産業政策委員会 2024年度研究者支援・助成に係る公募要項
【趣旨】
健康で長生きすることは、多くの人々の願いであることは論をまちません。また人々は、国全体の経済が安定的に成⻑し、持続可能な社会保障システムが担保され、疾病や⽼後への不安が解消されることも望んでいます。
我々研究開発型製薬企業の使命も、革新的な医薬品の継続的な研究開発と安定的な供給を通して、国民の「健康寿命の延伸」と「経済成長の牽引」に貢献することにあります。
しかしながら、なおも「健康」と「経済」に関わる社会問題は山積しており、特に医療分野においても高齢化による医療需要の増大に対して人口減少に伴う医療提供体制の問題や今後の財政的懸念等、様々な課題があります。
日本製薬工業協会(以下、製薬協)では、医薬品の分野にとらわれず、学際的・分野横断的な研究の促進や若手研究者への支援を通じて、今後の日本における医療・健康及び医薬品産業を取り巻く課題解決につながる研究の発展やエビデンスの蓄積に寄与することを目的として、研究者支援のための助成を実施いたします。
【募集課題】
本公募においては、3つのテーマを設定した「指定課題研究」と、特に若手研究者に向け、医療・健康や社会保障制度、医薬品産業の振興・発展に寄与する経済学、法学、レギュラトリーサイエンス、医療経済評価、政治学等の社会科学系研究テーマを幅広く募集する「自由課題研究」の2項目について募集を行います。
調査や分析、実証研究、ケーススタディ等を基に一般化した議論をするような研究を想定しております。既成の概念にとらわれない、新しい発想に基づくテーマについても歓迎いたします。
(1)指定課題研究
テーマ1 「健康寿命の測定、健康寿命に影響を与える要因の分析」
健康寿命に影響を与える因子は、医薬品のみならず、多様に存在します。
例えば医療技術、手技、医療へのアクセスなどの医療に係る部分から、健康増進施策にかかる個々人の生活習慣や健康行動、健康の社会的決定要因に挙げられるような社会的・環境要因など、生命科学に留まらない幅広い「健康寿命に影響を与える/改善する要因」を分析する研究を募集します。
また、「健康」の定義の社会的認識が多面化し「Well-being(ウェルビーイング)」の概念も浸透しつつある中、健康寿命の測定のありかた、どのように健康寿命そのものを定義するのかに関する研究についても本テーマの範囲内として募集します。
テーマ2 「健康がもたらす経済へのインパクト」
健康に長生きすることは多くの人々の願いである中、高齢化の進む日本において、健康になることの様々な効果について多面的な研究を蓄積することの重要性は増しています。
そうした中、人々が健康になることの効果は、個々人の就労や社会参画、消費活動等、個別の経済主体への影響、経済活動の集計量の変化など、多様な経済学的観点、社会学的観点から分析することも可能です。例えば健康と生産の関係性については、昨今の健康経営等に代表されるような、健康状況と労働生産性や就業率、賃金との関係性についての研究も蓄積が進んでいる状況です。
このように、個別の医療技術や介入に留まらない、健康がもたらす「経済」へのインパクトに係る研究を募集します。
参考研究
2022年度実施の「健康寿命延伸と経済成長牽引に関する研究会」にて日本の高齢者の代表的なパネル調査で罹患や家計消費へどのような影響を与えるのか解析した結果、一般的な 14 の疾患の一つに罹患すると、消費額は平均して 10% 低下(2 つ罹患で 20%低下)することが明らかになっています。
「健康寿命延伸と経済成長牽引に関する研究会」~医薬品産業の未来に向けて~(p.45~p.54をご参照ください)
テーマ3 「国内医薬品産業の競争力・創薬力強化」
日本はアメリカ、スイス、イギリス、ドイツ等と並ぶ世界でも有数の新薬創出国であり、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版」においても、医薬品産業は我が国の“基幹産業” に位置付けられています。
一方、医薬産業政策研究所の報告によると、2022 年の世界売上高上位100 品目において、日本企業が創出した品目数は2008年の13品目から7品目に減少し、順位も2位から6位に低下している状況です。また、抗体医薬品等のバイオ医薬品が世界売上高上位 100 品目中 45品目を占める中、日本企業が創出した品目数は 2 品目しかなく、新規モダリティによる新薬創出において欧米にキャッチアップできていない状況が顕在化しています。
また、複雑化・高度化した新規モダリティの開発においては、1社で完結することは難しく、製薬企業とアカデミア、バイオベンチャー等が協業し、ドメスティックなプレーヤーに閉じないエコシステムの構築や、アカデミアやベンチャー等をはじめとしたシーズを社会実装に繋げるための取り組みが求められます。
こうした状況下、国内医薬品産業の競争力・創薬力の強化は喫緊の課題であることから、当領域に係る研究を募集します。
(2)自由課題研究
テーマ例:
- 医療・健康及び医薬品に関する経済学的調査・研究
- 医薬品産業を含む健康・医療関連産業に関する調査・研究
- 医療・健康に係る制度・政策に関する調査・研究
- 医療・健康とその関連諸領域の学際・分野横断的調査・研究 等
製薬協では、若手研究者等の研究テーマ選定の一助とすべく、〔疾患×0~3次予防〕の2軸をもって先行研究数をカウントし、各疾患、機能ごとに先行研究の多少をマッピング、これによりニーズ充足可否を網羅的に把握する「健康寿命延伸に必要な疾病予防に関する国内外研究の蓄積状況 ~疾病分類別/予防段階別にみた先行研究マップ~」を公開しています。当マップを参考にしていただくと共に、当マップ自体を発展させる研究についても歓迎します。
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※
指定課題研究・自由課題研究双方ともに、以下の研究は対象外とします
○生物医学的研究
○医師、看護師、薬剤師等の専門技術に関する研究
○他の公的機関・助成団体から助成を受けた研究と実質的に同じ内容の研究
【対象者】
医療経済、医療制度、医療政策、社会保障政策、医療関連産業政策、その他広く医療・健康に関して、優れた萌芽的研究あるいは独創的研究を目指す個人またはグループといたします。なお、指定課題研究の主たる研究者については、国内研究機関に勤務している研究者を対象とし、自由課題研究の主たる研究者については国内研究機関に所属している院生・博士課程を含む若手研究者を対象といたします。
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※選考に際して、身分を確認させていただく場合があります。
