験に関する協働事例

製薬協 治験の企画段階・実施中・実施後で患者さんの意見をうかがい、参加しやすい治験を検討する、製薬企業の社員が治験の企画段階で手順を実際に確認してみる、といった治験の不安を払拭するための取り組み事例があります。
櫻井氏 実施計画書や、同意説明文書を確認することはよくあります。今後は、さらに増えていくと感じています。
駒沢氏 治験での入院時は、食事ぐらいしか楽しみがないので、そういった意見を聞いてほしいと感じました。ウェブサイトの治験募集では、会員だけでなく患者会に所属しない患者さんからの相談の際に治験について紹介しやすくなり、とても良かったです。

【セミナー視聴者から事前にいただいた質問】

治験の初期段階から患者さんが参加することの価値について
 
製薬協 製薬企業は薬のプロフェッショナルですが、病気のプロフェッショナルは患者さんです。日常生活の中に治験が入ってきたときの視点を事前に知ることが、医薬品開発にとって一番大きな意義と考えます。
櫻井氏 患者さんの意見について本気で考えてもらい、生活している私たちの意見を初めから言えたら、偽薬の必要性等、いろいろなことが変わってくると思います。
駒沢氏 製薬企業から「こんな薬があったらいいのに、ということはありますか?」と聞かれたときは本当にうれしかったです。
松本氏 私たちは、治療に暮らしや人生を合わせていかざるを得ない段階があるかもしれませんが、やはり人生に、治療や薬を合わせていければ良いと思いました。
 
治験参加者の募集について
 
製薬協 基本的に治験実施医療機関の先生に、治験に合致する患者さんを探していただいています。新聞広告やラジオ、インターネットを通じた参加募集もあり、患者団体を通じた参加募集も一部で行われています。しかし、現状では治験情報がわかりやすく周知されていないと実感していますので、今後もさらに取り組んでいきます。
松本氏 製薬企業と、「ねえねえ」と言える間柄に至っていません。治験を始める際に、急に仲良くしましょうではなく、日頃から緊密に、いろんな情報交換をするところから信頼関係を築ければ良いと思いました。
 

(4)患者団体と製薬企業の治験以外の協働事例について

製薬協 患者さんをお招きして講演会や対話会を実施する、医療機関に出向いて治療現場を見て感じる等、マインド醸成に取り組んできました。私たちが働く理由や、モチベーション、視野・視点を定期的に考えるような取り組みを実施する企業が増えています。
櫻井氏 講演会や新入社員研修のお手伝い、患者向けサポートページや冊子の企画・協力をしています。
駒沢氏 病気についての困り事や状況を話す場があります。多くの患者さんが製薬企業とつながると良いと思います。
松本氏 もう一歩進んで、ともに未来への扉を開くためにどうしていきたいですか?
製薬協 患者さん、製薬企業、医療関係者、行政、それぞれのプロフェッショナルがもっと近くで対話できる関係が大切だと思います。適切な関係や、透明性を担保しながら継続的にコミュニケーションを取っていければうれしいです。
櫻井氏 薬ができて、長生きができるようになってきた私たちにとっては、薬への感謝の思いは強いです。私たちの声をこれからも聞いてほしいと思います。一緒に考えていきたいです。
駒沢氏 製薬企業以外にも、医療関係者や行政と一緒に顔を合わせ、大きな視点が得られる機会があると良いと思います。
また、患者会は当事者が運営を担うことが多く、疲弊しています。この状況を打開していきたい。みなさんのお力を借りられたらと思います。

(5)まとめ

松本氏 今日は、未来への扉をともに開くということでお話ししてきました。治験が入口でしたが、私たちの「生きる」「暮らす」を支えるための一つとして、再確認できたように思います。私たちの暮らしや人生を支えるための扉を製薬企業、ほかの関係機関とも結び合って、手を取り合って、進んでいきたいと思っています。今日がそのための一歩になれば幸いです。

お知らせ

製薬協からのお知らせでは、製薬協産業政策委員会総合政策部会より、「製薬協 産業ビジョン2025 追補版(患者さんとご家族に向けて)」および、製薬協に新たに設置された、同委員会アドボカシーグループの活動について説明を行いました。

1. 「製薬協 産業ビジョン2025 追補版(患者さんとご家族に向けて)」について

製薬協は、画期的な新薬をいち早く患者さんにお届けするために、将来のありたい姿を「製薬協 産業ビジョン2025」として2016年1月に定めていますが、さまざまな環境変化を鑑み2021年5月に追補版を作成しました。6項目のうち、本日は患者さんに関係が深い下記について紹介します。

(項目1)デジタル技術を活用して新しいお薬を創ります

私たちは人工知能等の技術を研究に活用し、有効性と安全性に優れた医薬品を短期間で生み出すことに挑戦しています。治験を含む臨床研究は、通常は病院で行われますが、新しい情報通信技術を使って在宅で参加する方法も検討されています。

(項目2)「ビッグデータ」を活用し暮らしやすい社会を実現します

個人情報を保護したうえで何千人、何万人の人々の健康や病気、治療に関する情報(ビッグデータ)を集め、最新のコンピュータを使って解析することで病気を早く見つける新しい検査や、効果が高い医薬品の開発につながることが期待されています。

(項目4)お薬の情報をわかりやすくお伝えします

治療を受けながらも長生きするためには、病気や医薬品のことを患者さんやご家族にも良く知ってもらうことが大切だと考えています。製薬協では各会員会社がもっている患者さん向けの情報を集めて、ウェブサイト等から病気やお薬の情報が得られる仕組みを作っていきます。

2. 製薬協の活動について(アドボカシーグループ)

健康で暮らしやすい社会の実現には、社会のさまざまな方からご理解やご支援をいただくことが重要だと考え、製薬協産業政策委員会総合政策部会にアドボカシーグループを新たに設置しました。アドボカシーという言葉は考えや意思を表明することを意味していますが、私たちは「製薬協 産業ビジョン2025」で示した製薬企業としての志を、社会との対話や協働を通じて伝えていきたいと考えています。

患者さんの期待に応えられるような新薬を創り出すには、病気や治療に対する患者さんの不安な気持ちを聞かせていただく等、患者団体のみなさんとの連携が欠かせません。

医薬品開発にとどまらず、さまざまな場面において対話や協働の機会を広げながら、患者団体のみなさんとともに健康で暮らしやすい社会の実現を考えていきます。

まとめ

製薬協の田中徳雄常務理事は、医薬品開発に対して難病とがんの当事者の立場からこれまでの経験や貴重な情報の発信に謝辞を述べました。今回のセミナーでは、参加した患者団体のみなさんに有意義な情報をお届けするとともに、製薬企業にとっても患者さんの未来のために、ともに医薬品開発について考える機会となりました。

また、より多くの患者さんにセミナーの内容をお伝えできるよう、セミナーの動画を製薬協ウェブサイトでオンデマンド配信をしています(配信期間:2022年11月末まで)。
https://www.jpma.or.jp/information/patient/action/seminar/seminar_39.html

(患者団体連携推進委員会 患者団体セミナーTF 渡辺 美和子

このページをシェア

TOP