Topics|トピックス 「2022年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」を開催

印刷用PDF

製薬協コード・コンプライアンス推進委員会は、2023年3月2日、「2022年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」を、2021年度と同様にオンライン形式にて開催しました。会員会社71社から、コンプライアンス管理責任者とコンプライアンス実務担当者を含む245名が出席し、表1のプログラムにしたがって実施されました。以下、本会の概要を報告します。

表1 「2022年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」プログラム
表1 「2022年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」プログラム

開会挨拶

会の開催に先立ち、製薬協コード・コンプライアンス推進委員会の田中聡委員長は、2022年度の本委員会の基本方針「コード・コンプライアンス推進委員会は、会員会社が関連法令はもとより製薬協コード・オブ・プラクティスをはじめとする自主規範を遵守し、生命関連産業の一員として高い倫理観を持って社会的責任を果たすことを支援する」、および4つの重点課題について、その概要を紹介しました。
 

<2022年度 重点課題>
会員会社のコンプライアンス推進の支援
透明性ガイドラインに基づく適切な情報公開の推進
「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」への対応
行政および日本製薬団体連合会(日薬連)、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(公取協)、国際製薬団体連合会(IFPMA)等の国内外の関係団体との連携、情報の収集・発信およびフィードバック

製薬協 コード・コンプライアンス
推進委員会 田中 聡 委員長

最後に、本日の特別講演では会員各社においても喫緊の課題であり、リクエストの多かった「SNSのコンプライアンスリスク」を採り上げたことが紹介され、エルテスリスクモニタリング部部長の國松諒氏に講演のお礼が述べられました。また、聴講者に対して、本日の講演にてなにかしらの気づきを自社にもち帰り、潜在するリスクに適切な対応が行われることを期待する旨が述べられました。

「製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン」の改定状況について

製薬協 コード・コンプライアンス推進委員会 山野 俊之 実務委員長                     

最初に、「製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン」は「法令遵守の徹底」を目的として設置されていることが説明され、「製薬協企業行動憲章」と「製薬協コード・オブ・プラクティス」との関係性について説明されました。

続いて今回のガイドライン改定における3つのポイントが説明されました。
 

1. 2018年以降の法令類、その他規範の改定やそれに伴う社会環境の変化を反映し「第1章」「第2章」において追記修正を行ったこと。
2. 参照法令の項目においては新しい法令等を追記するとともに、略称を用いた記載方法に変更し、「参照法令とその略称の一覧表」を新規作成し追加したこと。
3. 参照社外基準の項目においては追記・名称変更に対応するとともに、名称と出所の記載方法に変更し、わかりやすいように工夫をしたこと。

最後に、「各企業は本ガイドラインを参考にして、自社および自社グループ会社の行動規範やコンプライアンス関連規則を定期的に点検し、必要に応じて改定すること。また、業容や業態に即してコンテンツを改善する等してコンプライアンス推進のための取り組みを継続的に実践してください」と締めくくりました。

国際製薬団体連合会(IFPMA)エシックス&ビジネスインテグリティーコミッティー(eBIC)における最新ディスカッション

製薬協 コード・コンプライアンス推進委員会 松村 豪 実務委員                       

エシックス&ビジネスインテグリティーコミッティー(eBIC)における5つのワーキンググループ(ESG、MLO Outreach、Innovation enabling、Responsible Engagement with Stakeholders、Code Capacity)の紹介が行われ、IFPMAにはコード・オブ・プラクティスという基準があり、法的な拘束力はないものの会員会社および会員団体は遵守することが期待されていると解説がありました。続いてIFPMAが公開しているガイダンスについて紹介がありました。

最後に、意思決定のためのフレームワークは「ビジネス判断を下す際に、エシックスおよびコンプライアンスの観点からなにをどのような順番で判断すればいいのか」を記したものであり、このようなフレームワークをもっていない場合はIFPMAのウェブサイトから入手可能であるので、ぜひ参考にしていただきたいと締めくくりました。

■特別講演

SNS利用により発生しうるコンプライアンスリスクとその対応

エルテス リスクモニタリング部 部長 國松 諒 氏                            

最初に、コンプライアンスとSNSについて、SNSの登場により、コンプライアンスに変化が生じてきているという話がありました。SNSにより、多様なユーザーが多様な価値観に触れるようになり、常識自体が人によって異なる社会規範の変化の加速や、誰もが情報を発信できるようになったため、コンプライアンス違反が目立つようになったと説明がありました。

続いてSNSの基礎知識として、「SNSユーザーと特徴」「SNS利用人口」について解説がありました。SNS炎上のメカニズムとして、「炎上」とは「オフライン・オンラインの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し拡散している状態」と定義され、発生から炎上、大炎上までの流れと発生主体については、すべての企業、個人において起こり得るものです。

SNSによる被害について、企業では「取引関係の悪化」「レピュテーション低下」「風評被害の発生」等、個人では「懲戒解雇」「プライバシーの侵害」「誹謗中傷」等があると紹介しました。

事例紹介では「製薬業界特有のSNSリスク」として、「疾患啓発等を目的として公式SNSを活用する事例が増加している。ユーザーからの書き込みで有害事象に関するコメントが含まれる場合があり、気づかずに放置されるリスクがある」と解説しました。

最後に、「SNS利用者はもちろん、まったく利用していない人も決して無関係ではないことを認識していただきたい。便利なツールである一方で、使い方を誤るとコンプライアンス違反につながる。SNSが関係した社会の動き・変化によりいっそう関心をもっていただくと、リスクの重要度判断を行いやすくなる」と締めくくりました。

閉会挨拶

製薬協の石田佳之常務理事は、コンプライアンス管理責任者・コンプライアンス実務担当者の本会への参加に対して謝意を表すとともに、特別講演演者の國松氏に謝辞を述べました。

「われわれのテーマを一言で考えると、「拡大、変化するコンプライアンスの対象範囲」になると思います。今までは業績拡大等オフェンシブ(offensive)なことが企業内で重視されてきましたが、昨今ではコンプライアンスの内容は奥深くなり、環境や人権を含んだディフェンシブ(defensive)な機能として浸透させて、適切にリスク管理がなされることが重要と考えます。オフェンシブ(offensive)とディフェンシブ(defensive)のバランスが取られた企業運営を進めていただければと思います」と述べました。

最後に、コンプライアンスの世界の広がりの大きさについて言及し、「今までのコンプライアンスの範囲が、デジタルやテクノロジーに及び、本日のご講演にあったSNSだけでなく、企業が内部で活用するAIの信用性はどうなのか、国内のみならずグローバルにどのように考えるかの目線が求められています。製薬協もこの広がりを注視しながら、コード・コンプライアンス推進委員会を運営してまいりますので、製薬協へのフィードバックを賜りたく、ご協力をよろしくお願い申し上げます」とのメッセージで締めくくりました。

製薬協 石田 佳之 常務理事

(コード・コンプライアンス推進委員会 実務委員 西村 貞洋

このページをシェア

TOP