「第14回 アジア製薬団体連携会議」開催を受けて
2025年04月23日
日本製薬工業協会
会長 上野 裕明
2025年4月22日に、「第14回アジア製薬団体連携会議(Asia Partnership Conference of Pharmaceutical Associations, APAC)」が「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッションのもと開催されました。今年も製薬団体関係者のみならず、日本を含むアジア各国・地域の規制当局関係者やアカデミアの方々を演者や視聴者として迎え、約700名が参加し有意義な議論が行われました。
本会議は、国際製薬団体連合会(IFPMA)の理事長の祝辞、厚生労働省の迫井正深医務技監、PMDAの藤原康弘理事長の基調講演に続いて昨年同様に「規制・許認可」「創薬連携」「添付文書の電子化(e-labeling)」「MQS」「aUHC」の合計5つのセッションを執り行い、活発な議論や提言がなされました。
本年度の合意事項を別紙の通りとりまとめましたので、お知らせいたします。日本製薬工業協会は、本合意事項に基づき、今後もアジアの製薬団体、政府機関、規制当局、アカデミア等と協力・連携し、様々な課題の解決により一層取り組んでまいります。
略語
IFPMA:International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations
PMDA :Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
MQS :Manufacturing, Quality Control and Supply(製造、品質管理と供給)・・・ APACの造語
aUHC :Asian-Universal Healthcare Coverage(アジアの国民皆医療保険制度)・・・ APACの造語
別紙:第14回APAC合意事項骨子
規制・許認可(Regulations and Approvals;RA)
リライアンス審査を促進する取り組み ~予測性と透明性の観点から~
- WHOが推進するリライアンスの理解の下、審査の予測性と透明性に対する申請者側からの期待やアジア規制当局が実施しているベストプラクティスを共有した。
- 申請者と審査側で、リライアンス制度利用時の審査の予測性と透明性に関する重要点(プロセスの明確化、コミュニケーションと相互理解、申請資料の一致性、WHOやPMDAによる支援、等)について共通理解を高めた。
- 審査の予測性と透明性の観点からも、リライアンス制度の重要性を認識した。
創薬連携(Drug Discovery Alliances;DA)
日本とアジアにおけるマイクロバイオーム研究の現状と創薬応用
- 創薬研究の新モダリティとして注目されているマイクロバイオーム研究の現状を確認し、創薬応用への可能性を考える。
- マイクロバイオーム研究を創薬で活用する場合の産学官連携の在り方についての知見を得る。
- 新モダリティであるマイクロバイオーム創薬を通じて、従来とは異なる視点での規制策定やガイドライン作成のアプローチ方法を考える。
添付文書の電子化(e-labeling)
E-labeling取組みを患者さんのために更に加速
~デジタルヘルスプラットフォームとの相互運用性、ヘルスケアエコシステムとしての活用~
- APAC地域のe-labelingの実装をより多くの製品、より多くの市場で加速させる。
- APAC地域においてもe-labelingの構造化に際して、FHIRの導入を検討し、FHIR e-labelingとデジタルヘルスプラットフォームとの相互運用性を確保し、活用していくため議論を進めていく。
- APAC地域の患者さんにe-labelingとして医薬品情報の提供を推進していく。そして、ヘルスエコシステムの一部として活用するため議論を進めていく。
製造、品質管理と供給(Manufacturing, Quality Control and Supply;MQS)
GMP調査のリライアンス
- GMP調査のリライアンスの推進は、重複調査を避け、リスクに基づくリソース配分の適正化に繋げることにより、当局・企業双方にリソースを生み出し、イノベーションの実現をサポートする。
- GMP調査のリライアンスを推進するには、コミュニケーション、トレーニング、アセスメントを通じた当局間の相互理解と信頼関係の構築が不可欠である。このプロセスにより、各国のGMPレベルが高い水準で維持されることが期待される。
- GMP調査のリライアンスの実現は、最小限のリソースと時間でGMP評価を行い、早期承認に寄与する。これにより、患者さんに高品質な医薬品を早期に提供することが可能になる。
アジアのUniversal Health Coverage(aUHC)の構築
アジアにおける真のUHCの実現
- HTA (Health Technology Assessment) の活用: アジア各国におけるHTA導入状況の差異、共通課題を認識し、公正な薬価設定、医療資源の効率的な配分、新薬へのアクセス向上につながることを意識する重要性を認識した。
- 民間医療保険の役割: 高齢化、新薬・医療技術の進歩に伴う医療費高騰への対応策としての活用が考えられる。ただ、公平な医療アクセス確保に向けた民間医療保険の役割と責任を明確にすることが重要になる。
- 基金設立: 革新的医薬品へのアクセスにおける財政的障害を克服するための基金設立の目的と意義を明確にする。基金の運営体制、資金調達方法、対象となる医薬品・医療技術の選定基準について台湾の事例を参考に、他のアジア諸国における基金設立の可能性と課題を議論した。
以上