「第8回 アジア製薬団体連携会議」開催を受けて

印刷用PDF

2019年04月10日
日本製薬工業協会
会長 中山 譲治

2019年4月9日に、「第8回 アジア製薬団体連携会議;Asia Partnership Conference of Pharmaceutical Associations (APAC)」が「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッション実現に向け、製薬団体関係者のみならず日本を含むアジア各国/地域の規制当局関係者・アカデミアが一堂に会し開催されました。

本会議は、IFPMA理事長挨拶と宮田裕章教授(慶應義塾大学)の基調講演に続く「VBHセッション」を皮切りに、「新薬アクセスセッション」、「規制許認可セッション」、「創薬連携セッション」の合計4つのセッションを行い、活発な議論や提言がなされました。本年度の合意事項を別紙の通りとりまとめましたので、お知らせいたします。

日本製薬工業協会といたしましては、本合意事項に基づき、今後もアジアの製薬団体、政府機関、規制当局、アカデミア等と協力・連携し、様々な課題の解決により一層取り組んでまいります。

第8回APAC合意事項骨子

価値に基づく医療(Value-based Healthcare;VBH)

  • ヘルスケアイノベーションと題して新しい技術と持続可能性の両立をテーマに、 宮田裕章教授にご講演いただいた。バリューイニシアティブ、バリューイノベーション、バリューコラボレーションがトピックであった。
  • パネルディスカッションは医薬品・医療の多面的価値評価とワイズスペンディングについて議論された。

    1. 医薬品及び医療の多面的価値に基づく評価では、HTA (医療技術評価)の定義から始まって個別製品・技術に対する「ミクロなHTA」と、医療システム全体を対象とする「マクロなHTA」を分けて考えることの重要性、日本の費用対効果評価制度の特徴(日本のHTAはアクセスを阻害していない)、現在の日本のHTA制度における論点が討議された。さらに、Patient centricity と多面的価値に基づく評価の重要性が強調された。
    2. ワイズスペンディングでは発症予防と進展予防の有用性、量から質・結果に基づく医療へのシフトのための制度設計の重要性、全ステークホルダー間のパートナーシップの重要性が議論された。
  • ラップアップでは、今回のVBHセッションでは「価値ある医療にこそ投資すべき」という方向性・共通認識を見出すことができたこと、本テーマは持続可能なヘルスケアのためいずれの国でも重要なテーマであること、この議論は革新的医薬品のみならずより広いヘルスケアシステム全体を対象に議論していることをご理解いただいた。APACは 官民連携して患者さんに価値あるソリューションを届けるためのパートナーシップであり、来年以降もこのVBHの議論を深めて行きたい。

新薬アクセス(Access To Innovative Medicines;ATIM)

安定性試験実施のコミットメントによる承認後の変更手順

  • JPMAは、承認後の変更手順を含めて、ミッションを達成するためのPosition paperを提案した。
  • Position paperは、変更申請時に、有効期間を通じて新たに取得した安定性試験データを提出することに代わり、試験実施のコミットメントによる申請を推奨するものである。この点についてASEAN の参加国と議論を行なった。
  • パネルディスカッションに参加した全当局(マレーシア、タイ、並びにインドネシア)ともに、科学的で、リスクに基づく評価により、安定性試験の正当性を示す事ができるならば、コミットメントによる申請手法の推進を考慮することで合意した。
  • PMDAより、既に2018年4月から日本で開始されているPost-Approval Change Management Protocol(PACMP:承認後変更管理プロトコール)のパイロットプログラムの紹介がなされた。

規制・許認可(Regulations and Approvals;RA)
Good Registration Management

Success of “Train the Trainers”

  • アジア太平洋経済協力(APEC)として台湾FDA・PMDAが推進する「医薬品の承認審査の管理規範(Good Registration Management; GRM)」を継続的に支援し、アジアにおける革新的な医薬品の申請・審査の質の向上を図る

    1. 2016年から開始したAPEC GRM Workshopを台湾FDA・PMDAと引き続き共催し、アジア各国でGRMを推進できるトレーナーを継続的に育成する(“Train the Trainers”)
    2. タイが新たに主催するAPEC GRM Pilot Workshopなど、“Train the Trainers”に基づいて展開されるアジア各国のGRM Workshop開催を積極的に支援し、医薬品の申請・審査の質の更なる向上を目指す

Regulatory Convergence

Reliance Pathway for Approval of Innovative Medicines in APAC

  • WHOが提唱するReliance Pathway「信頼関係構築に基づいた規制当局間の協力による革新的医薬品の効率的な審査推進」の導入をアジア規制当局に対して産業側から提言し、革新的な医薬品へのアクセス向上を推進する
  • 実現に向けた取り組みとして 8th APAC で提案したロードマップ(3ヶ年計画)に基づき、2020年の9th APAC において以下の提案をする
    1. WHO提唱のReliance Pathwayをアジアで推進するための提言
    2. Reliance Pathwayをアジアで普及するためのトレーニングプラットフォーム

創薬連携(Drug Discovery Alliances;DA)

  • APAC DA-EWGは3年以上にわたり、アジア諸国のメンバーと共に天然物創薬に注目した活動を行ってきた。その結果、2018年12月にAPAC天然物創薬コンソーシアム(ANPDC)を立ち上げるに至った。
  • アジアは天然物創薬を実施する上での利点を有している。ANPDCは天然物の創薬における可能性を最大化するだけでなく、アジアにおける創薬連携を推進するユニークなオープンイノベーションの枠組みである。

    • 天然物とiPS細胞由来の病態モデルなど最新技術との組み合わせ
    • アジア若手研究者の日本の製薬企業による人材育成
    • アジア諸国と日本の製薬企業の連携の下に実施される、天然物の輸出入を伴わない初期活性評価
  • 次の目標は、幾つかの課題対応によって、ANPDCの活動から創薬研究につながる成果を得ることである。

    • アジア諸国におけるナショナル天然物ライブラリーの構築
    • コンソーシアムに参画する国、研究機関、製薬企業の増加
    • アジア若手研究者の人材育成

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

このページをシェア

TOP