「ICHシンガポール会合」が開催される

医薬品規制調和国際会議(ICH: The International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)の会合が、2025年11月15日~19日の日程で、シンガポールにて開催されました。会期中、全ICHメンバーおよびオブザーバーが参加する総会に加え、総会付議事項を協議する管理委員会が開催されました。また同期間には、ICHガイドライン策定を担う12トピックの作業部会が専門家の会議を実施し、活発な議論を通じて、各トピックのガイドライン作成が進展しました。その結果、M11ではガイドラインが完成しステップ4に到達、さらにE22では技術文書案が承認されステップ2に到達し、ICHにおける主要なマイルストンを迎えています。2025年は、ICH発足(1990年4月)から35周年、非営利法人化によるICH協会設立(2015年)から10周年という節目の年でもあります。日本の厚生労働省と独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)、そして製薬協は、ICH創設時からガイドライン作成に参画し、創設団体として国際調和の推進に貢献してきました。

総会全体写真

ICH会合は、対面会議が原則とされており、開催地シンガポールには世界各国から約500名の委員や専門家が集まりました。今回の会合には、創設メンバーである日米EUの産官6団体※1、常任メンバー2団体※2、メンバー17団体※3、常任オブザーバー2団体※4、オブザーバー29団体が参加しました。製薬協からも総会・管理委員会関係者、作業部会の専門家など27名が、開催地シンガポールへ赴き会議に参加しました。 

  • 1
    米国食品医薬品局(FDA)、欧州委員会/欧州医薬品庁(EC/EMA)、厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(MHLW/PMDA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、日本製薬工業協会(JPMA)
  • 2
    ヘルスカナダ(HC)、スイスメディック(SM)
  • 3
    アルゼンチン医薬品食品医療技術管理局(ANMAT)、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)、メキシコ連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)、エジプト医薬品庁(EDA)、シンガポール保健科学庁(HSA)、ヨルダン食品医薬品局(JFDA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)、ナイジェリア食品医薬品管理局(NAFDAC)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)、南アフリカ医療製品規制当局(SAHPRA)、サウジ食品医薬品庁(SFDA)、台湾食品薬物管理署(TFDA)、トルコ医薬品医療機器庁(TITCK)、バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)、世界セルフケア連盟(GSCF) 、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会(IGBA)
  • 4
    国際製薬団体連合会(IFPMA)、 世界保健機関(WHO)

以下にICHシンガポール会合でのICH管理委員会、ICH総会を踏まえた特記事項を記載します。

1.新規メンバー・オブザーバーの加盟

ナイジェリア食品医薬品管理局(NAFDAC)および南アフリカ医療製品規制当局(SAHPRA)の2団体が新規ICHメンバーへの昇格を申請し、いずれについてもICH総会にて承認されICHメンバーへの加盟が認められました。

また、ICHオブザーバーとして、新たにドミニカ共和国医薬品食品衛生製品規制局(DIGEMAPS)、フィリピン共和国保健省食品医薬品局(Philippine FDA)の2団体から申請があり、いずれも総会にて承認されICHへの加盟が認められました。

この結果、メンバーは25団体(2増)、オブザーバーは41団体(増減無)となり、ICH全体としては66団体の組織体制となりました(末尾の参考資料参照)。

2.ICH技術トピックの動向

ICHシンガポール会合では、総会の開催に合わせて12トピックの作業部会が参集しました。各グループは、普段は定期的なウェブ会議を開催していますが、この機会に4日間あるいは5日間の対面会議にて集中的な討議を行い、ガイドライン作成の進捗を図りました。

会合をもった作業部会

Q1 EWG 原薬及び製剤の安定性試験
Q6(R1) EWG 「医薬品の規格及び試験方法の設定」の改定
Q9(R1) Training Group 「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」の改定
E14/S7B IWG
「QT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的/非臨床的評価」に関する質疑応答集
E21 EWG 妊娠及び授乳婦の臨床試験への組入れ
E23 EWG 医薬品の有効性に関する規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンス(RWE)の使用に関する考慮事項

S13 EWG 核酸医薬品の非臨床安全性試験
M7 Sub-group
潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理 -ニトロソアミン不純物管理-
M11 EWG 電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書(CeSHarP)
M13 EWG 即放性経口固形製剤の生物学的同等性試験
M15 EWG Model-Informed Drug Developmentに関する一般原則
M18 EWG バイオシミラー開発プログラムにおける有効性比較試験の有用性決定の枠組み

