ICHプロジェクト
基本方針
ICH(医薬品規制調和国際会議:International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)は、有効性と安全性に優れ、高い品質が確保された医薬品が世界中の患者に速やかにかつ継続的に届くよう、医薬品規制当局と製薬業界の代表者が協働してガイドラインを作成し、医薬品規制に求められる技術要件の国際調和を推進している国際会議である。
ICHは1990年に日米欧の各医薬規制当局と各産業団体の6団体で発足したのち、医薬品開発や医薬品市場のグローバル化に伴い、2015年にスイス法人格を有するICH協会が設立された。以降、世界各国の規制当局や新薬系以外の国際業界団体へも門戸を開放したことにより、国際規制調和プラットフォームとして規模の拡大が続いており、2025年末現在、会員数25、オブザーバー数41を抱える大規模な国際協会へと発展している。ICHでは、年に2回(主に6月と11月)、5日間の対面会合を開催しており、対面会合では全てのICH会員とオブザーバーで構成される総会や、一部のICH会員で構成され実質的にICHの運営を担う管理委員会、専門家が各ガイドラインの議論を行う各作業部会が開催される。また3月には、管理委員会と一部の作業部会が対面で議論する中間会合が開催される。対面会合以外の期間も、管理委員会と作業部会は定期的にリモート会議を開催し、それぞれICH運営にかかる課題解決やガイドラインの進捗を図っている。
製薬協は、ICH協会の創設会員としてICHを運営・管理する総会および管理委員会の委員を務め、すべての作業部会に参画している他、管理委員会内に設置されICHガイドラインの実施を支援するトレーニング小委員会をCo-Leadsとして主導し、同じく管理委員会下の財務委員会へも、ICHが管轄するMedDRAの運営委員会からCo-Chairとして参画している。これらの活動を通じてICHの協会運営全体に貢献するとともに、国際的な規制調和への日本産業界の意見の反映やICH活動における日本製薬業界のプレゼンスの向上に努めている。中国やブラジルなどがICH管理委員会内でも存在感を増しているものの、それらの地域の産業団体がICHに加入できない規定となっている中で、世界をリードする日本の製薬産業の立場を明確に主張できる活動実績をあげることが、世界に対する影響力とICHにおける地位を維持するために重要となっている。
重点課題
ICHプロジェクトは、製薬協内で委員会横断的に機能する組織体として製薬協におけるICH関連活動のすべてを管轄している。国内規制当局(厚生労働省/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA))、国内産業界(日本ジェネリック製薬協会、日本OTC医薬品協会、一般社団法人日本バイオシミラー協議会)をはじめ、他国・地域の規制当局や産業界とも協力し、品質(Q)、安全性(S)、有効性(E)、複合領域(M)における新規ガイドラインの作成や現行ガイドラインの改定を実施し、国際的な規制調和を推進することを活動の中心とする。
2026年度のICH対面会合は、リオデジャネイロ(5月30日~6月3日)とプラハ(11月14日~18日)で開催される。また、2027年3月には欧州(詳細未定)にて中間会合が開催される予定である。COVID-19以降、例外的にオンラインでの参加も認められるようICH内の各種規定が改正されたものの、ICHプロジェクトとしては、対面会議の重要性を鑑み、ICH会合の予定が確定した段階で委員及び専門家へ周知し、早期に現地渡航計画等の調整を図るよう努める。また、ICHプロジェクト内で専門家・実施作業部会間のコミュニケーションを深め、関係委員会との連携強化を図りつつ、効率的なICH活動を推進する。
重点課題への取り組み内容
2026年度は特に以下の3点を柱とした活動に注力する。
1.プロアクティブな戦略議論とガイドラインの作成
医薬品評価委員会をはじめとする製薬協内の関連する委員会と密に連携し、検討中のガイドラインに関する適時適切に意見を収集・取りまとめ、日本における医薬品開発に資する調和ガイドラインの作成を目指す。また、新たに技術トピック・戦略議論として取り上げられるテーマにも積極的に取り組み、特に国内規制当局や他業界団体と連携してその推進を図る。
ICHにおける新規トピックの検討に際し、製薬協会員企業に有用なトピック案の提案や新規トピックの採択へ向けた意見発信を行う。中期的な取り組みとして、日本の比較優位がある非臨床分野で、動物実験を代替する医薬品評価ツールの要素技術を確立するため、医薬品評価委員会や研究開発委員会と連携して関連する戦略議論を推進する。また、長期的には、日本の成長戦略に資する「日本発 ICH 標準」の確立を目指し、産業政策委員会と連携して政策提言に繋げることを目指す。さらに、様々な意思決定に「患者の声」を考慮する必要性がクローズアップされる中、ICHでも「患者に焦点を当てた医薬品開発(PFDD:Patient-Focused Drug Development)」関連トピックの検討が開始されている。その第一弾となるE22(患者選好試験の一般指針)の進捗に貢献するとともに、2025年に実施した患者中心の薬剤情報(PCPI:Patient Centric Product Information)提供を目指したグローバルPCPIワークショップを継続発展させる。
