トピックス 「第3回 日本-ベトナム合同シンポジウム」開催される

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2022年11月29日に、「第3回 日本-ベトナム合同シンポジウム」が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)およびベトナム医薬品管理局(DAV)主催で開催されました。製薬協およびベトナム日本医薬品同盟(JPAV)が協賛団体として運営に協力しました。本シンポジウムは両国の薬事の相互理解を深め、医薬品規制のより良い発展を目指すことを目的としています。2年ぶりの開催となった今回は、規制当局による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応、医薬品審査システムのデジタル化、アジアにおいて患者さんのニーズに応える製品を提供するための国際連携の3つのテーマで、両当局から講演がありました。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

はじめに

本シンポジウムは、2020年12月の第2回に続きオンライン形式の開催となりました。参加総数137名のうちベトナム語視聴数が4割弱あり、ベトナムからの関心の高さもうかがえました。

はじめに、PMDA国際部部長の佐藤淳子氏とDAV法務・査察部門次長のVu Thi Hiep氏による開会の挨拶がありました。佐藤氏からは、COVID-19の影響もあり開催ができない時期もあったが、今回第3回を開催できたことの喜びと感謝が、Vu Thi Hiep氏からは、これまでの日本からの協力への感謝と、本シンポジウムをきっかけに両国の協力事業をますます強化し、ベトナム国民が迅速にさまざまな医薬品にアクセスできるようになることへの期待が述べられました。

1. 規制当局によるCOVID-19への対応

日本側はPMDA国際部アジア第一課主任専門員の土井昌彦氏より、規制の柔軟性、安全対策、緊急承認制度の創設等、日本でCOVID-19関連の製品評価を最優先する対応と、国際的な活動として、各国と情報共有や課題解決に向けた経験・方策を参照する等の国際協働が紹介されました。

ベトナム側からはDAV医薬品事業管理部門次長のNguyen Thi Minh Hoai氏より、これまで実施したCOVID-19の予防・制御と今後の対策が紹介されました。ワクチンと治療薬のアクセス強化を目的に、ワクチンの条件付き緊急承認制度導入や、輸入許可を受けた原薬のほかの目的の医薬品製造への転用を認めています。またワクチン、医薬品および医薬品成分輸入許可の事務手続きを短縮することにより、ベトナム保健省は9種類のワクチンと20種類以上の治療薬を条件付きで承認してきました。今後の対策としては、薬事法を改正し、行政手続きの改革を検討しています。感染症予防ワクチンおよび医薬品の輸入許可に特例スキームを適用することも、引き続き検討します。COVID-19治療薬の生産、技術移転の促進、新世代ワクチンや生物学的製剤に早期アクセスするメカニズムや政策の完成、医薬品、ワクチン、生物学的製剤の研究分野における国際協力の推進をはかり、感染症拡大予防ワクチンおよび医薬品の早期入手のための外交を推進することを目指しています。

2. 医薬品審査システムのデジタル化

日本側からはPMDA国際部アジア第二課調整専門員の竹村優利子氏より、日本の承認申請におけるデジタル化について講演があり、日本の新薬審査システムの流れとともに電子申請システムの紹介がありました。電子申請導入による利便性の向上、審査の効率化という効果のみでなく、電子申請に移行するための取り組みも紹介されました。パイロットスタディ、ガイダンス発出やワークショップ、相談システムの構築等、PMDAは利用者と情報共有および協力することで、申請企業と規制当局の双方に有効なシステムの開発を目指してきました。さらに、蓄積されたデータを活用した将来に向けてのアイデアも紹介されました。

ベトナム側からはDAV医薬品登録部門次長のLe Xuan Hoanh氏より、DAVの審査システムのデジタル化とそのマイルストーンが紹介されました。ベトナムは2019年に医薬品登録申請資料オンライン提出への移行を開始しました。すでに登録更新、新規登録申請はオンライン提出に対応しており、変更申請は2023年1月の導入を予定しています。以降、完全オンライン審査、処理への移行を予定しているものの、1ファイル25MBまでというインフラ上の制約があり、臨床データ等大容量の申請書類については一部紙媒体による受け入れも続きます。将来的にはAIの導入も検討しており、申請書類受領後の書類確認および書類審査前の1次審査の高速化が期待されます。実現に向けて、インフラの整備も必要と考えています。

3. アジアにおいて患者さんのニーズに応える製品を提供するための国際連携

日本側からはPMDA国際部部長の佐藤氏より、アジアを中心としたPMDAの国際協力活動が紹介されました。アジアトレーニングセンターの活動を通したアジア各国規制当局との連携、アジアのアカデミアとの連携等に加え、日本の審査結果を活用した審査をするアジアのいくつかの規制当局とのリライアンスの取り組みも紹介がありました。日本の新医薬品の市販後安全性対策および再審査制度の説明の中で、ベトナムのような再登録制度は採用していないことに触れ、これらの制度には一長一短あり、各国の制度を踏まえ、より良い制度を見出していくのが規制当局に求められる姿勢ではないか、他国と制度のコンバージェンスにより自国民の革新的医薬品への早期アクセスがかなう可能性もあると考えを述べました。

DAVからは医薬品登録部門次長のLe Xuan Hoanh氏より、2022年9月に公布された医薬品登録を規定する保健大臣通達から、迅速評価および簡略評価が紹介されました。この通達は以前と比べ手続きの簡素化が図られています。迅速評価および簡略評価に関しては、適用範囲が広がっており、たとえば以前は新規申請の一般評価で審査されていた製造所変更は、迅速評価が適用されるようになりました。迅速評価および簡略評価では、品質資料の一部簡略化や審査期間の短縮が適用されます。今後の方向性として、リライアンスの導入に向け、薬事法の見直しが検討されており、順調に進めば2025年には新しい薬事法が有効になる予定です。

最後に

本シンポジウムではテーマごとにQ&Aセッションが設置され、視聴者からのテキストメッセージによる質問に対し、両当局が回答しました。DAVからもPMDAに質問が投げかけられ、相手側当局の取り組みへの関心と、リライアンスへの大きな期待が見られました。

閉会にあたり、DAV法務・査察部門次長のVu Thi Hiep氏から、今後のPMDAとの協力事業について、実質的なテーマでの定期的な両当局会合、新薬や希少疾病用医薬品の審査報告書を共有するための基本合意書(MOU)締結等、6つの提案が出されました。PMDA国際部部長の佐藤氏はこれに対し、今後この6つの提案についての具体的な話し合いをしていきたいと述べました。

両国当局の連携がますます強化されることは、産業界にとっても大変頼もしいことです。今後も医薬品の早期アクセスに向けた日本-ベトナム両国の官民プラットフォームとしてシンポジウムが継続開催され、両国の理解と協力が深まることを期待します。

(国際委員会 アジア部会 ベトナムチーム リーダー 東山 昌代

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