トピックス 「欧州製薬団体連合会(EFPIA)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(Leem)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。今般、EFPIAとの定期会合が2022年11月25日に対面とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。EFPIAとは年2回の定期会合を開催しており、今回は2022年度2回目の開催となりました。双方合わせて30名近くが参加し、活発な意見交換が行われました。会合の概要を以下の通り報告します。

会合の様子 会合の様子

■Opening Remarks

Executive Director, International Affairs, EFPIA Koen Berden
製薬協 国際委員会 伊藤 達哉 委員長                                                 

冒頭に、EFPIAのInternational AffairsのExecutive DirectorであるKoen Berden氏の挨拶があり、数年前から始まったこの会合において各国の動向について確認し議論することの意義深さが述べられました。製薬協国際委員会の伊藤達哉委員長からは、久しぶりの対面の開催を喜び、その良さを改めて噛みしめる1週間のツアーであったこと、本会合の引き続きの議論への期待が述べられました。

■Revision of the EU pharmaceutical legislation

Director General, EFPIA Nathalie Moll 氏                                             

このセッションでは、欧州連合(EU)における医薬品規制の機会とリスクに関して、「知的財産の重要性」「規制の枠組み」「アクセスの強化」の3つをテーマに説明がありました。また、医薬品アクセスの問題点に対するEFPIAの取り組みとして、「the European Access Portal」「a shared Equity Based Tiered Pricing」について紹介がありました。

■Pricing reform debate and the future of the healthcare system

製薬協 産業政策委員会 産業振興部会 草開 義隆 部会長                                         

このセッションでは、日本における「製薬産業を巡る現状と課題認識」「骨太方針2022と製薬産業へのインパクト」「厚生労働省有識者検討会における議論、2023年度薬価改定、今後の制度改革に向けての状況」について情報を共有しました。ディスカッションでは、有識者検討会や中央社会保険医療協議会(中医協)への業界としての対応について質問がなされ、製薬協から回答を行いました。

■Patient Engagement

Senior Manager Strategic Partnerships, Healthcare Systems, EFPIA Oana Scarlatescu
製薬協 患者団体連携推進委員会 三澤 賢治 委員長                                            

このセッションでは、EFPIAから患者エンゲージメントに関するEFPIAの構想や取り組みについて紹介がありました。患者団体と業界団体とが意見交換をする場として設立された患者シンクタンクでは、患者さんと製薬業界にとって重要なトピックについてアイディアを交わし、信頼構築がなされていることや、業界と患者団体のコラボレーション・プロジェクトの表彰制度を設けたこと、これまでのさまざまな連携プロジェクトを通じ、患者さんが製薬業界をより理解し、革新的な方法で協力し合いたいというニーズが明らかとなり、実際にシミュレーション・モデルを用いた活動が導入され始めていることについて説明がありました。

製薬協からは、製薬協の患者団体連携推進委員会の組織概要と最近の取り組み、2022年5月に改訂した患者団体との協働と透明性に関する2つのガイドラインについて紹介しました。患者参加型医療の実現に向けた課題の共有・解決のために、アドバイザリーボードを設置した経緯や、具体的な活動例として患者団体セミナーや患者団体アンケートの実施、ほかの委員会との連携について共有しました。またガイドラインについては、策定の背景を含め、今回の改正点を紹介しました。

ディスカッションでは、製薬協からは、EFPIAによるシミュレーション・モデル立ち上げの目的と期待する成果や、さまざまな国からメンバーが参加するEFPIAにおける意見交換の方法について質問を投げかけ、EFPIAから具体的な回答がありました。EFPIAからは、患者参加型医療に関する具体的な実践方法や、あらゆるステークホルダーへのアプローチの中で、患者さんにいかに参画してもらうかについて質問があり、製薬協から回答を行いました。

■G7 Summit Hiroshima in 2023

製薬協 国際委員会 伊藤 達哉 委員長                                                 

このセッションでは、G7広島サミット2023の保健アジェンダに関する製薬協と国際製薬団体連合会(IFPMA)の共同提言書について紹介がありました。提言書は、医薬品に係るイノベーション創出やアクセスをさらに促進し、かつ有事の事態においても維持するために、「より強靭・公平・持続可能な保健システム」および「イノベーションへの持続可能な投資」の実現に向けて、「持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現」「次なるパンデミックへの備え」「薬剤耐性(AMR)への対処」の3つを骨子としているとの紹介がありました。

■Digitization in Health

製薬協 産業政策委員会 イノベーション推進部会 安中 良輔 委員小林 典弘 委員
Senior Manager Digital and Data, EFPIA Aneta Tyskiewicz 氏                                    

このセッションでは、製薬協から日本におけるヘルスデータ利活用の促進に向けた課題や、政府、製薬協の取り組み等の紹介を行いました。日本のヘルスデータの電子化の状況、製薬企業が利用可能なヘルスデータ、骨太方針2022に基づく政府の医療デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関する取り組み、製薬協による政府への政策提言等について、詳細な説明が行われました。また、EFPIAからは、2022年5月に公表された欧州のヘルスデータ基盤構築と利活用に関する仕組みである欧州保健データスペース(European Health Data Space、EHDS)の動向や、EHDS運用に向けたEFPIAの取り組み等について紹介がされました。ディスカッションでは、製薬協からEHDSのデータ利用の見通しについて質問を行いました。EFPIAからは、2024年の施行後、まずは医療での1次利用のインフラ構築が優先され、製薬企業等の2次利用の環境整備は時間がかかる見通しである旨の回答がありました。

■Update on pandemic preparedness and the Russia-Ukraine conflict

Executive Director International Affairs, EFPIA Koen Berden
製薬協 産業政策委員会 総合政策部会 感染症対策推進WG/国際委員会 欧米部会 粟村 眞一朗 委員                      

このセッションでは、「第12回 世界貿易機関(WTO)閣僚会議」(MC12)において合意された、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬やワクチン等の技術の使用に関する知的財産に関して取り決めた多国間条約であるTRIPS waiverと、その拡大に対する懸念に対し、IFPMA等の団体との協力体制を敷きながら取り組んでいる内容が紹介されました。また、ウクライナとロシアの紛争に関しては、EFPIAがメンバーとともに、人道的な対応、救済方法、寄付等を推し進めている点や、サプライチェーン、経済制裁、エネルギー価格高騰等の課題がある中、製薬産業の優先づけをEUレベル、EU加盟国レベルで行っていることが紹介されました。

最後に、製薬協より日本の将来のパンデミックに対する対策として、2021年6月に閣議決定され、現在、各種取り組みが進められているワクチン開発・生産体制強化戦略の概略について紹介しました。

終わりに

EFPIAのBerden氏は、盛りだくさんかつ深い協議、そして素晴らしい交流ができたことに感謝を述べました。製薬協国際委員会の伊藤委員長は、日本とEUが共有する課題について素晴らしい議論ができたと述べ、Berden氏のコメントに賛同しました。また、現在は製薬業界だけでなくほかの業界にとってもかつてない困難な時代であり、欧州と日本の間での協働を通じ、今後継続的にこれらの問題や課題の解決策を探す必要があると述べ、下記のことわざを引用して締めくくりました。

「If you want to go fast, go alone.(早く行きたいなら、ひとりで行きなさい)
If you want to go far, go together.(遠くへ行きたいなら、一緒に行きなさい)」

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ EUチーム リーダー 八尋 勇治

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