2.日本・ICH地域におけるガイドラインの一貫した運用
トレーニング小委員会のCo-Leadsとして同小委員会の活動を牽引し、国内における新規ガイドラインの普及や、各国・地域へのICHガイドラインの普及を推進する。日本国内でICHガイドラインを適切に運用するには、関連する委員会を通じた普及活動が必要であり、患者を含む多様なステークホルダーから意見を早期に集めるため、患者団体連携推進委員会と適宜連携する。さらに、ICHガイドラインの実施状況を検証するICH管理委員会の活動も支援し、各地域でのガイドライン実施状況の把握やガイドライン実施を促進する。アジア地域でのガイドライン普及に向けて、APACプロジェクトや国際委員会と協力し、対象国との二国間シンポジウムなど通常のICHイベント以外の接点も増やしていく。その他、電子化関連ガイドラインの仕様に関する国際標準団体の動向把握や、規制の国際調和に係る動向への対応の体制強化等に取り組む。
3.世界・アジアにおける日本製薬産業界のプレゼンス向上
製薬協全体の国際活動との関連を視野に入れながら、ICH対面会合の機会を活用して、各国・地域の団体と連携して国際調和を牽引することで、日本製薬業界のプレゼンス向上を図る。日本産業界からの新規技術トピック・戦略議論の発信、国際調和の議論を推進できる有能な専門家の派遣、そのための人材発掘と育成、それらをその活動の端緒として取り組む。ICH活動基盤を拡充するため、関連する委員会と連携して、次世代の専門家候補者となり得る若手人材を各委員会の活動に積極的に登用する。また、新規トピックの専門家候補者を各委員会の委員長や部長と協力してプロアクティブに選定する。
他の委員会等の協働
専門分野別の委員会横断的なコーディネーション機能の強化を継続し、製薬協内の関連委員会の協力を得ながら委員会横断的なトピック推進を図る。また、トピックに応じて、製薬協外の関連団体やステークホルダーとも協働していく。ICHプロジェクトに配置したコーディネーション機能やICHプロジェクト内のネットワークを活用し、以下の事項について必要な対応を図る。
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製薬協のICH戦略優先課題候補(必要に応じてリフレクションペーパー案)ならびに新規トピック候補の検討と提案、進行中のトピックの進捗支援、新ガイドラインの実施・普及支援、現行ガイドラインの維持・更新を推進する。(前項1)
1)NAMsリフレクションペーパードラフティンググループへの参画
2)NAMsリフレクションペーパーに紐づく新規トピックの提案 -
既存の各ICHトピックが抱える課題をICHプロジェクト内で共有し、特に日本固有の課題について製薬協全体での解決を図りながら、各トピックの進捗とマイルストーン達成を支援する。(同(1))
1)E14/S7B Q&A Step4 (2026年5月)
2)E20 Step4(2026年10月)
3)E22 Step4(2026年12月)
4)M13 Step4(2026年7月)
5)Q1 Step4(2026年11月)
6)Q3C(R10) Step4(2026年12月)
7)Q6(R1) Step2(2026年11月)
8)S13 Step2(2026年10月) -
財務委員会やMedDRA運営委員会の活動を通じて、自立的かつ効率的な非営利スイス法人としてICH協会が財務健全性を確保・維持するための施策を提言し、拡大・発展を続けるICH協会の効率的な運営と中長期的な事業継続性を担保する。(同1、2、3)
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厚生労働科学研究「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業」として、国際的整合性を目指す医薬品等の品質、有効性及び安全性に関する研究へ協力する。(同1、2)
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ICHの成果やガイドライン普及の一環として、ICH即時報告会、ICHガイドライン説明会等の開催、国内外で開催されるICH関連会議を支援する。(同2)
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トレーニング小委員会の活動を通し、医薬品規制調和活動に取り組むICH・非ICH地域の国々へのICHガイドライン普及を支援する。(同2、3)
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製薬協が議長を担い、各国・地域の規制当局や製薬団体を巻き込み、新興国規制当局へのベストプラクティス浸透を図るために取り組んでいるグローバルワークショップを企画・推進する。(同1、3)
1)第1回ワークショップ成果のPeer Review論文化
2)第2回ワークショップの開催(2026年9月) -
各トピックのアディショナルサポートスタッフ(ASS)を拡充しICHの議論に関与する機会を増やすことで、将来のトピックリーダーやラポーター候補の発掘と育成を図る。(同3)
