トピックス 「ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(Leem)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。今般、vfaとの定期会合が2022年11月24日に対面とオンラインのハイブリッド形式で開催され、双方合わせて約30名が参加し活発な意見交換を行いました。会合の概要を以下の通り報告します。

現地会場の様子 現地会場の様子

はじめに

冒頭、vfaのInternational AffairsのSenior ManagerであるHarald Zimmer氏の挨拶から会がスタートしました。今回3年ぶりの対面での会合開催となったことの喜びと、ディスカッションを通じて見識を深められることへの期待が述べられました。

その後のセッションでは、vfaからは公的医療保険中央連合会財政安定化法(GKV-FinStG)概況、医療技術評価(HTA)について発表がありました。

製薬協からは、2022年に発表された骨太方針の概要や業界への影響、G7広島サミット2023に向けた製薬協の取り組みについて紹介しました。

各セッションに加えPricing & Reimbursementのテーマにおいて、vfaと製薬協の双方から質疑応答が行われ、それぞれのトピックスについて意見交換を実施しました。

■Recent development of the coalition government in Germany, GKV-FinStG

Manager Health Policy, vfa Sven Prietzel 氏                                            

このセッションでは、2022年11月に成立したGKV-FinStGの詳細についてvfaから紹介があり、新薬の自由価格設定期間の短縮や、併用療法で用いる薬剤の価格引き下げ等、ドイツの医薬品アクセス環境が後退することについて強い懸念が示されました。

質疑応答のセッションでは、GKV-FinStGで定められている割引率等の今後の見通しが困難であること、ドイツも日本と同様に高齢化が進んでおり、それに伴い増大しているGKV※1の赤字が今回のGKV-FinStGの成立に影響していること等に触れられました。また、欧州連合(EU)における希少疾患医薬品のアクセス改善の方針と相反する規制に関して、高額な薬価が財政上の観点から問題になるという矛盾した状況になっているとの説明があり、前政権から蓄積されてきたさまざまな課題に直面しなければいけない状況であるとの認識が示されました。

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    GKV:疾病金庫が運営する公的医療保険

■Pricing & Reimbursement

このセッションでは、ドイツの薬価・保険償還制度についてディスカッションを行いました。製薬協から、薬局・卸における医薬品取引の現状や、世界的なインフレおよびエネルギー価格の高騰が医薬品の安定供給に与える影響等について質問し、vfaから回答がありました。またvfaからは、ドイツにおける薬価・保険償還に関する規制強化が医薬品のアクセスにどのような影響を及ぼすかについて、しっかりとモニタリングしていかなければいけないとの認識が示されました。

■Current status over the NHI drug pricing system in Japan

製薬協 産業政策委員会 産業振興部会 草開 義隆 部会長                                         

このセッションでは、日本の薬価制度をめぐる現状の紹介がありました。2018年以降、薬価が5年連続で引き下げられ、新薬のドラッグ・ラグまたはドラッグ・ロスが続いており、日本市場の競争力が低下している状況が示されました。その対策として、薬価制度の見直し、薬事規制、臨床研究環境に関するソリューション等が挙げられました。また、これらの問題を包括的に話し合う機会として、厚生労働省が新たに立ち上げた有識者検討会に対して製薬業界が期待を向けていること等が紹介されました。

質疑応答のセッションでは、vfaより医薬品の供給問題に対する日本政府の支援策や安定供給の責任の所在等について質問があり、製薬協から回答を行いました。

■G7 Summit Hiroshima in 2023

製薬協 国際委員会 伊藤 達哉 委員長                                                 

このセッションでは、2023年5月開催予定のG7広島サミット2023におけるヘルスアジェンダについて紹介がありました。提案書は製薬協と国際製薬団体連合会(IFPMA)の共同提案という形で作成されており、世界的パンデミックの中、より公正かつ持続可能なヘルスシステムと、それを支える基盤作りのためのイノベーションへの持続可能な投資が必要であることが述べられました。

ドイツは前回のG7開催国であり、日本での開催に向けたこれまでのvfaのサポートに対して製薬協から深い謝意を伝えるとともに、引き続き緊密な連携を取っていくことを改めて確認しました。

■Health Technology Assessment

Senior Market Access Manager, vfa Sebastian Werner 氏                                     

このセッションでは、実際にドイツ医療品質・効率性研究機構(IQWiG)においてHTAにかかわっていた実務者の目線から、2025年に一部の医薬品から適用が開始される欧州HTAについて、法制化の背景や基本的な情報、ドイツのポジションについて説明がありました。

この規制には、(1)欧州の患者さんに対する革新的な医療技術の利用可能性を改善、(2)リソースの効率的な使用を確保し欧州全体のHTAの質を強化、(3)事業の予測可能性の向上、という大きな3つの目標があります。しかしながら、公開された欧州医療技術評価ネットワーク(EUnetHTA)21のガイダンスは、これまでになかった作業の重複を生み出す等、当初の目的からかけ離れたものであること、さらにはガイダンスに対する業界の声が無視され続けていることに対し懸念が表明されました。とりわけ、共同科学協議(JSC)へのアクセスが制限され拒否される可能性があることに対し、致命的なエラーであるとの説明がありました。

終わりに

vfaのZimmer氏は、有益なディスカッションとなった今回の会合開催への感謝を述べ、日本の骨太方針や医薬品市場に関する課題に対する製薬協の取り組みに感銘を受けるとともに、今後の集中的なフォローが必要であることにも言及しました。製薬協国際委員会の村上伸夫副委員長は、日独が互いに厳しい状況に直面している中で、持続可能なヘルスケアシステム、業界の成長、そして患者さんの医薬品へのアクセスを堅持していくためにも、バランスの取れた提案をしていきたいと述べました。対面での議論の有用性と重要性にも触れ、今後もvfaと製薬協双方の関係を維持し、ディスカッションを継続していきたいと強調しました。

集合写真 集合写真

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ ドイツチーム リーダー 久村 崇

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