トピックス 「ICHバンクーバー会議」Web会議形式で開催される

印刷用PDF

2020年最初のICH(医薬品規制調和国際会議:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)本会合は、カナダ・バンクーバーにて5月23日~27日にわたって行われる予定でした。しかし、世界的な新型コロナウイルス感染症のパンデミックの状況を鑑み、感染拡大防止の観点から対面会合の開催を断念し、ICH史上初となるWeb会議形式での実施となりました。日米欧アジア各地からの参加となるため会議時間帯は日本の夜(米国・カナダ・ブラジルは朝、欧州・アフリカ圏は昼、アジア圏は夕方から夜)に設定され、管理委員会は5月13日、25日、26日、総会は27日に、各日2時間のプログラムとなりました。また、専門家/実施作業部会(ワーキンググループ)の議論も同時期にそれぞれ並行して実施され、ICHトピックスの進捗が図られました。

以下にバンクーバー会議(Web会議)での特記事項を記載します。

1. ICHメンバー、オブザーバーの承認

ICHの新規メンバーとして、トルコ医薬品医療機器庁(TITCK)が承認されました。TITCKはいままでオブザーバー団体でしたが、今回メンバーへの昇格が認められました。また、新規オブザーバー団体として、レバノン公衆保健省(MOPH)の加入が承認されました。

この結果、ICHメンバーは従来の16団体から1増の17団体、オブザーバーは1増1減で32団体となり、ICHは総勢49団体の組織体制となりました(末尾の参考資料参照)。

2. 管理委員会の議長、副議長の任期延長

管理委員会のRoP(Rules of Procedure)が改定され、議長と副議長の任期が従来の1年から2年に延長されました。これで、総会議長・副議長の任期と足並みが揃うこととなりました。なお、現在の管理委員会副議長は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)執行役員の中島宣雅氏が務めています。

3. ICHトピックの動向

バンクーバー会議で対面会議が予定されていたトピックのワーキンググループ(WG)は、この期間を活用してWeb会議を精力的に実施し進捗を図りました。そのほか、管理委員会、総会で既存トピックのStep移行と、新規トピックの議論も行われました。

Step4到達

以下のトピックについて、Step 4到達が報告されました。これらについては、各規制当局における実装のプロセスに入ります。

  • M8(eCTD v4.0 の電子仕様開発)Q&A v1.3:eCTDのQ&A
  • S11:小児用医薬品開発の非臨床試験に関するガイドライン
  • S5(R3):医薬品の生殖発生毒性試験法ガイドライン(改定)

Step2到達

以下のトピックについて、Step 2到達が報告されました。今後、各国・地域でパブリックコメントが実施されます。

  • Q3C(R8):「医薬品の残留溶媒ガイドライン」の改正

新規トピックの承認

ガイドライン作成を行う新規WG立ち上げに向け、以下の2つが承認されました。

  • 「CTD—品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン」の改定(M4Q(R1)ガイドラインの改定)
  • 「品質に関する申請資料の構造化」

上記の2トピックは相互に関連することから、M4Q(R1)の改定について先に検討を進めることになりました。しかし、本検討を進めるにあたっては現在議論中の別トピックの検討内容を参照する必要があるため、WGの設立は本年12月頃になる見込みです。もう一方の「品質に関する申請資料の構造化」については、M4Q(R1)の改定の検討がある程度進んでからWG設立・活動開始することとなりました。

検討グループ(Discussion Group、DG)設立

以下の新規トピック提案については、ガイドライン作成には直接進まず、トピック化を図るための検討を行う検討グループ(DG)を立ち上げることとなりました。この両者は密接に関連する内容であるため、どのようにトピック化するかも含め検討が行われていきます。

  • 「医薬品登録をサポートするモデル情報に基づく医薬品開発に関する一般指針」(MIDD)
  • 「医薬品登録をサポートする投与反応情報」(E4 ガイドラインの改正)

4. ICH 30周年に向けて

ICHアテネ会合(2020年11月)に付随して、11月14日にICHの30周年記念イベントを行うこととなりました。内容は、Q(品質)、S(安全性)、E(有効性)、M(複合領域)それぞれの領域において、重要なガイドラインを中心とした講演とパネル討論をそれぞれ行った後、ICHの過去30年を振り返り今後の10年を議論する総合的なパネル討論を行う予定です。また、主要地域のDIA(Drug Information Association)年会(日・米・欧)に付随してICH 30周年記念パネル討論や各領域の講演を実施します(後述の通りアテネ会合がWeb開催となったため、本件の実施時期は検討中となっております)。

5. 今後のICH総会会合予定

2020年11月14日~18日の日程で、ギリシャ・アテネにおいて対面会議を実施予定でしたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、今回のバンクーバー会議同様Web会議形式で行うこととなりました。

なお、ICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるようにしています。今回のICHバンクーバー会議(Web会議)の成果や各トピックの概念書、作業計画等はICHウェブサイトからご覧いただけますので、ご確認ください。

参考資料:ICHメンバー、オブザーバー一覧(2020年6月現在)

表1 会員(17団体)

表2 オブザーバー(32団体)

(国際規制調整部長 柳澤 学

このページをシェア

TOP