製薬協会長 2023年 新年のご挨拶

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2023年01月05日

2023年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

未だ新規感染者数は高止まりし新型コロナウイルス感染症との戦いが続いており、インフルエンザとの同時流行も懸念されております。一方で、オミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にあることなどから感染症法上の類型見直しの議論も始まりました。昨年はついに日本発の新型コロナウイルス感染症の経口治療薬が、新たに創設された「緊急承認制度」のもとで承認され、日本発のワクチンも承認申請が行われました。with コロナの時代へと移りつつある中、次なるパンデミックに備え、日本医療研究開発機構(AMED)の先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が始動し、内閣感染症危機管理統括庁や日本版CDCの設置が決定されました。感染症・ウィルス対策は国家安全保障上の最重要課題であり、有事に迅速かつ的確に対応するためには平時からの備えが不可欠であり、これらの取り組みを着実に進めていかなくてはならないと考えております。

ウクライナ情勢によるエネルギー価格や物価の高騰、欧米との金利差などに伴う円安の進行は日本経済に大きな打撃を与えていますが、製薬企業にとっても例外ではなく、原材料、原薬、輸送コストの上昇、さらには海外臨床試験費用をはじめとする研究開発費の増加などの様々な影響が生じています。そういった中で行われた本年の中間年改定に関する議論では、製薬業界として、医薬品はコスト増による価格転嫁や供給量の調整ができない特性から、薬価を引き下げる状況にはないことを訴えてまいりました。結果としまして、前回2021年度の改定と同様、平均乖離率の0.625倍を超える品目が対象となる一方、イノベーションに配慮する観点から新薬創出等加算の加算額を臨時・特例的に増額するとともに、安定供給問題等に対応するため不採算品再算定が全対象品目に適用されることとなりました。

現在、日本市場の停滞に伴う魅力度低下等により海外で承認されているにもかかわらず日本では使用できない未承認薬が増加しております。ドラッグラグ・ドラッグロスを阻止し国民の革新的新薬へのアクセスを確保するためには、イノベーションの適切な評価が不可欠です。昨年、厚生労働省に「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が設置され、薬価制度の抜本的な見直しの議論が開始されました。製薬業界は、日本市場の魅力度低下や国内未承認薬増加の現状を踏まえ、現行の新薬創出等加算に代わる新たな薬価維持制度と、医薬品のもつ多様な価値を客観的かつ透明性をもって評価するプロセスの導入を提案しました。次期薬価制度改革にて実現すべく、引き続き関係者と議論を尽くしてまいります。

昨年は、日本の創薬力強化に向けて大きな一歩を踏み出した一年でもありました。今や開発中の新薬の起源の多くはベンチャーであり、アカデミアやベンチャーの支援の強化が日本における創薬エコシステム構築の鍵となります。政府は、Greater Tokyo Biocommunity (GTB)とバイオコミュニティ関西(BiocK)をグローバルバイオコミュニティに認定するとともに、昨年末には感染症対策の一環として開始された創薬ベンチャー支援の対象を、すべての創薬領域に拡充し3000億円もの予算を措置することとしました。これらの政策決定は、創薬エコシステム構築に対する国家としてのコミットメントを示すものであり、製薬業界としても強く歓迎しております。

革新的新薬あるいは全く新しいヘルスケア・ソリューションの創出には、健康医療ビッグデータの活用が不可欠となります。昨年は政府に医療DX推進本部が設置され、医療分野におけるDXの議論が本格的に開始されました。これらを実効性のある取り組みとするには、欧州のEHDS(European Health Data Space)構想を参考に、患者さんのためにどのような価値を提供するかという視点からバックキャストして、データ基盤構築と出口規制を志向する法制度整備を両輪とする総合政策を進めていただきたいと考えております。

製薬産業は大きな環境変化の真っただ中にありますが、めざすべき姿、果たすべき使命は、国民の皆様の健康寿命の延伸に貢献すること、そして基幹産業として日本経済の成長に貢献することです。製薬産業は、これらの使命を果たすため、革新的新薬の研究開発及び高質の医薬品の安定供給に全力を尽くしてまいります。皆様のご理解、ご支援をお願いし、年頭のご挨拶といたします。

以上

日本製薬工業協会
会長 岡田 安史

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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