トピックス ICH M8 eCTD v4.0改正通知説明会 eCTD v4.0国内実装に向けて説明会を開催

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2020年6月10日、製薬協主催「ICH M8 eCTD v4.0 改正通知説明会」をオンライン形式で開催しました(ICH:医薬品規制調和国際会議)。コロナ禍の状況の中、当日はオンラインで約300名の参加者を迎え、2020年2月19日に発出された薬生薬審発0219第1号「『電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)による承認申請について』の改正について」通知の理解を支援する目的で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より改正ポイントを主眼に説明があり、製薬協からは日本でのeCTD v4.0の製薬企業内でのインパクトの説明と製薬協の取り組みについて説明しました。本稿では、講演内容を報告します。

1. 説明会開催要領

企画当初は、改正前の通知説明会の参加実績に鑑み、集会形式で150名募集を予定しましたが、募集の準備中にWebを活用したオンライン形式での開催を決定しました。募集人数を据え置きで募集を開始したところ、実際には募集人数の倍以上の応募がありました。オンライン形式での開催としたことで、ご応募いただいた方全員の参加が可能となり、約300名の参加となりました。

対象は薬事業務担当者、薬事オペレーション担当者、eCTD作成にかかわる方(アウトソーシングベンダー含む)としました。

オンライン形式での開催のため、Q&Aセッションは募集時に記入いただいた質問へ回答する方式で行いました。

表1 プログラム

2. 医薬品医療機器総合機構からの説明

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)ICH M8 トピックリーダーの齋藤亮氏より2部にわけて説明がありました。

第1部では、1)eCTD v4.0関連通知について構成を含む概要の説明があり、続いて2)eCTD v4.0の国内実装スケジュール案と、3)そのためのパイロットテストの実施要領について、そして4)eCTD v4.0編纂に必須となるシステムの開発ベンダー向けの説明会について講演が行われました。

まず、通知内に含まれる新しい技術用語についての解説がありました。また、通知の構成や理解のための読み進め方についても説明がありました。当該改正通知は、4つの別紙が添付されており、別紙1と2は国内の実装要領を、別紙3と4はICHで合意した仕様書となっています。また、実装パッケージとして用意されている内容(コードリスト等)の説明がありました。国内実装にあたっては、eCTD v4.0の仕様で作成されたeCTDパッケージのPMDAでの受付・審査にはシステムが必要となるため、PMDAのシステムがeCTD v4.0を受付可能となる日が明確になってから別途通知すること、またv4.0の受付開始後しばらくは現行バージョンのv3.2.2も受け付ける「経過措置期間」を設けることの説明がありました。

現在PMDAで審査システムの構築中であり、2021年の5月からパイロットテストの実施を予定、その結果を受けての通知の見直しやシステムの改修を行う工程を計画しています。現時点での国内実装スケジュールは、2022年の4月からeCTD v4.0仕様でのeCTD受付が開始となり、経過措置期間を2025年度末まで設けて、2026年度から義務化する予定であることを言及しました。

パイロットテストでは、実装要領の記載不備および解釈の差異が生じる点の有無の確認と、通知およびシステムの必須修正ポイントを特定する2つの目的に、eCTD v4.0仕様のパッケージを滞りなく受付し、承認審査に利用可能であることの確認をゴールとして実施することの説明がありました。想定の実施時期を2021年5月から7月までとし、参加対象者はeCTD v4.0を用いて承認申請を行う申請企業、eCTD編纂ツール作成ベンダー、eCTD編纂サービス提供ベンダー等として協力の検討が呼びかけられました。ただし、パブリックコメント時にはあった「簡易編纂ツールの提供」はないこと、「申請電子データシステムの利用」についてはスコープ外であることの補足説明がありました。

また、eCTD v4.0での申請においては、企業側は編纂システムでの作成が必須となりますが、一方でシステム開発状況は気になるところです。そこで開発ベンダー向けの質疑応答会をPMDAで企画、募集を7月初めに行い、実際の開催日程は今秋であることの予告がありました。

第2部では、2017年7月5日付け薬生薬審発0705第1号の通知からの改正点について、技術的なポイントをわかりやすく整理した説明がありました。この改正点の説明が本説明会のメインパートでしたが、技術的な内容が多いため、本稿ではそのほとんどを省略することになりますが、ご了承ください。

