バイオ医薬品委員会

重点課題

1. 国のバイオ医薬品関連施策の動向把握、製薬協提言の進捗評価ならびに関連施策に関する新規提言の検討

政府は「ワクチン開発・生産体制強化戦略(令和3年6月1日 閣議決定)」を策定した。この国家戦略に基づき経済産業省は「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」を進め、有事に国内でワクチンを生産するバイオ製造設備体制やバイオ製造に必要となる部素材等の製造体制の強化を図っている。この事業によりバイオ製造設備強化が進められる一方で、国内にバイオ製造人材は不足しており、製造を担う人材を育成することが喫緊の課題となっている。

国内のバイオ人材育成機関である一般社団法人バイオロジクス研究・トレーニングセンター(BCRET)が、神戸拠点でのバイオ医薬品を中心としたバイオ開発(CMC)人材育成に加え、2023年2月に東京拠点を開設し、新規モダリティにおける人材育成にも注力することを公表した。

「革新的医薬品等の創出のための官民対話」に呼応するため、製薬協、製薬企業はBCRETでの人材育成(座学、実習)に講師を派遣し、バイオ開発(CMC)・製造人材の育成に協力していくと共に、即戦力製造人材育成や将来に向けたバイオ人材育成について関係各府省・関連機関と継続して意見交換し、具体的な人材育成プランを策定・実行していく。

また、より高いレベルの成果に結びつくよう、従前と同様の活動を継続して推進するとともに、特に「バイオ戦略2020(市場領域施策確定版)」改定、「第3期健康・医療戦略」および「次期医療分野研究開発推進計画(計画期間:2025~2029年度)」策定に向けた動きを注視しながら、「医薬品産業ビジョン2021」に呼応した施策について重点的に取り組み、日本のバイオ医薬品研究開発のさらなる促進に向けた新たな政策提言を検討していく。

2. バイオ医薬品の製造販売承認申請書記載事項の調査・研究各種「モックアップの作成」等

ICH Q12におけるEstablished Conditions、ICH M4Q(R2)での議論ならびに創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会での議論の動向を踏まえ、日本における承認申請書の記載事項およびCTD Module 2.3の記載事項の方針について検討を行う。さらに、近年、バイオ医薬品においても、連続生産、Process Analytical Technology (PAT)、QbDアプローチなど、製造の効率化や品質向上を可能とするより進んだ技術、品質保証の考え方も浸透してきており、これらを踏まえた承認申請書のあり方についても検討し、関係当局への提言を行う。

また、これらの課題は、厚生労働省の班研究等においても議論が行われていることから、当該班研究等にも参加し、関係当局とも連携して業界側の意見を研究成果に反映させるべく対応を行う。バイオ医薬のモックアップを作成することは、バイオ医薬品の研究開発にこれから注力する製薬会社であっても、また、経験が豊富な製薬会社であっても、承認申請作業の負担を軽減させるだけでなく、国内のバイオ医薬品業界全体の底上げにつながる。

3. 再生医療・細胞治療・遺伝子治療の調査・研究

再生医療は次世代医療として大きな期待を持たれており、「健康医療戦略」においても重点化されている再生医療の進歩について調査・研究を行う。医薬品医療機器等法の施行に伴い発出された通知について、さらに理解を深めるために、過去の通知、ガイドラインについて調査研究を進め、必要に応じてガイダンスやガイドラインにおける規制上の課題について検討を行い、改訂や運用改善を厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の関係官庁、他団体と連携して行う。

4. ワクチンに関する諸課題

1)ワクチンの研究開発・製造体制構築を推進するための市場予見性の向上

感染症を予防するワクチンは健常者に接種するため高い安全性が求められ、数万人規模の臨床試験を求められる場合があり、莫大な開発費用が必要である。あわせて、ワクチンは特殊な製造技術・専用設備を要するため、開発段階からの設備への先行投資も必要となる。一方、現在国内では開発段階からの定期接種化の予見が困難であるため、開発されたワクチンの事業予見性は非常に低く、企業にとって投資回収の見込みが立たないことは、国内のワクチン事業継続・開発への投資判断の障壁となっている。さらに、感染症流行をあらかじめ予測し、国内のワクチンニーズを把握することを可能とするためには、国内の感染症動向や疫学情報のモニタリング体制の整備が不可欠である。ワクチンの研究開発・製造体制構築を推進するため、市場予見性の向上に向けた政策提言を継続していく。

