2023年度事業方針、事業計画
1. 事業方針
昨年、厚生労働省に設置された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」における薬価制度の抜本的な見直しの議論において、現行の新薬創出等加算に代わる新たな薬価維持制度と医薬品の持つ多様な価値を客観的かつ透明性をもって評価するプロセスの導入を提案しており、次期薬価制度改革において実現すべく、関係者と議論を尽くす。その際には、国民の製薬業界へのさらなる理解と支持を得ることが極めて重要であり、これまで進めて来たアドボカシー活動の更なる充実・強化にも取り組む。
2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」に示された新しい資本主義に向けた改革に製薬業界としても取り組む。特に重点投資分野として掲げられた5分野(人への投資と分配、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップ(新規創業)への投資、グリーントランスフォーメーション(GX)への投資、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資)に可能な限り具体的に取り組むことを検討する。
これらを踏まえ、魅力ある日本市場とするため製薬協が取りまとめた政策提言2023に基づき、
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イノベーション創出を促進する環境整備
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持続可能な医療・社会保障の実現に向けた取り組み
を進める。
(1) については、創薬力強化を目指して
- 日本が強みを有するアカデミアの研究領域から「創薬プラットフォーム」構築
- 創薬スタートアップへの支援強化
- バイオ開発・製造人材の育成強化
- 健康医療データ基盤構築と法制度整備
- イノベーション創出を促進する税制の強化
- 薬事、知的財産関連施策等の推進
などに取り組む。
(2) については、
- 医療にとって不可欠な医薬品の安定供給の確保
- 全世代型社会保障制度の下での効率的・効果的な医療(地域医療連携の推進や医療のデジタルシフトは急務との認識の下、地域医療構想、かかりつけ医機能、電子処方せん等の整備が進み、オンライン診療・服薬指導のあり方の検討が進む中で必要とされる医薬品供給および情報提供)への貢献
- 医療保険制度について、負担能力に応じてすべての世代で公平に支えるための見直し、医療全体の課題としての給付範囲についての議論への対応
- 国民の新薬へのアクセスを確保するためのイノベーションの評価(新薬創出等加算に代わる新たな薬価維持制度、新薬の新たな価値評価プロセスの導入と柔軟な類似薬選定、医薬品の多様な価値の評価の活用等)の実現
- 医薬品の適正使用(適切な情報提供活動、薬剤耐性(AMR)問題、革新的医薬品の最適使用やポリファーマシーへの対応等)の推進
などに取り組む。
2022年に創設された「緊急承認制度」を含めた日本の薬事制度に関しても、イノベーションを速やかに患者さんに届けるために必要な見直しが適時適切に行われるよう、厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の関係者と議論を尽くす。特に2023年度は2019年の医薬品医療機器法改正から5年後の2024年に向けた制度見直しに関する議論が本格化することが見込まれており、適時適切に意見の表明や要望の提出を行う。
2. 事業計画
2023年度の事業は、1.事業方針に掲げた環境変化や課題を踏まえた基本的考え方に基づき、2023年2月に公表した「製薬協 政策提言2023」の実現に向けて各委員会等が作成した実施計画に沿って実施する。以下の各項目では、当該項目に関する内容を実施計画の重点事項に掲げる委員会等を記載したが、それ以外の委員会等においても相互の連携を図りつつ、関連する事業を必要に応じて実施する。また、国内外のさまざまな状況変化に臨機応変に対応するため、各委員会の実施計画の内容を必要に応じて修正することも可能である。
(1)「経済財政運営と改革の基本方針2022」に示された新しい資本主義に向けた改革に掲げられた重点投資分野を参考に、「製薬協 政策提言2023」に掲げた創薬イノベーションの推進とイノベーションの適切な評価の実現に取り組み、健康寿命の延伸、社会・経済発展に貢献する。
産業政策委員会、医薬品評価委員会、品質委員会、バイオ医薬品委員会、薬事委員会、知的財産委員会、研究開発委員会、患者団体連携推進委員会、くすり相談対応検討会、環境問題検討会、医薬産業政策研究所が取りまとめた実施計画に基づき実施
(2)「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の議論等を踏まえ、医療に必要な医薬品の安定供給の実現に貢献する。
産業政策委員会、医薬品評価委員会、品質委員会、バイオ医薬品委員会が取りまとめた実施計画に基づき実施
(3)製薬産業への理解を高めるための戦略的なアドボカシー活動に引き続き注力する。特に2023年5月に広島で開催予定のG7サミットおよび関連する会合の機会を積極的に活用する。
産業政策委員会、国際委員会、広報委員会が取りまとめた実施計画に基づき実施
(4)国際展開、国際協調の推進とグローバルヘルスに貢献する(昨今の国際情勢を踏まえ、経済安全保障にも留意)。
産業政策委員会、ICHプロジェクト、国際委員会が取りまとめた実施計画に基づき実施
(5) 次期医薬品医療機器法改正に向けた議論に積極的に参加するとともに2022年に実施した法令順守体制に関するアンケート調査結果も踏まえ、コンプライアンス徹底の活動を進める。
コード・コンプライアンス推進委員会、流通適正化委員会、医薬品評価委員会、品質委員会、バイオ医薬品委員会、薬事委員会、製品情報概要審査会が取りまとめた実施計画に基づき実施