トピックス 「2020年度コード管理責任者・実務担当者会」を開催

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製薬協コード・コンプライアンス推進委員会は2020年9月29日、「2020年度コード管理責任者・実務担当者会」を開催しました。2020年度は新型コロナウイルス禍に鑑み、初めての試みでしたがオンライン形式で開催しました。会員会社72社から、コード管理責任者とコード実務担当者が参加し、表1のプログラムにしたがって実施され、有意義な会となりました。以下、本会の概要を報告します。

表1 「2020年度コード管理責任者・実務担当者会」プログラム

開会挨拶

会の開催に先立ち、製薬協コード・コンプライアンス推進委員会の羽田野誠実務委員長は、2020年度の本委員会の基本方針「コード・コンプライアンス推進委員会は、会員会社が関連法令はもとより製薬協コード・オブ・プラクティスをはじめとする自主規範を遵守し、生命関連産業の一員として高い倫理観を持って社会的責任を果たすことを支援する」ならびに重点課題「会員会社のコンプライアンス推進の支援」「透明性ガイドラインに基づく適切な情報公開の推進」「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインへの対応」「行政及び日薬連、公取協、IFPMA等の国内外の関係団体との連携、情報の収集・発信及びフィードバック」についてその概要を紹介しました。

また、10月に開催されるAPECビジネス・エシックス・フォーラム2020等の国際的なコンプライアンス推進活動に参加し、グローバルな動向を収集するとともに、製薬協の取り組みについて情報発信を行うと述べました。

製薬協 コード・コンプライアンス
推進委員会
羽田野 誠 実務委員長

製薬協コード・オブ・プラクティス違反措置事例

コード・コンプライアンス推進委員会の溝口裕章副実務委員長は、「措置」の考え方について、コード・コンプライアンス推進委員会が、違反会社に対して自主的な改善を求めるものであることを十分に理解してほしいと述べました。その後、2019年9月以降に新たに追加された措置事例として『みなし公務員へのタクシーチケット提供』『キャッチフレーズコンクール』の2つの事例について措置の視点等を説明しました。

措置の視点としては、違反行為が長期間、広範囲にわたっていたこと、ガバナンスの脆弱性については特に重く捉えていること、違反行為はすでに中止されているものの、再発防止策が具体性に欠け完遂されているとは言えない状況であったこと等を指摘し、「軽微か軽微でないか」「その行為が停止され、適切な再発防止策がとられているかどうか」といった措置の判断基準を具体的に説明しました。最後に、ガバナンスの脆弱性が指摘された過去の措置事例、特に「経営幹部が関与していた事案」「製品情報概要審査部門が機能していなかった事案」「社内管理体制の不備があった事案」について説明し、各社のコード遵守推進の参考にしてほしいと締めくくりました。

製薬協 コード・コンプライアンス
推進委員会
溝口 裕章 副実務委員長

コード理解促進月間施策について

コード・コンプライアンス推進委員会の鈴木健太実務委員は、2019年度コード理解促進月間の振り返りと2020年度の施策について説明しました。

はじめに、2019年度コード理解促進月間に関する会員会社へのアンケート調査結果を報告しました。2019年度のテーマである「信頼~社会からの期待に応えるために~」に関しては、「製薬業界として社会から何が求められているかを改めて考えるきっかけとなった」「会社においても重要なテーマであり、本社・支店においても迅速かつ適切に対応した」といった、テーマ設定は適切であったという意見が93%を占めたこと、「私たちの職場の点検項目」の設定に関しても「重点的に点検する項目を記載し掲示することで、リマインドを図った」「業務内容に応じて具体的な設定ができ、より現実味をもった項目の設定ができた」等、有意義であるといった意見が96%を占めたこと等を説明しました。

次に、2020年度のテーマについては、アンケートにおいて会員各社に高く評価された『信頼』を2020年度もテーマとして継続することとし、サブタイトルについては、主体的になにをするのかを考えられるように『~今、あなたに求められるものは?~』としたことを説明しました。

続いてテーマ設定の背景として、2019年10月には医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインが全面適用され、また、同じく12月には製薬企業の法令遵守体制のいっそうの整備を求める改正医薬品医療機器等法が公布される等、製薬企業のさらなるコンプライアンスの強化が求められていること、製薬企業はその活動に対してますます厳しい目が向けられていることを真摯に受け止める必要があることを説明しました。また、生命関連企業として、今後も社会からの信頼が得られるよう、製薬協コード・オブ・プラクティスを踏まえ、各部門・職場で、企業活動の適正化に向けた具体的な項目を独自に設定し、徹底のために点検を実施するよう要望しました。

