医薬品評価委員会 費用対効果評価における生存時間解析の諸問題

データサイエンス部会

2019年4月より、既存の薬価基準制度を補完する制度として費用対効果評価の制度化が行われた。ICERは新薬が追加でもたらす効果1単位あたりの追加的費用で定義されるが、ここでいう効果は質調整生存年(QALY: Quality-Adjusted Life Year)で評価されることが本制度の原則である。治験で臨床的な有効性評価を生存時間解析で実施している薬剤については、費用対効果分析でのICERの算出に際し、当該生存時間解析の文脈で分析を行う可能性が高い。費用対効果分析では治験の追跡期間を大きく超える長期間を対象として費用対効果分析を実施し、最適と考えられる意思決定(新薬の薬価を調整するべきか否か、調整が必要ならどのように調整するべきかの決定)を行う。このように費用対効果分析では検定ではなく、推定により薬剤の優劣が判断されるという特性を有するため、しばしば「見てもいないことを見たかのように」データを示すことが必要となる。具体的には、治験の追跡期間が3年間であるにも関わらず15年間にわたる生存曲線を外挿により推定したり、疾患増悪後に対照群の症例を新薬への切り替えを認めている場合、多くの症例が新薬へ切り替わってしまったときの対照群の全生存期間を因果推論を用いて推定したりする必要がある。
2019年度DS部会継続T5では、英国NICEが発行しているTechnical Support Document 14 (TSD14): Survival analysis for economic evaluations alongside clinical trials – extrapolation with patient-level data (2011),TSD16: Adjusting survival time estimates in the presence of treatment switching (2014)およびTSD19: Partitioned Survival Analysis as a decision modelling tool (2017)をもとに、費用対効果分析において使用される生存時間解析のテクニックと、それに関わる費用対効果分析に特有の課題点についてまとめた報告書を作成した。
なお、本報告書の中でTechnical Support Document 14,16,及び19(Decision Support Unit, National Institute for Health and Care Excellence)を引用/参考にした記載は、本タスクフォースの解釈であり、NICEには一切の責任はない。また各TSDのすべてを紹介したわけではなく、一部を抜粋し紹介している。その中で、タスクフォースの追加的解釈を加え、独自にまとめており、NICEから見解を得たものではない。

費用対効果評価における生存時間解析の諸問題 (1.8MB)

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