2)生涯を通じた予防接種を推進する国内におけるワクチン利活用の見直し

現在では、小児感染症予防や、感染症まん延を防止するワクチンだけでなく、個人の健康維持や重症化予防を目的とした成人高齢者ワクチンの開発が進んでいる。しかし、定期接種化検討においては、このような成人高齢者ワクチンの位置づけが明確でなく、議論が停滞している。また、ワクチンの接種対象者は健常人であるが、医薬品と同様に広告が規制されていることから、接種勧奨義務のないB類ワクチンや任意接種ワクチンは、目的/有効性/安全性/種類など必要な情報が国民に十分に届いていないため、国民のワクチンリテラシー向上に資する取り組みを行う。デジタル一括管理の体制整備が進められている予防接種履歴を、戦略検討や予防接種事業の検証、PHR(Personal Health Record)等に活用できるよう、早期の運用開始に向けた取組みを支援する。

3)ワクチンの研究開発・製造・品質管理等における規制・基準等の整備

ワクチンの研究開発、製造管理・品質管理、国家検定等は複数の規制や基準等が設けられ厳密に行われており、これらの運用や管理等に対応するためのリソースを企業準備する必要がある。ワクチン4団体(製薬協、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、日本ワクチン産業協会)で取りまとめている開発、承認申請、品質管理・製造管理、国家検定等に関する諸課題について、規制当局との連携を図り改善に取り組む。また、有事への備えとして、薬事規制の課題検討を含め、非臨床・臨床試験ガイダンス、新規モダリティを用いるワクチンの評価指標・方法、製造施設・キャパシティの確保等、平時に準備しておくべき事項を特定して準備する必要がある。

4)研究開発から技術・生産に係るワクチン人材育成

ワクチンの研究開発・生産では、ワクチン固有の関連法規・基準等を十分に理解し、実業務に対応できる人材が不足している。今後日本のワクチンがグローバルで魅力ある産業となるためには、日本発の大規模臨床試験や国際共同治験への対応、製造や分析・品質管理・評価等の対応ができる人材を平時から育成しておく必要がある。

取り組み内容

1. 国のバイオ医薬品関連施策の動向把握、製薬協提言の進捗評価ならびに関連施策に関する新規提言の検討

  1. 「バイオ医薬品・ニューモダリティ領域での産学連携におけるモノづくり課題に関する実態調査」(2021年実施)を基に検討した製薬産業が取り組むべき課題について、産官学連携に関わる各ステークホルダーとの意見交換に基づき、産学官による共創活動に関する具体的施策を検討し推進する。
  2. 国内製造基盤整備(ハード、ソフト)に関して、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」を通じ、国内受託製造(CMO)/受託製造開発(CDMO)や部素材メーカーなど製造設備強化が図られており、採択状況や課題を整理するとともに製薬協としてサポートできることを検討する。特に、人材育成に関しては製薬協 政策提言2023に盛り込んだ①即戦力バイオ製造人材育成支援、②学生のバイオ製造人材教育支援、③BCRET活動支援について関係各府省・関連機関と意見交換し、具体的な人材育成プランを策定・実行していく。特に2024年度は喫緊に対応が必要になっている①即戦力バイオ製造人材育成支援に注力する。また、データサイエンスなどのIT分野との融合、バイオ領域に長けたデータサイエンティスト育成についても検討を進める。
    上記提言の実現に向けて、関連施策等についても検討を行い、行政当局をはじめとした関係者への情報発信を実施する。

2. バイオ医薬品の製造販売承認申請書記載事項の調査・研究各種「モックアップの作成」等

  1. ICH Q12におけるEstablished Condition やPACMP (Post-Approval Change Management Protocol) の議論およびICH M4Q(R2)での議論ならびに創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会での議論の動向を踏まえ、厚生労働省、PMDAなど関係当局やAMEDならびに他の業界団体(日薬連など)とも密接に連携を取り、承認申請書記載例、CTD Module2.3記載例および軽微変更届出対象事項の事例等の検討を行う。
  2. 連続生産、PAT、QbDアプローチなど、製造の効率化や品質向上を可能とするより進んだ技術、品質保証の考え方を踏まえた承認申請書のあり方について検討する。
  3. ICH Q1/5C(R)(安定性試験(改定))、ICH Q5A(R2)(バイオ医薬品のウイルス安全性評価(改定))、ICH Q6A/B(規格及び試験方法の設定(改定))、ICH Q12(ライフサイクルマネジメント)、ICH Q13(連続生産)、ICH M4Q(R2)(CTD品質(改定))について、厚生労働省、PMDAなど関係当局と連携し、EWGにおける技術文書の作成を実施・協力する。

