「2025年度 医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」を開催
2025年4月18日に日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)にて「2025年度 医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」を開催しました。本合同総会はハイブリッド形式で開催し、医薬品評価委員会および薬事委員会の幹部約70名は会場にて、その他各委員会メンバーはオンラインでの参加となり、出席者は2,100名以上となりました。総会の後、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)からの講師による特別講演を行いました。
合同総会は医薬品評価委員会の中路 茂委員長の開会の辞で始まりました。特別講演では、厚生労働省から大臣官房審議官の佐藤 大作氏、医薬局の高江 慎一氏、中井 清人氏、野村 由美子氏、医政局の長谷川 学氏、PMDAから安川 孝志氏の計6名が登壇し、薬機法改正、プログラム医療機器(SaMD)推進、ドラッグ・ラグ解消、安全対策強化など、医薬品行政の包括的な制度改正の推進について、共有がありました。
最近の医薬行政の動向
厚生労働省 医薬局 大臣官房審議官 佐藤 大作 氏
最近の医薬行政の動向として、薬機法等改正を中心に講演がありました。薬機法等改正はガバナンス強化、安定供給の確保(企業側の体制確保)、審査・産業振興、薬局機能強化を中心に2025年2月12日に法案提出されました。衆議院厚生労働委員会で採決され、本国会中に成立予定で進んでいることが紹介されました。
国内のみならず世界的な医薬品開発の動向についても触れられ、ベンチャーが創薬開発の担い手となっている現状を踏まえ、アカデミア・ベンチャーと製薬企業との協業によるイノベーションの創出を促進し、オープンイノベーションコミュニティの形成が必要であるとの見解が述べられました。また、薬機法等改正に関連した事項として条件付き承認制度の見直しやリアルワールドデータの活用や、創薬エコシステム支援事業、定期GMP調査の見直しについても説明がありました。

プログラム医療機器(SaMD)を巡る動向
厚生労働省 医薬局 医療機器審査管理課長 髙江 慎一 氏
「DASH for SaMD2~これまでの取組について」として、DASH for SaMD2の4つの柱の進捗状況について報告がありました。「萌芽的シーズの早期把握と審査の考え方の公表」ではYouTubeを通じた動画配信の状況、「SaMDの特性を踏まえた実用化促進」では二段階承認の考え方の整理および公表・承認事例の公表状況等、「早期実用化のための体制強化等」ではPMDAの審査体制の強化、相談区分新設等の状況、「日本初SaMD国際展開支援」では海外のSaMDに関する薬事承認・販売制度の調査や参照国での受入れ促進に向けて審査報告書等の英訳促進等の状況が報告されました。
「SaMD関連データのアップデート」では、プログラム医療機器の年度別承認件数の推移が示され、着実に増加している状況、相談受付件数の状況等が報告されました。
「SaMD関連予算」として、SaMDに関する厚生労働省事業および、経済産業省・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)事業の予算全般について報告がありました。

また、SaMDの分野は、政治的にも注目されている状況についてコメントがありました。
新薬審査を巡る最近の話題-ドラッグロス対応など-
厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課 中井 清人 氏
ドラッグ・ラグ/ロスへの対応として、オーファンドラッグ指定、小児用医薬品開発の計画策定の努力義務化など法改正内容のほか、海外開発先行品の国際共同治験前の日本人PI試験の省略、バイオ後続品における日本人データの必須廃止、先駆的医薬品の定義一部変更、条件付き承認制度、医薬品の製造方法等の審査あり方、GCPリノベーションなどに幅広く詳細に説明がありました。
条件付き承認制度の改正については、日本人データの基本的考え方を文書化し、条件付き承認の取り消し規定を設けたうえで、臨床的有用性が合理的に予測可能な場合に承認することとし、運用の 範囲を拡大したため、リアルワールドデータの活用も含め制度の利用を推進いただきたいとのコメントがありました。また、GCPリノベーションについては治験エコシステムの推進を通じて日本での治験が活性化し、ドラッグ・ロスが改善することの期待が寄せられました。

