Information 「2021ライフサイエンス知財フォーラム」 COVID-19を含むパンデミック対応策における知財権の取り扱い方

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2021年2月22日(月)午後1時からオンラインセミナーにて「2021ライフサイエンス知財フォーラム」を開催します。

新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大は世界の人々の生命や生活に重大な影響をもたらしました。社会活動や経済活動の観点では、感染拡大を契機としたデジタル化、働き方改革の加速、グローバリゼーション、サプライチェーンの見直しに加え、ワクチンや治療薬開発へのニーズの高まりが製薬企業とその業界に向けられています。COVID-19の対応に特許権が障害となっている事例は認識されていないにもかかわらず、パンデミック発生時の治療薬やワクチンへのアクセス確保に向けて、世界保健機関(World Health Organization、WHO)はSolidarity Call to Action(行動のための団結への呼びかけ)を公表し、COVID-19の対応に必要な知識、知的財産、データを共有する自発的な枠組みの提案と、治療、診断、ワクチン関連の知的財産等の所有者に非独占で全世界を対象とする自発的ライセンス等を求めました。

製薬業界において知的財産制度、特に特許制度は一定期間の独占を特許権者に認めることにより研究開発に要した費用を回収し、次の研究開発に投資するという一連の長期かつ膨大なコストがかかる研究開発イノベーションのサイクルを支える重要な制度であり、本制度のもとで製薬企業は多くの医薬品やワクチンを開発・提供し、人類の福祉に貢献してきました。同時に、製薬協ではステートメント「グローバルヘルスに関する優先課題と活動」において、新薬を開発し続けるためには知的財産の適切な保護が非常に重要であるが、新興国における医薬品普及に関して、権利行使の是非、ライセンス条件の緩和等フレキシブルな特許権の運用を目指すとし、感染症治療薬・ワクチンの創製に向けた提言の中で、パンデミック発生時の世界同時承認を可能とする規制の国際調和を推進するため、海外の政府・審査機関・研究機関等さまざまなステークホルダーとの連携・交渉を推進する旨を述べています。一方、日本政府は第75回国連総会において、新型コロナウイルス感染症から命を守るために、治療薬・ワクチン・診断の開発と、途上国を含めた公平なアクセスの確保を、全面的に支援し、国際的枠組みが成果を挙げるよう、国際機関を後押しするとともに、「特許権プール」枠組みも提案していることを宣言しています。

これまで途上国における医薬品普及を促す仕組みの一つとして、製薬企業の自発的なパテントプールのメカニズムを通して高品質、安全、有効、より適切、より手頃な医薬品の普及の実現とともに、途上国の健康向上に貢献することを目的に2010年7月にMedicines Patent PoolがUNITAIDにより設立され、以後HIV、マラリア、肺結核に対する低分子医薬の普及に成果を挙げてきています。一方で、ワクチンや高分子医薬の製造とその管理には低分子医薬の場合に比較して莫大なコストや設備が必要であり、低分子医薬で機能したMedicines Patent Pool等の仕組みがワクチンや高分子医薬の普及に向けて直ちに機能しない可能性も論じられています。

こうした中、製薬業界では従来にないスピードで産学官が連携してCOVID-19の対応に向けた研究開発が進められています。本フォーラムでは、このような医薬品開発の現状を紹介するとともに、COVID-19を含むパンデミックに対峙する場面で、研究開発イノベーションのサイクルを支えるドライバーとなる知財権の保護と、生命の危機を解決する医薬アクセスに向けた知財権の利用と、どのような仕組みでバランスをとるのか、産学官を代表する方々に垣根を越えて議論していただきます。

「2021ライフサイエンス知財フォーラム」COVID-19を含むパンデミック対応策における知財権の取り扱い方

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