トピックス 「フランス製薬工業協会(Leem)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(Leem)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。2022年11月23日に、3年ぶりとなる対面(+オンライン)でLeemとの定期会合が開催され、活発な意見交換が行われました。以下に会合の概要を報告します。

現地会場の様子 現地会場の様子

■Opening Remarks

General Manager, Leem Philippe Lamoureux 氏                                          

冒頭、Leem会長のPhilippe Lamoureux氏より、3年ぶりに製薬協と対面で本会合を開催できたことの喜びが述べられました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がわれわれの業界にもたらしている影響が非常に大きいことから、本会合において、まずはパンデミックへの備え、そしてロシアのウクライナ侵攻が及ぼしている影響や経済的な問題、インフレ、医薬品支出の膨大といった世界各国で見られている問題を議論していくという紹介がありました。

■Preparing for next pandemic

General Manager, Leem Philippe Lamoureux 氏                                          

このセッションでは、欧州委員会が2021年9月に設置した欧州保健緊急事態準備・対応局(HERA)の設立経緯、概要について、また既存の欧州疾病予防管理センター(ECDC)を強化していくことについて説明がありました。そして、COVID-19ワクチンのTrips Waiverについて、Leemとしては反対姿勢を表明しているものの、フランス政府としては、特許権の保護、技術移転両方を支持していることもあり、交渉が難航している旨の紹介がありました。

■Future Pandemic Preparedness in Japan

製薬協 産業政策委員会 総合政策部会 感染症対策推進WG/国際委員会 欧米部会 粟村 眞一朗 委員                      

このセッションでは、COVID-19の経験を踏まえた、将来のパンデミックに対する日本の対策として、ワクチン開発・生産体制戦略を採り上げ、緊急承認制度や先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の稼働等の取り組みについて紹介しました。

■Russia and Ukraine situation;impact on supply of medical products etc.

General Manager, Leem Philippe Lamoureux 氏                                          

このセッションでは、ロシアのウクライナ侵攻におけるフランスの優先課題として、戦闘地域におけるフランス国民の安全確保、医薬品の確保、そしてインフレ対策がある旨の紹介がありました。そして、2022年4月にはインフレ対策のための緊急提言をLeemが行ったこと、具体的には、政府への納付金支払いの年あたりの負担軽減、医薬品価格の安定化、医薬品産業に対するエネルギー供給の確保について、政府と交渉を続けているとの紹介がありました。

■Current Context in France

General Manager, Leem Philippe Lamoureux 氏                                          

このセッションの冒頭では、マクロン大統領再選後のフランス政府の体制の概要が説明されました。2023年の社会保障財政法案には、0.4%の成長率を超える部分の払い戻しや8.3億ユーロに相当する薬価引き下げ等、製薬業界にとって厳しい項目が盛り込まれており、Leemはこれらの影響が医薬品売上高全体の13%に相当する約35億ユーロに上ると試算しているとのことでした。

質疑応答では、パンデミック下におけるフランス国内での医薬品調達財源が政府予算から社会保障支出に変更されることや、欧州連合(EU)での共同調達の対応について触れられました。また、フランス国内での医薬品アクセスの足かせとなっている財政問題に触れ、業界が団結し政府と交渉する必要があると述べました。

■骨太方針の議論、広島G7サミットでのIFPMA-JPMA共同宣言

製薬協 産業政策委員会 産業振興部会 草開 義隆 部会長
製薬協 国際委員会 伊藤 達哉 委員長                                                 

このセッションの冒頭では、草開部会長より日本の「骨太方針2022」の概要と薬価改定に向けた議論の状況が説明されました。日本の医薬品市場の魅力低下により未上市医薬品が増えている状況下で、医薬品アクセスと安定供給の観点からも薬価制度の改革の必要性があることが説明され、日本政府に対する製薬協のアドボカシー活動の状況を共有しました。また、セッション後半では、伊藤委員長よりG7広島サミット2023に向けた提言書の骨子と、作成状況が共有されました。

質疑応答では、フランスと日本両国の状況の共通点について触れつつ、日本の薬価改定の実施プロセスに関する質問があり、日本の医療費伸長の状況と併せて、政府方針についての回答がありました。

■Price & Reimbursement

Presidente, Takeda France Rita Cataldo
In charge of Economic Affairs, Leem Matthieu Boudon 氏                                     

このセッションでは、フランスにおける早期アクセススキームについて、early accessとcompassionate access、制度の対象となるための要件、ペイバックの仕組み、スキームの適用実績等について詳細な説明がありました。その後、2025年より開始されるEU共通HTAに対するLeemのポジションや、マーケットアクセス関連の各種改革の現状と方向性について説明がありました。

質疑応答では製薬協から、Leemとしては早期アクセススキームをどう受け止めているか、また企業にとってネガティブな要素はないのかといった点について質問があり、Leemからは企業への課徴金としてのクローバック制度に対して強い問題意識をもっていること等が述べられました。

終わりに

製薬協の中川祥子常務理事から、Leemとの定期会合は今回で28回を迎え、今後もこの歴史ある2国間の定期会合においてフランスと日本の協力関係がますます強化されることへの期待が述べられました。さらに、薬価の課題についても両国共通しており、製薬協としてもフランスの政策動向について今後も注目していきたいと述べました。また次回の会合時期としては、G7広島サミット2023後の日本での開催が提案されました。今回も相互に理解を深めることができ、各セッションにおいても活発な意見交換が行われた非常に有意義な会合となりました。

集合写真 集合写真

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ フランスチーム リーダー 溝渕 正浩

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