第12回WTO閣僚会議で予定されている知的財産保護義務免除に関する協議についての研究開発型製薬産業の声明

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2022年06月10日
日本製薬工業協会

日本製薬工業協会(会長:岡田安史、以下「製薬協」)は、「第12回WTO閣僚会議で予定されている知的財産保護義務免除(TRIPSウェーバー)に関する協議についての研究開発型製薬産業の声明」を発表しましたのでお知らせします。

本共同声明の日本語訳は以下の通りです。なお、本声明の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

日本語訳

第12回WTO閣僚会議で予定されている知的財産保護義務の免除(TRIPSウェーバー)に関する協議についての研究開発型製薬産業の声明

世界の研究開発型製薬産業を代表する複数の団体は、「クワッド妥協案」で提案された知的財産権(IP)の枠組みを弱めることは不要であり、イノベーションに悪影響を及ぼすことを再確認しました。IPの放棄はCOVID-19ワクチンへのアクセスにみられる不公平性に対処しないばかりか、世界的な健康安全保障を危険に晒すことにもなりかねません。また、製薬産業が持つ、イノベーションとともに、連携力、リスクを冒して投資する力、将来起こりうるパンデミックに迅速に対応する力を失わせることになります。

製薬産業は、COVID-19パンデミックに取り組むために通常では用いられることのないアプローチを採用し、科学の新境地を切り開き、実行可能な解決方法を構築し、解決方法が見つかれば製造規模の拡大能力を確保するために重要なリソースに力を入れると同時に、患者さんが既存の医薬品を引き続き確実に利用できるよう、休むことなく尽力してきました。この結果、史上最速(わずか326日)でワクチン開発と承認取得を達成しました。

科学や製造にこのような進歩がみられたにもかかわらず、過去18カ月間にわたって世界貿易機関(WTO)の加盟国の間では、IPの枠組みを弱めることを目的としたさまざまな方法の協議がなされています。しかし今日に至るまで、IPがCOVID-19ワクチンの製造やアクセスに対する障害となっていたというエビデンスはなく、また今までにない安全かつ有効なワクチンや治療薬の研究、開発、製造にIPが果たした重要な役割の認識もありません。


パンデミック発生当初から、製薬産業は、製造規模を迅速に拡大する必要性を感じており、承認が得られる前に製造設備を拡張しようと努め、あらゆる地域で可能な限り提携し、その間にも常時、品質、安全性、有効性に妥協することなく対応してきました1 。現在までに、製薬産業では、COVID-19ワクチンについては381、その治療薬については150の提携を結んでおり、それぞれ88%超、79%超が技術移転を伴うものとなっています。IPの保護により、長年にわたり研究したことやリスクを冒して投資したことが実を結び、現在ではWHOの緊急時使用リストに11のワクチンが掲載され、世界全体では36の治療薬が承認されています 2。製薬産業は研究や投資を続けています。また、産学合わせると659のワクチン候補(192が臨床段階)と1,706(885が臨床段階)の治療薬候補がパイプラインに入っています3
最初のワクチンが承認されてから6カ月も経たない2021年5月までに、月間製造量は10億回分に迫る量となりました4 。これは、各国にワクチンを分配する意思があり、かつそれが可能であれば、世界中の人々にワクチン接種できるほどの量です。当時、製薬産業は政府に対し、ワクチン接種を開始するために、貿易制限を撤廃し、ワクチンを分配し、医療制度を整備するよう求めていました(「COVID-19ワクチンの公平性を緊急に向上させるための5つのステップ」)。ワクチンの供給や管理を行う上での重大なボトルネックが、脆弱な医療制度としばしば関連していることが徐々に明らかになりつつあった2022年3月には、この要求が再度繰り返されました(「COVID-19ワクチンへのアクセスを緊急に増やすための3つの優先事項」)。今日では、需要や世界中の人々に接種する/ブースター接種するのに必要な量よりも世界のワクチン製造能力の方が大幅に上回っているため、COVID-19ワクチンの供給状態はワクチンへのアクセスに対する障害とはならないというのが、一般的な認識となっています。  
  • 4
    COVID-19ワクチンの世界全体の月間製造量は、2021年5月には8億3,000万回分、2021年6月には12億回分、2021年7月には12億回分に達しています。
    出典:Airfinityのデータに基づく国際製薬団体連合会(IFPMA)による解析。掲載先:https://science.airfinity.com/  

このパンデミックの間に、将来起こりうるパンデミック時に行うべき公平なアクセスの推進に役立つ多くの教訓が得られました5。我々は、健康の公平性の達成に向けた集団的な取り組みを強化するとともに、医療制度や医療提供基盤を確実に補強していく必要があります。COVID-19ワクチンや治療薬は、数十年にわたる研究投資に加え、民間部門、公共部門、学術部門全体の、迅速かつ自発的な提携を促すIPの枠組みにより実現できました。 

TRIPSウェーバーに関する協議はエビデンスがなく、IPの枠組みは政治的駆け引きに利用されてしまいました。今週、第12回WTO閣僚会議が開催されますが、そのリーダー国はIPの枠組みを弱めることは世界的な健康安全保障を脅かすおそれがあることに留意しなければなりません。貿易障壁の撤廃、流通上の課題への対処、医療制度の強化、革新を推し進めアクセスを向上させるための提携など、COVID-19ワクチンへのアクセスに関する実質的な課題に的を絞る方が、はるかに優れたアプローチとなるでしょう。






本共同声明の原文(英文)は、こちらからご覧ください。
RESEARCH-BASED BIOPHARMACEUTICAL INDUSTRY ON THE TRIPS WAIVER DISCUSSIONS AT WTO MINISTERIAL CONFERENCE 12
  • 別紙資料は、各製薬団体が、2022年6月9日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳再編集し、皆さまのご参考に提供するものです。正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

別紙資料

第12回WTO閣僚会議で予定されている知的財産保護義務の免除(TRIPSウェーバー)に関する協議についての研究開発型製薬産業の声明(日本語訳)

本件に関する問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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