医薬品評価委員会 柔軟な生存時間のモデリング方法と外部情報を利用した生存時間の外挿方法

データサイエンス部会

2023年6月

費用対効果評価を早くから導入している英国NICE(National Institute for Health and Care Excellence)では,現在までに,医療経済評価を行うための統計的手法等に関する22の技術的な手順書(Technical Support Document:TSD)を発行しています.これらの手順書は,2019年より費用対効果評価を正式に導入している本邦においても大変参考になる資料です.

データサイエンス部会2022年度継続タスクフォース7では,NICEのTSDで取り扱っている主題を整理して,国内で費用対効果評価を実践する際に有用と思われる情報を提供する活動を行っています.本報告書は2020年に公開されたTSD21「Flexible methods for survival analysis」を参考に,柔軟な生存時間のモデリングと外部情報を利用した生存時間の外挿方法を事例と共にまとめたものになります.

従来,生存時間のモデリングは,生存時間の分布に指数分布やワイブル分布といった標準的な分布を用いたパラメトリックモデルで十分でしたが,近年,免疫療法などの登場により,治療に対する反応の遅延,長期生存者の存在により生存時間曲線は複雑な形状を示す事例が増えてきました.このような複雑な形状を表現するためには,従来の標準的なモデルでは不十分であり,より柔軟な生存時間のモデルが必要になります.また,臨床試験の追跡期間を超えた期間に関する外挿には外部データを考慮する等の工夫が必要です.本報告書では,これらの方法論を紹介すると共に,モデリングを行う際の留意点をイメージしやすいように具体的な事例も紹介しました.

以上より,生存時間のモデリングや外部データを利用した外挿を実施する際に,本報告書を参照いただくことで,適切な手法の選択や解析の実施の一助になれば幸いです.

日本製薬工業協会 医薬品評価委員会
データサイエンス部会 2022年度継続タスクフォース7

柔軟な生存時間のモデリング方法と外部情報を利用した生存時間の外挿方法 (2.1 MB)

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