「ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合」を開催
製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州の製薬団体との定期会合を毎年実施しています。2025年のドイツのvfaとの定期会合は、11月7日に対面とオンラインのハイブリット形式にて開催されました。会終了後、在独日本大使館を訪問し書記官との面談も行われました。今回は双方合わせて現地で15 名参加し、オンラインからも日本製薬団体連合会(日薬連)含めて多数参加し、活発な意見交換が行われました。会合の概要を以下のとおり報告します。
現地会場の様子
開会あいさつ
冒頭、vfaのInternational AffairsのSenior ManagerであるHarald Zimmer氏の挨拶から会がスタートしました。本会合はドイツと日本の密接な協力関係および友好の証であり、有益なディスカッションができることを期待しているとのコメントが述べられました。
続いて、製薬協国際委員会の村上伸夫委員長よりベルリンでの開催に感謝の意を表明し、定期的な二国間での対話の意義を強調されました。製薬産業を取り巻く環境変化に触れ、米国のMFN(最恵国待遇)政策や通商交渉に関する地政学リスク、競争力低下への危機感を共有すると共に、製薬産業の重要性を社会に訴える啓発活動の強化を呼びかけました。
Digital Health
vfa Dennis Geisthardt 氏
Digitalization in the Health Sector (including AI Applications)
Legislative Discussions for Aligning with the European Health Data Space (EHDS) Regulation
vfaより、2025年10月からドイツで義務化された電子健康記録(ePA)の現状および今年3月に発行された欧州健康データベース(EHDS)の概要についての説明がありました。ディスカッションでは、ePAの利用を促進するために政府や製薬企業などが行っている啓発活動について、日本版EHR推進の参考とできる点がないか質問があり、ドイツにおいても、ePA導入当初はePAの利点を伝えるキャンペーンなどを行っても参加率は1%程度にとどまっていたが、オプトアウト方式に変更したことにより、約97%の参加率になったことが共有されました。
製薬協 産業政策委員会 イノベーション推進部会 舩木 美歩 委員
Promoting the use of medical information databases
舩木委員より、公的データベース(DB)利用促進のための法改正について説明があり、ナショナルデータベース(NDB)と他の公的DB間の仮名化連携を可能にする法案が2025年の国会にて審議され、2028年の制定を目指していることが紹介されました。また、個人情報保護法下での医療分野の特別法制定についても説明があり、日本版EHDSの二次利用推進に関する政府の検討会が2025年9月から2026年夏にかけて開催され、2027年通常国会への法案提出を目指していることが紹介されました。ディスカッションでは、アジア他国と比較した日本の医療データ基盤整備状況等について意見交換が行われました。
製薬協 医薬品評価委員会 臨床評価部会 川畑 宣勲 委員
SaMD in Japan
川畑委員より、日本とドイツのデジタル治療(DTx)の承認状況や償還制度の比較について説明がありました。ディスカッションでは、日本側からドイツ側に対し、DTxの普及状況・医薬品とのセグメント化・製薬企業のDTx市場参入事例・今後の承認制度の厳格化について質問し、ドイツ側より、ドイツにおいてDTxの普及は拡大している、医薬品とDTxの承認等のプロセスはまだ完全に切り離されている、製薬企業2社がDTx市場に参入している、承認制度は過去数年で若干厳格化したがファストトラックプロセスはうまく機能している、との回答がありました。
Drug Pricing & reimbursement Policies
製薬協 産業政策委員会 産業振興部会 草開 義隆 部会長
Pricing System reform
草開部会長より、日本の医薬品産業を取り巻く課題として、薬価制度の予見性低下により投資の魅力度が減少している状況について説明がありました。また、2024年度の薬価制度改革では革新的新薬および小児用医薬品へのインセンティブが導入されたものの、さらなる改善が必要であると述べ、2026年度改革に向けた議論において、イノベーション評価、革新的新薬の特許期間中の薬価維持、市場拡大再算定の廃止、費用対効果評価の見直しなどを要望していることが説明されました。米国のMFN政策がドラッグ・ラグやドラッグ・ロスを悪化させる懸念ついても言及し、日本市場の魅力を高め投資を呼び込むための制度改革と市場環境整備の重要性が強調しました。
Manager Reimbursement Policy, vfa Eike Melchior 氏
Trends Related to Drug Pricing Policies under the New German Government
Current Status and Challenges in Access to Innovative Medicines in Germany
Eike Melchior氏より、ドイツの医薬品市場再編法(AMNOG)について、新薬が欧州承認後、即時市場参入し、保険がカバレッジする流れが共有されました。また、最近の動向としてメーカー割引率の一時引き上げや組み合わせ療法への20%割引の導入、保健医療諮問委員会(SVR)レポートは立法プロセスにおいて直接的な影響がないことなどが述べられました。その後の質疑では、日独の薬価制度に関する相互の関心や、機密価格制度は複雑で経済的メリットが少ないため、最恵国待遇(MFN)政策による影響による当制度の利用の増加はないことがvfaより回答されました。
Discussion
International Policy, vfa Tanya Herfurth 氏 / 製薬協 国際部 佐藤 慶子 部長
Impact of MFN, Trade Policy and Responses
Future Collaboration
Tanya Herfurth氏より米国の通商政策、MFN政策に関する大統領令が欧州製薬業界に及ぼす影響について共有がありました。ドイツ国内でも、保険財政の逼迫・高齢化・地政学的緊張など多くの課題を抱えており、継続的かつ積極的な対応が重要であることを強調しました。
佐藤部長からはMFN政策が日本市場に与える潜在的影響や製薬協の対応について説明がありました。日独両国が抱える課題・懸念点には共通する部分があることが確認され、今後も両業界団体で緊密に連携し各国ステークホルダーへの働きかけを強化していくことが合意されました。
終わりに
vfaのHarald Zimmer氏は、参加者の積極的な議論に感謝を述べ、今後の更なる連携への期待を表明しました。
製薬協の中川祥子常務理事は、有意義な意見交換と協働の機会に感謝の意を表明すると共に、今後も継続的な対話と共同アドボカシーのコミットメントを確認し、閉会となりました。
集合写真
(国際委員会 欧米部会 欧州グループ ドイツ・フランスチームリーダー 飯塚 直子)