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※研究計画書の内容によっては、利益相反(COI)に関する申告書の提出をお願いする場合があります。
【研究期間】
指定課題研究 | 契約締結日~2027年3月31日(最大2028年3月31日) |
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自由課題研究 | 契約締結日~2026年3月31日(最大2027年3月31日) |
【募集方法】
一般公募
【助成目標件数および助成額】
総額1,000万円以内
指定課題研究 | 1件あたり150万円~250万円(間接経費を含む)、採択件数1件~3件 |
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自由課題研究 | 1件あたり50万円~100万円(間接経費を含む)、採択件数5件~10件 |
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※間接経費は20%以内といたします。間接経費はお申し込みの前に各所属機関の担当者様にご確認ください。
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※一般寄付、奨学寄付、委託研究または共同研究など、研究助成金としての受け入れができない場合、本助成の対象外となり、契約締結ができないため、事前に所属機関にご確認ください。
【締切日】
2024年11月11日(月)※必着
【申請手続き】
(1)必要事項を記入し、記入済の「研究助成申請書」、「研究計画書」等必要書式一式をPDF形式とし事務局まで電子メールでご提出ください。
E-mail:UN_6606.group@jri.co.jp
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※2024年度研究者支援・助成に係る公募に関する事務局は、株式会社日本総合研究所に外部委託しております。
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※申請書類に記入された個人情報は、本研究助成事業における採否の通知や内容の照会、審査および助成金の支払いに係る事務に用い、本研究助成事業以外では使用いたしません。(個人情報の取り扱いについて|日本製薬工業協会)
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※不採択となった場合でも、申請書類は返却いたしません。
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※研究計画書到着後、1週間以内を目安に事務局より受付連絡をいたします。1週間経過しても事務局からのメールが届かない場合は、送信エラーなどの恐れがありますので再度送信してください。
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※申請は日本語に限ります。
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※研究計画書記入時は、専門外の方にも伝わりやすいよう、可能な限り専門用語を使わないか、注釈等にて補記ください。
(2)研究助成に必要な申請様式は、以下よりダウンロードしてご入力ください。
【選考】
書類選考及び選考委員会により、採否を決定いたします。
委員長 | 中村 洋(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授) |
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委員 | 伊藤 由希子(津田塾大学総合政策学部 教授)
印南 一路(慶応義塾大学 名誉教授) 岡田 羊祐(成城大学社会イノベーション学部 教授) 小栁 智義(京都大学医学部附属病院 特定教授) 益山 光一(東京薬科大学薬学部薬事関係法規研究室 教授) 宮田 俊男(早稲田大学理工学術院 教授) 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学 教授) 渡邉 裕司(浜松医科大学 理事・副学長) |
(敬称略、50音順)
【採否の通知】
2024年12月末までに採否についてすべての申請者へ通知いたします。
研究助成対象者の氏名及び所属、研究テーマについては、製薬協ウェブサイトに掲載することを予定しております。
【助成金の贈呈】
助成金は2025年3月末日までに贈呈します。
送金先は日本国内の銀行または信用金庫口座に限定いたします。
【助成金の使途】
研究計画書で申請した通りに研究を実施し、助成金を使用いただきます。ただし、次のような支出は助成の対象といたしません。
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主たる研究者あるいは共同研究者への謝金
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大学や各種学校の学費
また、旅費は全申請額の60%以内、業務委託費(特許取得等費用を含む)は全申請額の50%以内とし、それを超える場合は理由書を提出いただきます。
【成果物の取り扱い】
定められた研究期間終了日までに研究成果報告書及び会計報告書を製薬協に必ずご提出いただきます。ご提出いただく報告書の著作権は製薬協に帰属しますが、研究期間中や研究期間終了後に、報告書に関連した内容での研究発表や論文投稿を妨げるものではなく、それに際して学会や出版社に報告書における当該箇所の著作権譲渡を行う必要がある場合には、それを妨げるものでもありません。積極的な研究発表や論文投稿を期待いたします。
【研究成果の報告と公表】
製薬協にて開催する成果報告会にて研究成果をご報告いただきます(可能な場合は論文投稿前)。
研究成果は、研究期間内に必ず学術誌・学会誌等へ投稿、またはそれに相当する研究会に報告することとします。また、指定課題については可能な場合は投稿、公表前に論文・記事などを製薬協にご報告いただきます。
(投稿先については、特に指定はありません。また、投稿や学会発表に際しては、日本語に限らず実施いただいて構いません。)
なお、公表に際しては、「日本製薬工業協会の助成による研究」との旨を記載していただくとともに、論文や要旨等の別刷りを後日提出下さい。
お問い合わせ先
日本製薬工業協会 研究者支援・助成に係る公募 事務局
※ 問い合わせ時には、「研究者支援・助成に係る公募」であることを明記ください。