トピックス 「第8回 日台医薬交流会議」開催される

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2020年10月15日、「第8回 日台医薬交流会議」が開催されました。通常であれば、年交代にて日本での開催を予定しておりましたが、コロナ禍ということもあり、今回は、初の試みとなるオンライン形式の開催となり、日本側では発表者・事務局以外の聴講者はすべてオンラインでの参加となりました。一方、台湾では新型コロナウイルスの国内新規感染者がゼロを維持しており、これまでと大きく変わらない日常を過ごしていることもあって、国立生物工学研究所内会議場(國家生技研究園區)(台湾・台北市)に参加者が一堂に会し、会場からのオンライン接続となりました。

オンラインでの会議の様子

本交流会議は、日本・台湾間で2013年11月5日に「医療品規制に関する協力の枠組み設置のための公益財団法人日本台湾交流協会(日本側)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会、台湾側)との間の取り決め(日台薬事規制協力取決め)」が締結されたことを受け、その一環で、同年12月に台北で「日台医薬交流会議」が開催されたことに始まります。「日台薬事規制協力取決め」では、日台間の薬事規制に対する相互理解と協力へ向けたプラットフォームの設定、および日台の規制当局に対する協力要請等を行うこととしています。このような背景から、両国の協力体制の基盤構築とあわせ、各テーマについて、毎回、より掘り下げた発表および討論が行われ、新薬に関しては新薬審査協働スキームが進んでいます。今回の交流会議では、医薬品・医療機器関係者から、488名(日本246名、台湾242名)が参加し、COVID-19対策や、薬事規制、医療保険制度について最新の情報を共有し、双方の課題について議論しました。そこで、高齢社会に対応した革新的な新薬創造に向け、ビッグデータの活用、健康保険における薬価調整の問題等について、アジア対応といった観点から、いっそうの相互理解を深めることができました。

日本側は日本台湾交流協会のもと、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課国際薬事規制室長の安田尚之氏、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長の藤原康弘氏、同国際部長の佐藤淳子氏等、日本の規制当局より15名、製薬協より中川祥子常務理事をはじめ計66名、一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)より57名、その他一般の参加者を含めて、日本からの参加者は総勢246名でした。

台湾側は台湾日本関係協会のもと、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)副所長の陳惠芳氏をはじめ、財団法人医薬品査験センター(CDE)、衛生福利部中央健康保健署(NHIA)、台湾研究開発型生技新薬発展協会(TRPMA)、台湾製薬工業同業公会(TPMA)、中華民国開発性製薬研究協会(IRPMA)、民国西薬代理商業同業公会(CAPA)、台北市西薬代理商業同業公会(TPADA)、台湾医薬品マーケティング管理協会(TPMMA)、台湾後発品協会(TGPA)、中華民国製薬発展協会(CPMDA)、台北市日本工商会医薬品医療機器部会(JCCI PMDC)、中華民国医療器材商業同業公会全国連合会(TFMDCA)、台湾医療器材工業同業公会(TMBIA)から参加があり、台湾側の参加者は242名でした。

はじめに主催者挨拶および祝辞として、日本台湾交流協会専務理事の花木出氏、台湾日本関係協会副秘書長の林慶鴻氏より、前回には想像がつかなかった新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に対する薬事規制体制をはじめ、規制当局と業界との協調関係が近年ますます前進している中で、双方の薬事規制の調和を図ることや、医療保険制度についての相互理解を深めることを期待する旨が述べられました。そして本交流会議では前回に引き続き、医薬品、医療機器についての議論が行われました。まずは、医薬品・医療機器共通のkeynoteセッションとして両当局から規制に関する情報のアップデートがあり、その後、COVID-19に対して薬事規制に関しての情報交換、さらに健康保険に関する議論が行われました。

1. Keynote Speech

医薬品・医療機器に係る規制のアップデートとして、日本からPMDA、台湾側からTFDAが最新の状況を発表しました。

PMDAからは、はじめに日本における改正薬機法の背景と改正点・COVID-19への対応・日台協働体制に関して、紹介がありました。改正薬機法のパートでは、主に「安全で品質の高い革新的な医薬品を迅速に患者へ届ける」ための改正ポイントについて説明がありました。承認審査制度の合理化については、条件付き早期承認制度と先駆け承認制度の法制化・医療機器の特性を踏まえた新しい承認制度・バスケットやアンブレラ等、新しい臨床試験の治験手続きの明確化と被験者の安全性が確保されていることが紹介されました。また、COVID-19への対応として、ステートメントを発出したことによって治験がスムーズに行える環境整備をしている点が紹介されました。そして最後には、改めて2011年の東日本大震災における多大な寄付のお礼と、日台協働に関して8回まで続いている本会議、国際共同治験(Multiregional Clinical Trial、MRCT)のワークショップ・アジアトレーニングセンターの開催等の緊密な協働体制ができていることと、今後日台のみならずアジア諸国・世界のための協働を希望していることが伝えられました。