医薬安全対策業務の展望と企業に期待するもの
厚生労働省 医薬局 医薬安全対策課 課長 野村 由美子氏
はじめに、制度改正について、法制化後のRMPの運用イメージが示されました。ルーチンでない安全性監視活動についてスピード感をもってスムースに対応できるようにしていく必要があること、リスク最小化活動をいつまで継続するのかが今後の課題になると考えられること、効果の評価をプロセスから、アウトカムで行うためにリアルワールドデータ(RWD)の活用が重要であることが述べられました。
また、製造販売業者の三役について、ガバナンス強化の観点から、変更命令と品質保証責任者及び安全管理責任者の設置義務が法定化されたことについて説明がありました。
昨今の安全対策に関する事例から、あらためてセイフティーカルチャー醸成の必要性と、安全対策はリスク管理に加えて危機管理を行うことの必要性が述べられました。

将来展望についてデジタルトランスフォーメーション(DX)時代の安全対策の私見として、医薬品の安全対策に向けた情報の評価と対策は迅速に対応する安全対策に加えて、頻度評価等に基づき実施する安全対策の必要性が述べられました。また、医薬品・医療機器の製品データベースへの登録義務化の背景と重要性について説明がありました。
臨床研究法・再医療等安全確保法・ゲノム医療について
厚生労働省 医政局 研究開発政策課長 長谷川 学 氏
臨床研究法、再生医療等安全性確保法およびゲノム医療についての説明がありました。
臨床研究法については、法の概要、対象範囲、法制度見直しの考え方等についての説明がありました。法制度の見直しは、これまで課題であった臨床研究法の課題を解決し、罰則まで規定される方向であることが示されました。
再生医療等安全性確保法については、再生医療の実用化を促進する制度として、一般診療と臨床研究には再生医療等安全性確保法を適用して安全で迅速な再生医療を提供し、製造販売には薬機法を適用して多くの製品をより早く供給するようにしていること、対象技術については、法改正で適用範囲が拡大され、再生医療等の提供計画が提出された際に審査する認定再生医療等委員会の設置者へ公平性のある立ち入り検査等を行うことが示されました。

また、ゲノム医療については、全ゲノム解析の実行をきちんと行っていくこと、がん・難病の全ゲノム解析を行うための予算を確保していること、ゲノム医療促進法に基づく計画の概要について説明がありました。
また、ドラッグ・ラグ/ロスについては、今後の解消に向けた取り組み方法についての説明がありました。
PMDAの業務の展望と企業に期待するもの
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 執行役員 安川 孝志 氏
はじめに、小児・希少疾病用医薬品等薬事相談センターの設置について説明があり、2024年度のオーファン指定が顕著に拡大していることが述べられました。また、小児・オーファンの開発促進と薬価評価についても触れられ、薬価制度改革においてイノベーション評価と薬事承認の関係が重視されていることが強調されました。
次に、日本人データの取り扱いについて、横断的基準作成等プロジェクトチームのワーキンググループが設置され、日本人データの必要性の整理が進められていることが説明されました。製造販売後の使用成績調査の計画と実施についても議論され、承認前ではなく市販後の適切な時期に検討できる場合があることが了承され、Q&Aが発出されていることも紹介されました。
海外への情報発信については、ドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けて海外へ日本の制度に関する情報発信をしていく必要があるとの考えが示されました。海外の学会やベンチャー企業への情報発信が進められており、PMDAのワシントンオフィスでは相談業務が開始されていることが説明されました。

ドラッグ・ラグ/ロスの解消については、当日の特別講演で複数の演者から説明がありましたが、“86品目”の数と薬価改定への影響について述べられました。
制度改正対応については、中等度変更などの製造方法変更管理が企業の業務に直結するため整理が必要であることが述べられました。審査の考え方を見直すためには、個別事例を踏まえてより良い制度運用を考えていく必要があることが認識されており、限られたデータで承認する際には医療機関がそのようなデータで承認されたことを理解することが重要です。関係学会との連携も重要であり、情報公開の観点から審査報告書の課題を今後しっかり議論する必要があるとのコメントがありました。
最後にその他として、PMDAの業務についてリソースに関する課題として、業務合理化を進めることが必要であると述べました。また、審査・相談業務は企業と行っていることから、一緒に今後の薬事制度について考えていきたいとのコメントがありました。
合同総会の最後に薬事委員会の柏谷 裕司委員長による閉会の辞をもって、2時間40分にわたった合同総会が終了しました。
(薬事委員会 清水目 梢、中山 能雄、小室 真人、竹内 豊)