From JPMA 創薬力の強化に向けて

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世界の新薬トレンドが低分子に加えて新規モダリティへと多様化する中、日本発の新薬の絶対数は低下傾向で、新薬創出の相対的地位はランクダウンしています。従来からの日本の強みである低分子の創薬力を維持しつつ、新規モダリティの創薬力を早急に強化することが必要です。新規モダリティの創薬では、革新的新薬のシーズや突出した知識・技術を持つアカデミアやスタートアップ、臨床試験や製造等を支える医薬品開発業務受託機関(CRO)や医薬品製造受託機関(CMO)等、さまざまな国内外のプレーヤーが集結することが重要です。多様な技術や知識、ヒト・モノ・カネが有機的に結び付き、いわば生態系(エコシステム)を形成して革新的新薬を創出し患者さんにお届けする環境、「創薬エコシステム」の構築が不可欠です。私たちは、関係諸官庁や各種関係団体と連携しつつ、この創薬エコシステムの構築に向けた取り組みを進めていかなくてはなりません。

2024年度薬価制度改革では、業界を挙げた取り組みの結果として、医薬品のイノベーションを評価する薬価上の措置が講じられました。一方、2021年度から継続している薬価の中間年改定は、イノベーション創出や安定供給確保に向けたこれらの活動を著しく阻害し、医療の質の低下を招きかねないことからも見直しが必要であり、行政やステークホルダーと議論してまいります。また、一部の新薬の価格調整に用いられている費用対効果評価制度について、その対象を拡大することにも、イノベーションの価値を大きく損なう恐れがあるため、反対してまいります。

日本製薬工業協会 会長 上野 裕明 日本製薬工業協会
会長 上野 裕明

日本にイノベーションの土壌が根付き、国民の健康寿命の延伸や経済活動の活性化につながるためには、革新的新薬を創出する環境と、そのイノベーションが薬価で適切に評価される仕組みが大切です。新薬が間断なく生み出され、患者さんに届けられること。新薬創出のための投資が早期に回収され、さらなる創薬に向けた再投資に充てられること。日本市場の魅力が向上し、海外で生み出された新薬も迅速に導入されること。これらが好循環を形成する環境こそが、創薬国として我が国が目指すエコシステムの姿であると私は考えています。

(「日本薬剤師会雑誌」より)

日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)

製薬協は、研究開発志向型の製薬会社が加盟する任意団体です。1968年の創立以来、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献し続けています。

製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会

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