改正点として大きく挙げられたのは12項目でした。その多くが申請電子データをeCTDに搭載して提出することについての改正ポイントの解説でした。eCTD v4.0では現行の運用と違って、申請電子データをeCTDパッケージに搭載して提出しなければならなくなります。この仕様について、2017年の通知発出後にさらに審査システム仕様と併せて検討がなされ、その変更点が改正通知に反映されました。また、申請電子データ以外の改正ポイントとしては、文書の再利用や、添付資料番号の記載の方法等について説明がありました。

3. 製薬協からの説明

製薬協からは、1)eCTD v4.0で変わること—薬事の観点から、2)日本におけるeCTD v4.0パイロットテストの製薬協参加計画の2題の説明がありました。

薬事の観点からは、製薬協薬事委員会の浜田奈津子委員より各企業内にてeCTD v4.0の運用開始の検討をするにあたってのインパクトおよび留意すべき4点、(1)eCTD publisherとの連携、(2)プロセスの見直し、(3)タイムラインの見直し、(4)外注時のeCTD作成コストの確認について、明確なメッセージが伝えられました。

eCTD v4.0はこれまでと同じく構造情報はXMLファイル、文書はPDFファイル等であることに変わりはありませんが、現在のeCTD v3.2.2以上にXMLには記述する情報が増えることで、薬事担当者とeCTD publisherとの連携(適宜情報を共有するための協力体制)が必要となります。また、前述のPMDAからの説明の通り、申請電子データはeCTD v4.0パッケージに含めて提出することに変更になります。申請電子データの提出を要さない回答書提出時はeCTDライフサイクルが発生しませんが、申請電子データを回答として提出するときはeCTDパッケージに含めて提出することになり、統計解析・臨床薬理担当と薬事担当、eCTD publisherの連携が必要になります。それに伴うインパクトとして、現在の申請電子データ提出に関するプロセスの見直しが各社で必要となる点を示しました。併せて、初回申請を含むeCTD編纂のタイムラインと、申請電子データ提出を伴うeCTD編纂と照会事項回答提出のタイムラインの見直しもすべきであると説明がありました。外部業者に編纂を委託する場合は、回答用のeCTDライフサイクルのためのコストの確認も大切であることをメッセージとして伝えました。

また、PMDAからのパイロットテスト実施予告と、薬事の観点からの講演を受けて、製薬協のパイロットテスト参加の取り組みについて、ICHプロジェクト委員会の市川佳代子委員より説明がありました。製薬協の参加の目的、役割、流れ、またテストシナリオとその狙いが紹介されました。

eCTD申請の「申請から承認まで通したプロセス」において、eCTD v4.0移行後も滞りなく申請業務を行えるように具体的なビジネスインパクトと、変更点と課題をより深く明確に理解することを目的として掲げられました。製薬協としてのパイロットテスト参加対象は、薬事委員会、医薬品評価委員会の電子化情報部会とデータサイエンス部会で、それぞれの専門の観点から携わることの説明がありました。そして、説明会の時点で4つのテストシナリオ1)基本となる申請・審査のケース、2)臨床試験を含む一部変更申請、3)照会事項回答で申請電子データを提出するケース、4)2社共同開発のケースを検討している旨の説明があり、それぞれの技術的確認ポイントや課題について説明しました。

4. Q&Aセッション

前述の通り、参加募集時に寄せられた質問に対して回答する形式でのセッションとなりました。基本的な質問や技術的な深い質問が寄せられており、同じ内容の質問をまとめて全6問とし、すべてに回答とその解説がありました。うち、5問はPMDAから、1問は製薬協からの説明でした。質問内容にばらつきがあることから、本説明会には、いろいろな立場からの参加があったことが考察されます。

5. 終わりに

本年度より申請電子データの提出が義務化され、これに伴い、データ提出が必要な申請でのeCTD形式提出が義務化となりました。現在、すでに多くの業務を電子的に行い、またさらに急速なデジタル化対応を求められる状況となっています。本説明会でPMDAとしては2年後にはeCTD v4.0の受付開始を見据えているという点と、その義務化の時期が明確に示され、eCTD v4.0への取り組みを本格的に始めるべき時期になっていることを参加者が実感した説明会であったと考えています。

製薬協として新しい申請方式eCTD v4.0の国内実装のための活動と取り組み促進のための活動に今後も継続して取り組んでまいります。また、資料はこちらをご参照ください。

(ICH M8 EWG/IWGトピックリーダー 玉村 聡子

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