台湾からは、Medical Product Management・COVID-19の対応・日本とのコラボレーションに関して紹介されました。Medical Product Managementについては、遺伝子治療の薬事制度や治療技術の承認状況、開発中の治療薬の開発状況と、バイオシミラー・後発品・希少疾病薬の審査プロセスの効率化に関して説明がありました。続いて、ICH E2Bへの対応を開始したことやeCTDに対応できるようなプラットフォームの準備状況等が案内されました。COVID-19への対応に関しては、医薬品の供給バランスを重視し、供給に関するプラットフォームをつくり、情報を管理することで、医薬品の不要な買いだめ等を防ぐことができたこと等が紹介されました。最後に日本との新薬審査協働スキームのもと、2件が承認され、現在は2件が審査中であることが共有され、今後も日本との交流はもちろんのこと、各国当局との交流も積極的に図っていきたいと述べました。

2. COVID-19に対する薬事規制の課題

本セッションでは、COVID-19に対して実行してきた対応に関しての現状が紹介されました。

日本では、新型コロナウイルス感染症対策として、新型コロナウイルス感染症または関連する症状を対象とする医薬品、医療機器等について優先審査を行うとともに、必要な医薬品等の開発が遅滞なく進むよう、治験審査委員会で緊急に審議が必要な場合はメール・オンライン開催等も考慮され、同意文書等の署名に関しても条件付きで複写物や電子署名等を現資料として扱うことができるようにする等、迅速な開発や承認審査が可能となるよう柔軟な対応を行っていることが説明されました。また、ワクチン開発に関しても、薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)/世界保健機関(WHO)を通じて国際的な連携を強化し、COVAXファシリティへの参加も決定したことが報告されました。

台湾では、ワクチン開発には従来10年以上を要していましたが、法律改正によりCOVID-19のような特別なケースでは、関連書類の提出により製造・輸入・調達が認められ、迅速審査の促進を行っており、現在3つのワクチンが臨床試験の段階にあると紹介されました。また、有望なワクチンに対しては、技術面、財政面でも積極的に支援を進めている一方で、COVID-19のワクチン開発では、評価する標準因子が明確でなく、上市後の効果・安全性評価も重要な課題であることから、現在専門家と議論中であり、国際的な協力が重要であることが確認されました。

3. 健康保険制度

本セッションでは、両当局から薬価制度の紹介がありました。

日本からは、薬価制度・算定ルールが紹介されました。新薬算定ルールに関して、類似薬効比較方式(類似薬がある場合)、原価計算方式(類似薬がない場合)と有用性・新規性が認められた場合の特別加算、加えて、海外薬価調整に関して等、幅広く解説がありました。

台湾からは、保険制度および薬価制度に関しての現状が共有されました。まずは、単一支払い制度に加えてGlobal Budget制度を導入し、年間の医療費総支出総額が決められた中で運用されていること、また、新薬算定ルールに関しては、先進10ヵ国(指定されている10ヵ国)の価格を参照する制度があることや、審査期間の実態に関して紹介されました。そのほか、現状財政が圧迫されていることに対して、費用支出の増加に対する対策として導入されている条件付販売契約(Managed entry agreement、MEA)に関しても紹介がありました。最後に、財政が圧迫されている現状を改善するために、事前に予算計画を算出することを目的として、今後申請を予定している薬剤の費用を事前に登録してもらう「Horizon Scanning」といったプロジェクトが紹介され、支出をコントロールするだけでなく、適切な予算を組めるようにさまざまな対策を講じていることが示されました。

4. 総括

2013年に始まった本交流会議は毎年交互に開催し、今回で8回目を迎えました。両当局間では医薬品や医療機器の作業部会が立ち上がり、人材交流や、新薬審査協働スキームが進んでいます。当日は、COVID-19の世界的流行により対面での開催はできませんでしたが、その中でも活発な議論ができ、薬事規制に関しては、両当局がいかにイノベーション等を規制に取り込んでいるかが理解できました。またCOVID-19対策に関しても、柔軟に、また迅速に対策を進めていることが紹介され、今後も、両当局間で継続的にコミュニケーションをとり、相互理解と信頼を深めていくことが規制調和に向けて不可欠だと感じることができました。さらに、本年の日台医薬交流会議では、両当局の新薬審査の情報交換をさらに進めていくことが合意され、さらなる両当局の協力が進んでいくものと確信しております。2021年は台湾での開催予定です。次年はぜひ対面での開催を期待するとともに、この枠組みのもとで、日本・台湾の医薬品、医療機器に関する規制協力、理解の促進が官民でなされていくことを願ってやみません。

(国際委員会 アジア部会 台湾チーム 香川 治、桐山 尚、出来 隼人

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