トピックス 「2024年度 医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」を開催
2024年4月25日に日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)にて「2024年度 医薬品評価委員会・薬事委員会合同総会」を開催しました。本合同総会はハイブリッド形式で開催し、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)からの講師による特別講演を行いました。製薬協幹部、医薬品評価委員会および薬事委員会の幹部約70名は会場にて、その他各委員会メンバーはオンラインでの参加となりました。
合同総会は製薬協薬事委員会の柏谷祐司委員長の開会の辞で始まりました。特別講演では、厚生労働省から大臣官房審議官の吉田易範氏、医薬局の中井清人氏、高江慎一氏、野村由美子氏、佐藤大作氏、PMDAから田宮憲一氏の計6名が登壇し、昨今の医薬行政の動向やドラッグ・ロス等の課題への対応、企業への期待、PMDA業務の新たな展開について、共有がありました。
最近の医薬行政の動向
厚生労働省 大臣官房審議官 吉田 易範 氏
まず、医薬関連行政の最近の動きとして、医療デジタルトランスフォーメーション(DX)により実現される社会について話がありました。その後、次世代医療基盤法改正の概要として、医療DXに関する仮名加工医療情報の利活用や、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等の公的データベースとの連結、医療等情報の2次利用に関するワーキンググループの検討状況のポイントおよびそれぞれの背景と詳細について解説がありました。
また、臨床研究法等改正の趣旨と概要の説明があり、さらに医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会後の動きとして、創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会、後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会、中央社会保険医療協議会(中医協)/創薬環境整備の動きに関して、それぞれの議論のポイントと今後のスケジュールを共有しました。
最後に、医薬品医療機器等法(薬機法)改正の4つの主な検討テーマについて、ドラッグ・ロスおよび供給不足等の医薬品等へのアクセスの課題を解消するために、安全かつ迅速な承認制度の確立が必要であること等の説明がありました。今後、テーマごとに検討し、2024年7月をめどに議論が整理される予定であることが報告されました。
新薬審査を巡る最近の話題 —ドラッグロス対応など—
厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課 課長 中井 清人 氏
近年話題となっているドラッグ・ラグ/ロスへの対応に関して、以下の8つの事項それぞれの検討内容と、対応の方向性等について説明がありました。
(1) | オーファンドラッグ指定 |
(2) | 小児適用の開発 |
(3) | 国際共同治験に参加するための日本人P1試験 |
(4) | 医薬品の製造方法等の審査のあり方 |
(5) | 医薬品規制の国際調査と情報発信 |
(6) | 検証的試験等における日本人データの必要性の整理および迅速な承認制度のあり方 |
(7) | 製造販売後に実施する使用成績調査等のあり方およびリアルワールドデータ(RWD)の活用のあり方 |
(8) | 治験のさらなる効率化(治験エコシステム) |
最後に、地域・国別の世界の医療用医薬品の販売額の推移における日本の位置づけが共有され、国民の保健衛生の向上を目指すとともに、ドラッグ・ロス対策を行うことを述べました。
プログラム医療機器(SaMD)を巡る動向
厚生労働省 医薬局 医療機器審査管理課 課長 高江 慎一 氏
最初にプログラム医療機器の製造販売承認申請の選択肢について説明があり、具体的な開発促進のための制度が紹介されました。プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施等に関する検討内容の共有後、プログラム医療機器の審査に関する主な相談についての説明および相談の活用依頼がありました。その後、プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略2(DASH for SaMD 2)に関する詳細な説明があり、最後に話題提供として「生成AI」に関する自民党内および厚生労働省内での検討状況について紹介しました。
医薬品安全対策業務の展望と企業に期待するもの
厚生労働省 医薬局 医薬安全対策課 課長 野村 由美子 氏
はじめに、安全対策措置とそれに至るまでの検討について説明があり、改めて、安全対策に向けた情報の評価と対策は、迅速な対応と頻度評価等に基づき実施する2種類のモードで動かす必要がある点を強調しました。また、厚生労働省とPMDAで行った、市販後安全対策へのデータベース(DB)等のRWDを活用し、電子化された添付文書による利用現場への情報提供充実の取り組み促進に関する検討についても、具体的な活用事例とともに紹介しました。
さらに、患者向け医薬品情報提供の充実について、すでに取り組みが進められている標準化バーコード表示によるトレーサビリティの向上、および電子処方箋導入による情報拡充について説明し、現時点のロードマップイメージとともに、製販業者への各種ノウハウの共有依頼がありました。最後に今後の医薬品安全監視の計画について、ICH E2Eガイドラインの概要を参考に、日本での今後の課題について共有しました。
監視指導業務の展望と企業に期待するもの
厚生労働省 医薬局 監視指導・麻薬対策課 課長 佐藤 大作 氏
2021(令和3)年以降の医薬品製造業者等に対する行政処分について、いくつかの事例の概要と行政処分の紹介がありました。その後、2021年8月1日施行の薬機法改正(法令順守体制)の背景について、近年の許可業者による薬機法違反事例の原因分析と法令順守に向けた課題の説明があり、改めて法令順守体制の整備に関するポイントを整理し、その対応依頼がありました。
さらに、医薬品産業を担う企業としてのマインドセット(3つの「お」:オネスト、オープン、お客さん目線)について紹介し、今後も世界に胸を張れる企業のコンプライアンス・ガバナンス・GMPレベルで医薬品供給を続けるために、人材育成がなによりも重要であることが共有されました。また、販売情報提供活動に関するガイドラインに関して、特に気をつける事項について解説し、最後は医薬品・医療機器制度部会での議論への対応状況についての説明がありました。
第5期中期計画におけるPMDA業務の新たな展開について
~新薬審査業務を中心に~
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 執行役員 田宮 憲一 氏
最初に、PMDAは設立から20周年を迎え、1000人を超える体制で新たなステージへスタートを切り、全役職員一人ひとりが「健やかに生きる世界を、ともに、明日へつなぐ」(PMDAパーパス)と向き合い、業務に取り組むことを強調しました。
その後、第5期中期計画(2024~2028年度)の目指す方向性として、レギュラトリーサイエンスの観点からの実用化推進に対する積極的貢献、国際的な貢献・提案能力の強化、業務の質の向上やいっそうの効率化について説明がありました。さらに2024年度に新たに取り組む事項・重点的に取り組む事項として、「イノベーションに的確に対応した相談および審査の実施」「患者ニーズの高い医薬品について実用化の支援」「海外開発先行の革新的医薬品について日本での開発・導入に着手しやすくなる環境の整備と情報発信の強化(ドラッグ・ロス対策)」「国内治験の支援およびリアルワールドデータ等への適切な対応」を挙げ、具体的な計画について報告しました。
最後に、新たに製薬協医薬品評価委員会委員長に就任した中路茂委員長による閉会の辞をもって、約2000名が参加し2時間40分にわたった合同総会が終了しました。
(医薬品評価委員会 佐野 俊治)