本会期中には、M11ガイドラインが総会で承認されステップ4に到達し、英語版のICHガイドラインが完成しました。また、E22の技術文書案が総会で承認され、ステップ2に到達しました。さらに今回の総会では、活動中の全トピックの進捗についても議論され、2025年5月のICHマドリード会合以降に主要なマイルストンに到達したトピックが確認されました。以下に、マイルストンに到達したトピックをまとめます。

ステップ4に到達したトピック

M11 電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書:技術仕様(2025年11月ICH総会)
E2D(R1) 承認後の安全性情報:個別症例安全性報告の取扱い及び報告のための定義と基準(2025年9月)
M14 医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学調査の計画、デザイン、解析に関する一般原則(2025年9月)
  • ステップ4到達とは、ガイドライン案がICH総会の規制当局代表者によって最終的に合意、採択され、英語版ガイドラインが確定したことを意味します。今後、各地域・国の規制当局において実装プロセスに入ります。

ステップ2に到達したトピック

E22 患者選好試験の一般指針(2025年11月ICH総会)
Q3E 医薬品の抽出物及び溶出物ガイドライン(2025年8月)
E20 臨床試験のためのアダプティブデザイン(2025年6月)
  • ステップ2到達とは、技術文書をベースにしたガイドライン案がICH総会の規制当局代表者により承認され、今後各地域・国の規制当局がパブコメを実施し、その結果を踏まえながらガイドラインを最終化するステップ3に移行することを意味します。

3.新たに活動が開始したトピックの動向

2025年5月のICHマドリード会合で採択された以下2つのトピックについては、コンセプトペーパーが承認され、各作業部会では技術文書案の作成が開始されることになりました。

E23 医薬品の有効性に関する規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンス(RWE)の使用に関する考慮事項
M18 バイオシミラー開発プログラムにおける有効性比較試験の有用性決定の枠組み

4.ICH総会/管理委員会 議長・副議長選挙

ICH総会および管理委員会の議長・副議長の任期満了に伴い、シンガポール会合では選挙が行われました。選挙の結果、PMDAの古賀大輔国際企画部長がICH管理委員会の議長として選出されました。ICHにおいて、日本から議長が任命されるのは初めてとなります。

ICH総会
議長  Gabriela Zenhaeusern(Swissmedic)
副議長 Jeffrey Skene(Health Canada)
ICH管理委員会 議長  古賀 大輔(MHLW/PMDA)
副議長 Theresa Mullin(FDA)

5.MedDRA運営員会(MedDRA Steering Committee)議長・副議長選挙

ICHでは、MedDRAを開発し継続的に維持していますが、今回会合ではMedDRA運営委員会の議長・副議長選挙が行われました。選挙の結果、議長にはAna Cochino(EC)、副議長にはCharlotte James(MHRA)が選出されました。

6.ICHアワード

「ICHアワード」は、ICHガイドラインの検討においてリーダーシップを発揮し、多大な貢献をした専門家に授与されます。3回目となる今回は、各団体からの推薦に基づき5名の専門家が受賞し、総会でICHアワード受賞式が行われました。日本からは当局側1名、業界側1名の2名が受賞しています。業界側の受賞者は、製薬協 安全性領域専門家の三島 雅之 氏(元医薬品評価委員会所属)が受賞し、ICHの専門家作業部会における重要なリーダーシップや持続的な貢献が認められました。


日本へ持ち帰られたトロフィーは、
ICHプロジェクト委員会の中で、吉田専務理事より授与されました。
受賞トロフィーを手にした三島氏

次回ICH会合

2026年5月30日~6月3日の日程で、ブラジルのリオデジャネイロで開催予定です。


なおICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に開示し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるように公開しています。今回のICHシンガポール会合の成果や各トピックのコンセプトペーパー、作業計画等はICHウェブサイト(https://www.ich.org/)よりご覧いただけます。 

【参考資料:ICHメンバー、オブザーバー一覧(2025年11月現在)】

表1:メンバー(25団体)

表2:オブザーバー(41団体)

  • 網掛け箇所、ICHシンガポール会合で追加

(国際規制調整部長 加藤 真理子)

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