「第3回 日本-マレーシア医薬品規制シンポジウム」が開催 「リアルワールドデータ、リスク管理計画、迅速な審査(簡略審査)制度、臨床試験」をテーマに2か国間で活発な議論が行われました。

2025年7月31日、マレーシア・クアラルンプールにて「第3回 日本-マレーシア医薬品規制シンポジウム」が開催されました。本シンポジウムは、マレーシア国立医薬品規制庁(NPRA)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、マレーシア薬学会(MPS)の共催により、両国の協力関係の深化を目指しております。

製薬協からも医薬品評価委員会の今枝孝行副委員長と国際委員会アジア部会の渡邉彩葉マレーシアグループリーダーの2名がパネリストとして登壇し、産業界からのインプットを行いました。

国際委員会アジア部会の渡邉彩葉マレーシアグループリーダー、医薬品評価委員会の今枝孝行副委員長

医薬品規制の最新情報

初めに、医薬品規制の最新動向としてマレーシアと日本の両国の取り組みが紹介されました。

マレーシア側からは、規制の近代化に向けた取り組みが紹介され、日本からは、医薬品医療機器等法の改正により、品質・安全性の強化、安定供給体制の整備、革新的医薬品の開発支援などを進めていると紹介がありました。

リアルワールドデータ(RWD)とエビデンス(RWE)の活用

医薬品の評価において、実際の医療現場から得られるリアルワールドデータ(RWD)とリアルワールドエビデンス(RWE)を活用する動きが加速しています。マレーシアでは、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)、PMDAのガイドラインを参考に、RWD/RWEを新薬の評価や市販後調査に活用しており、日本では、PMDAがRWD/RWEの信頼性確保に関する通知を複数発出し、承認申請への活用を支援しています。

このセッションにて、製薬協医薬品評価委員会の今枝孝行副委員長が登壇しました。製薬企業におけるRWD/RWEの活用についての質問に対して、「RWD/RWEは非常に高い可能性を秘めているが、標準化や構造化といった課題が残っている。市販後調査や安全対策における利用が一般的だが、データの適合性や補完的な目的での利用、仮説生成には適していると思われる」と見解を述べました。

リスク管理計画(Risk Management Plan、RMP)

続いて、医薬品の安全性を確保するためのリスク管理計画(RMP)についても、両国の取り組みが紹介されました。

アジア地域でのRMPの共通化については、言語や文化の違いから課題があるものの、協力的な枠組みの構築が今後の鍵となるという結論に達しています。

迅速な審査(簡略審査)制度(Facilitated Registration Pathway 、FRP)

その後、迅速な医薬品アクセスというテーマで、マレーシアのFRP制度が紹介されました。これは、他国の承認審査結果を参照することでマレーシアでの医薬品の承認登録を迅速化する制度です。2023年11月からPMDAが参照当局に加わり、日本の審査報告書がマレーシアで活用できるようになりました。これにより、マレーシアへの革新的医薬品の導入が加速し、患者へのアクセスが向上していくことを期待しています。

このセッションにて、製薬協国際委員会アジア部会の渡邉彩葉マレーシアグループリーダーがパネルディスカッションに登壇しました。マレーシアのFRP制度における日本の審査報告書利用についてどのような見解を持っているか?という質問に対し、「日本の審査報告書を活用できることは特に日本企業にとって大きなメリットである。日本の審査報告書の内容に対する問合わせが当局間で直接行えるため、プロセスの迅速化・透明性が高まることを期待している。また、アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA ATC)での研修を通じて、審査報告書の理解を深める活動を行っていることも活用を促進している」と見解を述べました。

臨床試験

最後は、臨床試験におけるアジアの連携と将来の展望がテーマでした。

マレーシアでは、臨床試験に関する法整備が進められており、国際基準への整合性を目指しています。複数国での臨床試験には、規制の違いや手続きの複雑さといった課題がありますが、日本およびマレーシアの臨床試験関連団体、規制当局と産業界の協力により、これらを乗り越える取り組みが進められています。

今後の協力にむけて

多岐にわたるテーマで議論が行われた本シンポジウムは、両国の規制当局が共通の課題に向き合い、協力の可能性を広げる貴重な機会となりました。RWD/RWEの活用、リスク管理の最適化、迅速な承認制度の整備、臨床試験の国際連携など、医薬品規制の未来に向けた取り組みが着実に進んでいます。

今後も、製薬協ではマレーシアをはじめとした、各国の課題に対する取り組みに対し、産官連携で解決に取り組んでまいります。

 

(国際委員会 アジア部会 マレーシアグループリーダー 渡邉 彩葉)

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