トピックス 「ICH福岡会合」開催される

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医薬品規制調和国際会議(ICH)の会合が、2024年6月1日~5日の日程で、福岡にて開催されました。ICHの会合は、欧州・米州・アジアと開催地を循環させていますが、今回は2018年6月のICH神戸会合以来6年ぶりの日本開催となりました。

総会全体写真 総会全体写真

本会合では、全ICHメンバーが参画する総会に加え、総会で議論される内容の準備やICHの運営等を検討する管理委員会等が行われました。また、13の専門家作業部会(ワーキンググループ)も同期間に並行して開催され、ICHの技術的ガイドラインについての検討や具体的なガイドライン文書の進捗が図られました。年2回開催されるICH会合は、現地参加を原則として開催されています。

福岡会合の参加団体の内訳は、創設メンバーである日米EUの産官6団体※1、常任メンバー2団体(ヘルスカナダ、スイスメディック)、メンバー15団体※2、常任オブザーバー2団体※3、オブザーバー17団体でした。福岡会合には、世界各国から500名以上が参集し、製薬協からも作業部会の専門家を含め35名が現地参加しました。

以下に、福岡会合のICH管理委員会、ICH総会を踏まえた特記事項を記載します。

  • 1
    米国食品医薬品局(FDA)、欧州委員会/欧州医薬品庁(EC/EMA)、厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(MHLW/PMDA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、日本製薬工業協会(JPMA)
  • 2
    ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)、アルゼンチン医薬品食品医療技術管理局(ANMAT)、メキシコ連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)、エジプト当局(EDA)、シンガポール保健科学庁(HAS)、ヨルダン食品医薬品局(JFDA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)、サウジアラビア食品医薬品庁(SFDA)、台湾食品薬物管理署(TFDA)、トルコ医薬品医療機器庁(TITCK)、バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)、世界セルフケア連盟(GSCF)、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会(IGBA)
  • 3
    国際製薬団体連合会(IFPMA)、世界保健機関(WHO)

1. 新規メンバー、オブザーバー

新規ICHメンバーへの昇格を申請したのは、アルゼンチン当局(アルゼンチン医薬品食品医療技術管理局、ANMAT)およびヨルダン当局(ヨルダン食品医薬品局、JFDA)の2団体で、いずれについてもICH総会にて承認され、ICHメンバーへの加盟が認められました。なお、今回新規ICHオブザーバーへの参加申請はありませんでした。

この結果、ICHメンバーは23団体、オブザーバーは35団体となり、ICHは58団体の組織体制となりました(末尾の参考資料参照)。

2. ICH技術トピックの動向

会合をもったワーキンググループ

福岡会合では、全13トピックのワーキンググループが参集しました。各ワーキンググループは、4日間あるいは5日間にわたり集中的に議論し、ガイドライン作成の進捗が図られました。
 

Q1/Q5C EWG:「医薬品の安定性試験ガイドライン」の改定
Q2(R2)/Q14 IWG:「分析法バリデーション」の改定および「分析法の開発」
Q3E EWG:医薬品および生物製剤の抽出物および溶出物の評価と管理
Q5A(R2)IWG:「バイオ医薬品の品質:ウィルスバリデーション」の改定
Q6(R1)Informal WG:「医薬品の規格及び試験方法の設定」の改定
Q9(R1)IWG:「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」の改定
E6(R3)EWG:「医薬品の臨床試験の実施の基準」の改定
E20 EWG:アダプティブ臨床試験
E21 EWG:臨床試験への妊婦・授乳婦の組み入れ
M4Q(R2)EWG:「コモン・テクニカル・ドキュメント —品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン」の改定
M11 EWG:電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書
M13 EWG:即放性経口固形製剤の生物学的同等性試験
M15 EWG:Model-Informed Drug Developmentに関する一般原則

重要なマイルストンを迎えたトピック

福岡会合期間中に、ステップ移行を迎えたトピックはありませんでしたが、2023年11月のICHプラハ会合以降の半年間で、下記のトピックがICHにおける重要なマイルストンを迎えました。
 

M12:薬物相互作用試験(2024年5月 Step 4到達)
M14:安全性評価においてリアルワールドデータ(RWD)を活用する薬剤疫学調査の計画・デザインに関する一般原則(案)(2024年5月 Step 2到達)
E2D(R1):承認後の安全性情報:個別症例安全性報告の取り扱いおよび報告のための定義と基準(案)(2024年2月 Step 2到達)

※Step 2到達とは、技術文書をベースにしたガイドライン案が総会の規制当局代表者により承認され、今後各地域・国の規制当局によってパブリック・コメントを実施していくStep 3に移行することを意味します。またStep 4到達とは、ガイドライン案が総会の規制当局代表者によって最終的に合意、採択され英語版ガイドラインが確定したことを意味します。今後各地域・国の規制当局における実装プロセスに入ります。

3. ICH管理委員会メンバーの選挙

ICH管理委員会は、創設メンバー(規制当局3、産業界3)、常任メンバー(規制当局2)、常任オブザーバー(WHO、IFPMA)、選出メンバー(規制当局4、産業界2)で構成されています。このうち、選出メンバーは3年ごとに改選されることとなっており、今回その選挙が行われました。選挙の結果、下記団体が選出管理委員会メンバーとして選定されました。
 

規制当局: ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)、サウジアラビア食品医薬品庁(SFDA)
産業界: バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会(IGBA)

4. 新規トピックの採択

今後ガイドライン作成を行う新規トピックとして、以下のトピックが採択されました。なお、具体的な活動開始時期は今後検討されることとなっています。
 

ICH M7ガイドライン補遺「ニトロソアミン不純物のリスク評価および管理」

5. ICHリフレクションペーパーの採択

福岡会合では、「医薬品の有効性に焦点を当てたリアルワールドエビデンス(RWE)の用語の国際的調和およびRWDを用いた試験の計画と報告に関する一般原則の統合」のリフレクションペーパーの修正版が確認され、ICH総会で採択されました。

6. 次回ICH会合

2024年11月2日~6日の日程で、モントリオール(カナダ)で開催予定です。

なおICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるようにしています。今回のICH福岡会合の成果や各トピックのコンセプトペーパー、作業計画等はICHウェブサイト(https://www.ich.org/ )よりご覧いただけます。

【参考資料:ICHメンバー、オブザーバー一覧(2024年6月現在)】

表1 メンバー(23団体)
表1 メンバー(23団体)
  ※水色網掛け箇所、ICH福岡会合で追加

表2 オブザーバー(35団体)
表2 オブザーバー(35団体)
 

(国際規制調整部長 加藤 真理子

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