薬価制度の抜本改革(案)について
2017年11月29日
日本製薬工業協会
会長 畑中 好彦
今般、中央社会保険医療協議会・薬価専門部会において、「薬価制度の抜本改革について(案)」が示されましたが、医薬品の研究開発・安定供給を通じて国民医療への貢献を使命とする製薬業界の立場から、以下のとおり意見を表明します。
長期収載品依存から脱却して、新薬創出を加速するとともにドラッグ・ラグを解消し、イノベーションの推進と医療の質の向上を実現するためには、特許期間中の新薬の薬価は原則として維持されるべきである。
しかしながら、今般の新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直しにおいては、本加算の対象範囲が新薬の一部に限定されるとともに、新たな企業要件の導入によって加算に区分を設けることにより、95%以上の企業において全ての対象品目について薬価が維持されない仕組みが提案されている。こうした提案は、新薬への研究開発投資を回収できないリスクを高め、製薬企業による新薬開発のモチベーションを著しく損ねるものであり、国民が待ち望む革新的新薬の創出を促進する仕組みとは考えられない。
仮に、見直しを行うのであれば、最低限以下の項目について再検討が必須と考える。
- 企業要件である「区分Ⅰ」(加算係数1.0が適用される企業)に該当する企業の範囲を拡大すること
- 加算の対象品目は新規性の乏しいもの(配合剤、類似薬効比較方式Ⅱ等)以外の全てとすること
- 新薬算定において、類似薬効比較方式における比較薬の累積加算相当分を控除しないこと
- 新薬算定における補正加算の適用については、臨床上の有用性を踏まえ、適切な運用を行うこ
長期収載品依存からの脱却の基本的方向性について異論はないが、企業経営の安定性確保の見地から、特許期間中の新薬の薬価が維持される仕組みとセットで検討されるべきものである。長期収載品については、その状況や背景は様々であるため、該当品目及び企業に大きな影響を及ぼすことが懸念されることから、十分な激変緩和措置が不可欠である。
新薬の開発には、膨大な時間と費用が必要であり、国際的競争が厳しくなり、研究開発費が高騰していく中で、製薬業界が国民のニーズに対応した革新的医薬品を研究開発・供給していくためには、薬価制度は極めて重要な位置を占めるものである。企業経営や医薬品開発戦略に大きな影響を与える制度の安定性、予見性を強く求めたい。また、急激な制度の変更は、企業経営に甚大な影響を与えるものであるので、実施に当たっては、十分な移行期間と適切な激変緩和措置を設けるべきである。
以上
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