日米欧製薬3団体共同声明:
2024年度(令和6年度)薬価制度改革への提言

印刷用PDF

2023年04月14日
日本製薬工業協会(JPMA)
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)

 

日本製薬工業協会(JPMA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、日本で活動する世界有数の研究開発型の革新的医薬品企業を代表しています。

私たちは、患者さんにとって重要な新薬創出を促す創薬イノベーション・エコシステムの構築を求めています。私たちが提唱するエコシステムは、満たされない医療ニーズに対応するための研究開発から始まり、安全で効果的な医薬品を迅速に承認する国際的に調和された薬事規制、そしてイノベーションを適切に評価する保険償還によって成り立っています。その中で、患者さんの新薬への安定的かつタイムリーなアクセスを確保し、かつ、企業が次世代の治療法やワクチンに再投資できるようにするためには、エコシステムのすべての要素が滞りなく機能する必要があります。

 
日本は長年、ライフサイエンス分野におけるグローバルリーダーであり、世界中の患者さんのために新薬を開発する上でも極めて重要なパートナーです。しかしながら、ここ数年、度重なる薬価算定ルールの変更や特許期間中の新薬の毎年薬価改定により、日本の創薬イノベーション・エコシステムは競争上不利な立場に置かれています。現在、日本はマイナス成長市場と見なされ、ライフサイエンス分野への投資は、世界的な増加傾向とは対照的に減少を続けています。その結果、初期段階パイプラインの日本のシェアは低下し、新規の臨床試験も停滞しています。そして、満たされない医療ニーズに対応する革新的医薬品が日本でタイムリーに発売されない、あるいは全く発売されないというドラッグ・ラグが再来しています。このような状況の中、2024年度(令和6年度)の薬価制度改革は、負の流れを変える重要な機会です。
 
日本が市場の持続的な成長を取り戻し、世界最新の治療法やワクチンの開発とアクセスの上で取り残されないためにも、薬価制度改革を含めた創薬イノベーション・エコシステムの強化が喫緊の課題であると考えます。そこで、私たちは、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(以下「有識者検討会」という。)」において、2024年度(令和6年度)薬価制度改革に向けて優先的に検討されるべきと考える3つの改革案を提言します。
 
提言1:特許期間中の薬価の維持
 
新薬創出加算の適用基準の大幅な変更と毎年薬価改定の導入により、現在では革新的医薬品の約半数が毎年の薬価引き下げの対象となっています。また、新薬創出加算の対象品目であっても、市場拡大再算定により、革新的医薬品の価格が大幅かつ繰り返し引き下げられることがあります。
その結果、日本の革新的医薬品の多くは他の先進国とは対照的にビジネス上の不確実性に直面しています。
こうした課題を解決するためにも、特許期間中の革新的医薬品を市場実勢価格による改定の対象から除外し、また、過大な薬価差や薬価差の偏在が生じない制度への移行に向けた議論を継続するとともに、有識者検討会が提起する現状の課題を踏まえ、市場拡大再算定と類似薬への適用(とも連れ)ルールの改善を提言します。
 
提言2:新薬の薬価算定の改善
 
現行の新薬の薬価算定方法は、イノベーションの価値が反映されない制限的な算定基準によるものとなっています。革新的医薬品の3分の2は薬価収載時に加算が付かず、加算が付いたとしてもそのほとんどが最低限です。特に、新しい治療法やモダリティを有する高度な革新的医薬品は、現行の算定基準の下では適切な類似薬がなく、患者さん、医療制度、社会に対して相当な価値を提供するにも関わらず、適切に認識されていないため、厳しい状況となっています。
その結果、日本における新薬、とりわけファースト・イン・クラス製品の販売価格は、他の先進国の販売価格と比較して一層乖離が生じ、日本における早期上市のインセンティブの低下を招いています。
新薬の薬価算定を改善するため、現行の要件では評価されにくい医薬品の価値をより総合的に評価できるように評価基準を拡大するとともに、類似薬の選定対象を拡大することを提言します。
 
提言3:非革新的な医薬品への非効率な支出の削減
 
私たちは、日本における革新的医薬品市場の持続的な成長を望んでおり、上記の提言を実施するための財政的余地を生み出す機会が医療制度全体に多く存在すると考えています。私たち製薬企業も、重複投薬や多剤投与の削減、臨床的に適切なジェネリック医薬品・バイオシミラーの導入促進、安定供給を確保しつつ長期収載品の迅速な価格引下げの促進など、様々なステークホルダーが提案するコスト削減策に対して役割を担いたいと考えています。
 
改革の策定と実行に向けた官民対話の強化の必要性
 
私たちは、こうした政策変更が単純なものではないことを理解していますが、すべてのステークホルダーが集まり、互いにパートナーとして共通の目標に向かって協同することで最良の策が生まれると信じています。このような必要な改革を成功に導くためにも、日本政府と内資・外資の革新的医薬品企業との間で、定期的かつ実りある対話が行われることを望みます。
 
私たちの業界は、ここ数十年で最大級の医学的ブレイクスルー、すなわち、ほんの数年前には想像もつかなかったような人々の生活を一変させる可能性のある発見まであと少しのところにいます。私たちは、科学、経済成長、そして日本の患者さんの新薬へのタイムリーなアクセスを促進する強靭な創薬イノベーション・エコシステムの実現のための課題解決に向けて、日本政府とともに努力していきます。私たちは共に力を合わせれば、これらの共通の目標を達成できると確信しています。
 

団体概要

日本製薬工業協会(JPMA)
製薬協は、研究開発志向型の製薬企業71社(2022年10月1日現在)が加盟する任意団体です。1968年に設立された製薬協は、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献してきました。
製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)
PhRMAは、世界中の主要な研究開発志向型バイオ医薬品企業を代表する団体です。加盟企業は新薬を発見・開発し、患者さんがより長く、より健全で活動的に暮らせるよう努力しています。加盟企業の新薬研究開発に対する投資額は、2000 年からの累計では 1.1 兆ドル以上に達し、2021 年単独でも推定1,023億ドルになりました。

欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)
2002年4月に設立されたEFPIA Japanには、日本で事業展開している欧州の研究開発志向の製薬企業23社が加盟しています。2021年の加盟各社の総売上高は、日本の製薬市場の売上の約26%を占めています。EFPIA Japanの使命は、“革新的な医薬品・ワクチンの早期導入を通じて、日本の医療と患者さんに貢献する”ことです。EFPIA Japanは日本の医療向上に向けて政策決定者との対話を強化することを目指しています。

資料

お問い合わせ先

日本製薬工業協会(製薬協)広報部

電話
03-3241-0374
お問合せフォーム
www.jpma.or.jp/inquiry/

このページをシェア

TOP