3. 再生医療・細胞治療・遺伝子治療の調査・研究

  1. 遺伝子治療用製品等を開発する上でのカルタヘナ法に関する課題について、法改正を必要としない範囲での運用改善に規制当局等と協力して引き続き取り組む。また、これまでの運用改善を広く周知できるよう、規制当局等に協力する。
  2. 再生医療等製品について規制当局と業界の実務者レベルで議論する検討会議において、再生医療等製品の規制だけでなく運用も含めた諸課題を提示し、改善・解決に向けた議論を行う。また、「再生医療等製品に係る条件及び期限付承認ならびにその後の有効性評価計画策定に関するガイドライン」の作成にWGメンバーとして参画し、協力する。
  3. 生物由来原料基準およびその運用通知の改正に向けて、他団体と協働して厚生労働省、
    PMDAなどに働きかけていく。
  4. 厚生科学研究(再生医療等製品の特性等を踏まえた市販後安全対策および再生医療等製品の臨床情報に基づく妥当性検証のあり方に関する研究)に参画し、再生医療等製品に係る市販後安全対策のあり方に関する研究の一環として、リスク管理計画(RMP)および添付文書情報の記載要領の検討に協力する。
  5. 遺伝子治療用製品、細胞製品のライフサイクルマネジメントについて、現在の通知や承認事例について調査・研究し、課題については関連する規制当局に意見・提言する。
  6. 今後、必要により、具体的な製品像を鑑み、ガイダンス等のドキュメントを関係官庁、他団体と連携しながら検討する。

4. ワクチンに関する諸課題への取り組み

1)ワクチンの研究開発・製造体制構築を推進するための市場予見性の向上

  • 平時・有事を通じた感染症対策に向けたワクチン研究開発等の諸問題について、PhRMA、EFPIA、日本ワクチン産業協会とのワクチン4団体と連携し、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を踏まえて、関係省庁および先進的研究開発戦略センター(SCARDA)との積極的な意見交換を推進する。
  • 定期接種の予見性を向上するため、開発優先度の高いワクチンについて定期接種化検討プロセスの早期改善に向けた意見交換を推進する。
  • 国立健康危機管理研究機構を中心に、疫学・サーベイランスに関する研究環境の整備、および、成人・高齢者を含めた健康維持や、AMR対策、結核対策等のデータ収集、解析、評価を行う体制について政策提言を行う。

2)生涯を通じた予防接種を推進する国内におけるワクチン利活用の見直し

  • 革新的なワクチンが生涯を通じて国民一人一人が健康維持に利活用できよう、国内における予防接種体制のあり方について産学官による議論開始を促し、ワクチンエコシステム形成に関する政策提言を行う。
  • 国民のワクチンリテラシー向上に資するため、ワクチンや感染症に関する情報伝達について、広告規制緩和等も視野に入れた関係者との意見交換を行う。また、広報委員会との協力でワクチンメディアフォーラムを企画開催する等、リスクコミュニケーションを推進する。
  • 誰もが利活用できる予防接種データベースの構築等の早期運用開始を目指して、ワクチン4団体と厚生労働省等との意見交換をリードする。

3)ワクチンの研究開発・製造・品質管理等における規制・基準等の整備

  • 医薬局課題として、ワクチンに関する諸課題について集約し、PhRMA、EFPIA、日本ワクチン産業協会とのワクチン4団体協議を通じ、厚生労働省、感染研、PMDAとの官民対話をワーキングクループとして開発、承認申請、品質管理、国家検定等に関する諸課題について継続協議を行っており、今後も改善、効率化を推進する。
  • 2025年4月からの開始が予定されている、国家検定のPMDAへの業務移管に関する協議についても、ワーキンググループとして協議中である。
  • 100日ミッションの実現に必要な平時からの準備すべき課題として、関連法規上の課題や必要なガイダンス、生産設備や原材料部素材に関する対策などを検討し、関係省疔やPhRMA、EFPIA、日本ワクチン産業協会とのワクチン4団体と連携して推進する。

4)ワクチン研究開発と安定生産継続のための人材育成

  • SCARDA 支援事業のアカデミア、ベンチャーシーズの実用化に向けた出口戦略、企業研究開発シーズでのSCARDAへの応募活性化等を目的として新たに設置するSCARDAと業界の連携コミュニティを活用して、次世代ワクチン研究人材の育成を目指す。
  • バイオ医薬委員会として推進するバイオ製造人材育成の施策を推進・連携し、ワクチン製造人材の育成につなげる。

5)IFPMAと連携した平時・有事のワクチン政策の推進

  • IFPMA Vaccine Committee等への参加を通じて、国際的な予防接種関連情報の収集等を継続的に、日本の感染症対策の推進に貢献する。
  • 感染症対策のあり方や将来のパンデミックに備えた取組み等について、産業政策委員会と連携しながら具体的施策の実施や提言の取りまとめを行う。
  • 各課題についてPhRMA、EFPIA、日本ワクチン産業協会とのワクチン4団体協議を通じた協調・連携を図り、関係府省庁ならびにAMED研究班等との対話を推進する。

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