トピックス 「副作用症例評価業務のあるべき姿」ワークショップを開催

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近年、医薬品安全性監視(Pharmacovigilance、PV)活動の根幹を担う副作用症例評価(Case Processing、CP)業務は以前にも増してその重要性が高まり、取り扱うべき安全管理情報は種類および量ともに増加の一途をたどっており、日々の業務の遂行において、よりいっそうの正確性と効率性が求められてきています。そのような状況を踏まえ、CP業務が真に求められていることはなんであるかを今一度自他ともに問いかける機会を設け、CP業務担当者が、明日の業務に役立つ新たな視点、気づき、会社を越えたつながりを共有することを目的として、2019年11月21日に製薬協医薬品評価委員会PV部会継続課題検討チーム2(KT-2)主催による「副作用症例評価業務のあるべき姿」ワークショップを日本橋ライフサイエンスビルディング(東京都中央区)にて開催しました。製薬企業の安全性部門、特にCP業務ならびに関連業務担当者を対象として募集を行ったところ、当初定員80名のところ、製薬協の枠を越えて約130名の応募があり、当日は約100名の参加がありました。

会場風景

当日のプログラム(1/3):オープニング、グループワーク(1)

今回のワークショップは、製薬協医薬品評価委員会PV部会継続課題検討チーム2(KT-2)メンバーから9名のファシリテーターを選出し、参加者を各グループに分け、ディスカッション形式で議論を進めました。

まず、KT-2の佐藤千鶴子リーダーによるオープニング(開催目的や趣旨の説明、スケジュールの共有)で始まり、続いてグループワーク(1)にとりかかりました。簡単な自己紹介ののち、議論の整理のために下記フレームワークを用い、現状の副作用症例評価(CP)業務の課題について意見抽出をしました。

  • CP業務は好きですか?嫌いですか?(理由も)
  • CP業務に対するモチベーションはなんですか?
  • CP業務の意味・意義は何だと思いますか?
  • CP業務で楽しい、と思えることはありますか?
  • CP業務でつらい、と思うことはどんなことですか?
  • CP業務への期待や将来の展望は、ありませんか?

グループワークの様子(1)

当日のプログラム(2/3):事例共有

製薬協会員会社2社より、安全性速報(ブルーレター)対応事例、CP業務の組織活性化事例をそれぞれ共有しました。

事例共有1として、日本イーライリリー安全性情報部ケースマネジメントの木河菜乃氏が、ブルーレター対応を通した症例評価業務に対する意識の変化について、安全性情報部におけるケースマネジメントの役割、ベージニオ錠市販前からブルーレター発出までの経緯、ブルーレター対応時の苦労話、ブルーレター経験前後の心境の変化、自身のこれからのケースマネジメントに対する思いを発表しました。

事例共有2として、協和キリンファーマコビジランス部ケースプロセッシンググループの原口恭子氏が、ケースプロセッシンググループの取り組みについて、ケースプロセッシングに特化したグループ発足の背景、グループ発足時の課題とそれらを解決してきた経緯やモチベーションを保って仕事をするために工夫していること、今後の展望を紹介しました。

普段なかなか聞くことのできない事例紹介に、参加者全員が熱心に興味深く聞いていたことが印象的でした。

当日のプログラム(3/3):グループワーク(2)、発表、クロージング

グループワーク(1)で出てきた課題等を踏まえながら、さきほどの2社の事例紹介から感じたことをグループ内で共有しました。そして各グループ内で3つほどの班に分けて、あるべきCP業務について議論を深め、下記のフレームワークを用いて、各班のCP業務に対する思いを書き出しました。

  • 私たちはCP業務の未来は○○○だろうと想像し、その未来にワクワクしています
  • 私たちはCP業務の価値を○○○と考えます
  • 私たちはCP業務を通じて○○○の実現を成し遂げたいと思います
  • 私たちはCP業務をやっているからこそ○○○といった成長を叶えられると信じています

その後、各班の意見をもとにグループとしての意見を取りまとめ、全体に向けて発表しました。さまざまな意見が発表され、そのうちのいくつかを下記にまとめました。CP業務に従事する人には深く共感できる率直な思いが表現されているのではないでしょうか。

  • 私たちはCP業務の未来は○○○だろうと想像し、その未来にワクワクしています

    技術革新と外注化による効率化で安全性情報の検討に力を入れられること
    患者さんの苦しみを誰よりも理解し、重要な症例の生データを精査することで副作用発現のトレンドを見極め、安全性確保し続けること
    グローバル化が進み、国や企業で一元管理化していくこと

  • 私たちはCP業務の価値を○○○と考えます

    製薬企業の良心
    PVの根幹
    医療関係者のニーズに応えることや患者さんの安心安全を提供すること
    AI(Artificial Intelligence)にはできない症例との対話によって役立つ情報に昇華すること

  • 私たちはCP業務を通じて○○○の実現を成し遂げたいと思います

    患者中心医療
    不都合な情報を活かし次の予防に活かすこと
    新薬だけでなく長期収載品の価値の維持

  • 私たちはCP業務をやっているからこそ○○○といった成長を叶えられると信じています

    重要な安全性情報の追加により薬のライフサイクル(育薬)に貢献すること
    必要な情報を見極めるアンテナをもつこと

また、今後どのようなCP担当者になりたいかという佐藤リーダーからの問いに対して、AIやRPA(Robotic Process Automation)等のイノベーションと協業できる人材、サイエンスベースで1例1例を着実に評価する人材、CPのプロセスマネージメントを行う人材、さらには業務委託先のマネージメントを行う人材といった回答が挙がり、CP業務に求められる人材像に以前よりも多様性が出てきていると感じました。

最後にPV部会の西谷敏彦副部会長によるクロージングにて本会は終了しました。

グループワークの様子(2)

事後アンケート

会終了後にメールによるアンケートを行い、61名から回答が得られました。

会全体に対して、「非常に良かった」「良かった」58名、「普通」3名、「あまり良くなかった」「良くなかった」0名という評価でした。

良かった点として、CP業務に特化した人だけが集まる機会は非常に貴重で自社の業務体制を振り返る機会となった、外・内資および規模を問わず実務者レベルでディスカッションをすることで各社の意識の高さに改めて気がついた、CP業務の本質について見直す機会となり自身の業務に対して取り組む姿勢改善やモチベーションアップにつながった、等がありました。一方、改善点としては、1チームの人数が多く、まとまって議論することが難しかった、具体的にどうするべきかの踏み込んだ話をするのが難しく、概念的な話で終結した、他社の人と具体的な情報共有ができる時間があったら良かった、等の指摘がありました。

最後に

企画の段階では、参加希望者が少ないのではないか、本番当日の議論がうまく進まないのではないかという不安をもつこともありましたが、日ごろよりCP業務に真摯に向き合う参加者全員の高い参加意識によってこのワークショップを実りあるものにできたと思っています。また、会が終了した後でもあちらこちらで意見交換が続いており、多くの人がこのような場を求めていたことを改めて感じとることができました。今回のワークショップで得られたことが参加者のCP業務に少なからず役立っていることを期待しています。次期(2020~21年度)においても、CP業務に関連したワークショップを企画・開催したいと考えています。

(医薬品評価委員会 PV部会 佐藤 俊一

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