トピックス 「2020年度 医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」を開催

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例年、「医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」は4月に開催し、当局アワーとして厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より講師を招き特別講演を行ってきました。しかし、本年は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、春の合同総会は延期となり、2020年11月20日に合同総会が開催されました。会場はこれまでの場所に代わり、日本橋に新しく完成した、室町三井ホール&カンファレンス(東京都中央区)での開催となりました。ただ、新型コロナウイルス感染症がいまだ沈静化していない状況を踏まえ、"三密"を避けるため、製薬協幹部、製薬協医薬品評価委員会および製薬協薬事委員会の正副委員長ならびに各部会幹部等約50名が会場参加、そのほか各委員会メンバー約600名はオンラインでの参加となり、初めてのハイブリッド合同総会の開催となりました。

会場の様子

2019年12月には、5年ぶりの医薬品医療機器等法(薬機法)の改正があり、2020年度より段階的に施行されています。そのための施行規則も発出されつつあり、薬機法改正への対応が進行しつつ現在を迎えているのが現状です。そこで、今回の当局アワーは薬機法改正に係る話が中心となり、会員各位には大変興味深い合同総会として、厚生労働省大臣官房審議官の山本史氏はじめ6名の演者の話に耳を傾け、法改正への認識を深めることができました。この日のプログラムは製薬協医薬品評価委員会の日吉裕展委員長の開会の辞で始まり、続いて特別講演があり、最後に製薬協薬事委員会の柏谷祐司委員長による閉会の辞で、医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会を終えました。

1. 当局よりの特別講演

(1)「最近の医薬行政の動向」

厚生労働省 大臣官房審議官 山本 史

2020年1月1日付で大臣官房審議官に就任するも、このたびの新型コロナウイルス感染拡大により直接話をする機会がなかったが、このようにハイブリッドの対応を取りながらも直接顔を合わせ、話をする機会を得られたことに対してお礼の言葉がありました。今回の新型コロナウイルス感染症の流行により、検査薬、治療薬、予防薬がいかに大事か、必要かを全国民が改めて認識したところであり、今後とも製薬企業には、より良い薬を安全、安心に届けることに尽力してほしいと述べた後、現在の日本を取り巻く環境、さらには薬機法改正に対する考え方と、施行状況の話がありました。

(2)「審査管理業務・治験の改善と企業に期待するもの」

厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課長 吉田 易範

医薬品業界を取り巻く環境、承認審査の現状について、日本の疾病構造が脳血管疾患は減少し、がんが増加していることから、新薬開発動向としても抗悪性腫瘍薬治験が大幅に増加している等の話がありました。また、最近の動き・試みについては、リアル・ワールド・データ(RWD)の活用の試みや今回の薬機法改正等の説明がありました。加えて、新型コロナウイルス感染症に対して、「新型コロナウイルス感染症に対する医薬品等の承認審査上の取扱いについて」の説明とともに、新型コロナウイルスのワクチンの早期実用化に向け、厚生労働省としても製薬企業と協力して全力で取り組んでいく等の話がありました。

(3)「研究開発振興の展開と企業に期待するもの」

厚生労働省 医政局 研究開発振興課長 笠松 淳也

まずはじめに、今回の新型コロナウイルス感染症対策への製薬業界による多大な協力に対しお礼が述べられるとともに、現在、研究開発振興課として重点的に取り組んでいる健康・医療戦略における取り組み、クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の構築、小児医薬品開発推進、データヘルス改革等、医療分野のICT化等の話がありました。厚生労働省としては、医療現場のニーズに応える医薬品の実用化を推進するために、文部科学省、経済産業省と連携して対応しているが、研究開発振興課では創薬基盤推進研究事業、臨床研究・治験推進研究事業により、実用化推進に向けた対応を推し進めている等の話がありました。

(4)「安全対策の新たな展開と企業に期待するもの」

厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬安全対策課長 中井 清人

医薬品等安全対策のトピックスとして薬機法改正による添付文書の電子化動向等の話がありました。添付文書の製品への同梱を廃止し外箱に記載された符号からアプリを利用し、電子的に添付文書および医薬品リスク管理計画等の関連文書を見られるようにすることが求められており、また、MID-NET(医療情報データベース基盤整備事業)の運用改善により製薬企業の利用促進にも大きな期待を示されました。審査の段階で市販前、市販後にエビデンスとしてなにを求めるかを明確にして対応する時代であり、先駆け審査指定制度、条件付き早期承認制度の法制化も考慮し、市販後の育薬を見据えた開発を考える時期にきており、そのための議論を始めたいとの見解を示しました。

(5)「薬事監視指導業務の展開と企業に期待するもの」

厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課長 田中 徹

最近の監視指導業務における年次推移では指導事例が近年増加傾向にあり、特に承認書と異なる製造方法による回収が多く見られています。その中でも原薬の問題から製品が違法製造となり、回収となる傾向が多発しているので、業界としても注意が必要と説明されました。広告規制では、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン対応について、社内体制整備の充実を改めて求めました。加えて、法制化された広告違反に対する課徴金制度についての説明とともに、輸入監視、GMP(Good Manufacturing Practice)、法令遵守体制整備に対する話がありました。

(6)「PMDA業務の改善と企業に期待するもの」

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 組織運営マネジメント役 佐藤 大作

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の第4期中期計画の基本的構造としてのセイフティ・トライアングルによる総合的なリスクマネジメントとして、レギュラトリーサイエンスの推進による業務の向上、国際化の推進、組織の役割・社会的立場を踏まえたガバナンス・コンプライアンス体制の構築とともに、この3つの役割を一体として行う世界で唯一の公的機関として、レギュラトリーサイエンスに基づき、より安全でより有効な製品をより早く医療現場に届け、医療水準の向上に貢献するとともに、2040年を見据え、国民の健康寿命の延伸のため、積極的な役割を果たすとして、PMDAの最近の対応についての話がありました。

2. 終わりに

今回の医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会に対して、山本氏はじめ講師のみなさんからは、「2020年に入り、この新型コロナ禍では対面で話をする機会が皆無でしたが、本日の合同総会では直接話す機会を与えられたことに対して感謝する」との話がありました。この日の医薬品医療機器等法改正および施行に向けた当局からの話をみなさんが正しく理解し、今後の業務に適切に対応できることを願うとともに、本年も充実した合同総会開催に向け準備を進めていただきました関係者、事務局のみなさん、当日会場係として協力をいただきました製薬協医薬品評価委員会データサイエンス部会のみなさんに感謝を申し上げます。

(医薬品評価委員会 副委員長 花輪 正明

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