製薬協 コード・コンプライアンス
推進委員会
鈴木 健太 実務委員

特別講演1

厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課広告指導官の野原形太氏が「販売情報提供活動監視事業について」と題した講演を行いました。

野原氏は、「令和元年度 販売情報提供活動監視事業」の概要とともに、主な疑義報告事例を採り上げ、ポイントを解説しました。その中で、「製薬企業の担当者が医療機関を訪問して、現場の医師・薬剤師等に対し製品説明・情報提供を行う"クローズドな場"においては、依然として不適切な販売情報提供活動がなされている」「医療従事者がきちんと検証し、結果的に医薬品を適切に使用できるよう、製薬企業は医療従事者が求めた情報を提供することが必要である」と述べました。

また、「医薬品の安全かつ適正な使用のために、ポジティブな面もネガティブな面も併せて適切かつ正確な情報提供を行うこと」「不適切な情報提供をMR等の現場の問題ではなく会社全体の体制、教育を見直す契機にすること」を求めました。

最後に、「新型コロナウイルス禍、医療機関への訪問機会・時間が減少し、情報提供に制限がある中においても、MR等が有効性と安全性をバランスよく説明できるように工夫してほしい」と述べるとともに、「監視事業においてもウェブ等を活用した情報提供のあり方を注視していきたい」と締めくくりました。

厚生労働省 医薬・生活衛生局
監視指導・麻薬対策課
広告指導官 野原 形太 氏

特別講演2

帝京平成大学薬学部薬学科薬事・情報学ユニット教授の渡邊伸一氏が「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに係る調査研究について」と題した講演を行いました。

渡邊氏は、これまでに実施した「『医療用医薬品の販売に係る情報提供ガイドライン』の施行に伴う企業側実態の調査研究」の概要を紹介し、「この研究は厚生労働科学研究として、令和元年度から令和3年度までの3年間実施する予定であること」「昨年度実施した社内体制整備に係る対応状況の調査は、各企業の社内体制整備の促進を目的としており、行政指導を行うためのものではない」ことを説明しました。

続いて、2019年度に実施した調査の結果から、「監督部門および審査・監督委員会の設置、構成員」「販売情報提供活動の資材等の審査」「評価・教育」「モニタリング等の監視指導の実施」「不適切な販売情報提供活動への対応」「苦情窓口」等に関する調査対象4団体および製薬協会員会社の対応状況を紹介しました。

最後に、「今回の調査結果を参考に、自社の体制の確認を実施してほしい」「適切な薬物治療のためには製造販売業者による医療関係者への情報提供は不可欠であり、医薬品を必要とする患者のために今後も適切な情報提供を心がけてほしい」と述べました。

帝京平成大学 薬学部 薬学科
薬事・情報学ユニット 教授
渡邊 伸一 氏

閉会の挨拶

製薬協の田中徳雄常務理事は、特別講演演者の野原形太氏、渡邊伸一氏に謝辞を述べた後、コード管理責任者・コード実務担当者の本会への参加に対して謝意を述べました。

また、製薬協コードの違反は減ってはいないが、コード管理責任者・コード実務担当者が注視している姿勢を見せることが大きな抑止力になっていることは間違いなく、今後も活動を継続してほしいと要望しました。

「信頼」の礎となる透明性ガイドラインによる情報公開については、2013年に公開を始めて以来、自主的な公開であったにもかかわらず、この7年間製薬協の会員会社は、1社も欠けることなく公開を続けてきたこと、臨床研究法で義務づけられている項目(原則方式、印刷・検索可能)についても、多くの会員会社が前倒しで実施したこと、これらのことが厚生労働省医政局経済課より発出された事務連絡「令和元年度 臨床研究法の施行状況等調査の結果について」に反映されたこと、を紹介しました。

販売情報提供活動監視事業については、情報を提供した相手が不適切に感じたのであれば、われわれは改善しなければならない、また、自社が指摘されなかったことを他人事と考えず、この機会に報告書を社員全員で共有し自社の行動を振り返ってほしい、と要望しました。

最後に、「新薬の研究開発」と「コンプライアンス」は、車の両輪であり、製薬産業に従事するものすべてがそのことを十分理解し日々実践しなければ、社会からの信頼は得られないと述べ、いっそうの理解と協力をお願いしたいと締めくくりました。

製薬協 田中 徳雄 常務理事

(コード・コンプライアンス推進委員会 実務委員 吉峯 洋之

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