トピックス 「第4回 ICHフォーラム:ICH Efficacy Guideline Update」を開催

印刷用PDF

2022年12月8日、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、製薬協の共催で、「第4回 ICHフォーラム:ICH Efficacy Guideline Update」を開催しました。本フォーラムでは、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use、ICH)のEガイドライン(有効性ガイドライン)のうち、ICH E8(R1)臨床試験の一般指針、ICH E6(R3)医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)、ICH E19 A Selective Approach to Safety Data Collection in Specific Late-Stage Pre-Approval or Post-Approval Clinical Trials(安全性データ収集の最適化)に焦点をあてつつ、ICHの最新動向、今後への期待や要望について、講演とパネルディスカッションが行われました。また、ICHガイドラインの検討に功績があった専門家を表彰する「ICHアワード」について、日本から受賞された5名の方に記念品が贈呈されました。

開催要領

ICHでは、各ステークホルダーへのICHガイドライン理解促進のために、オンラインや各ICH地域でトレーニングの取り組みをサポートしています。本フォーラムも日本におけるStakeholder Engagementの取り組みの一環として、ICHの基金により厚生労働省、PMDA、製薬協の共催で開催しました。

本フォーラムは、表1に示すように午前、午後の2部構成で、午前の部でははじめにPMDA理事長の藤原康弘氏による基調講演があり、ICH Awards授賞式の後、ICHの最新動向をテーマにパネルディスカッションが行われました。午後の部では、PMDAの安藤友紀氏によるICH Eガイドラインの最新動向についての講演後、Step 4に到達したE8(R1)およびE19や、現在Step 2に向けて検討中のE6(R3)の状況が各ワーキンググループの専門家から紹介され、振り返りとして製薬協の森和彦専務理事よりEガイドライン全体に対する講演がありました。最後に、それらを受ける形でパネルディスカッションが行われました。

なお、本フォーラムは、会場であるAP浜松町(東京都港区)での現地参加とオンライン参加とのハイブリッド形式での開催とし、事前質問および現地での当日質問を受け付ける形で実施されました。講演資料はこちら(https://www.pmda.go.jp/int-activities/symposia/0126.html )をご参照ください。本稿では午後の部の講演を中心に報告します。

表1 プログラム
表1 プログラム

ICH Awards授賞式

ICHガイドラインの検討に功績があった専門家を表彰する「ICHアワード」が2022年に新設され、初年度は12名(日本からは、当局側3名、業界側2名)が受賞し、厚生労働省大臣官房審議官の山本史氏を通じて、ICHより記念の盾が贈呈されました。業界側の受賞者としては、製薬協医薬品評価委員会データサイエンス部会の小宮山靖副部会長、および品質委員会ICH品質グループの仲川知則グループ長の2名が受賞しました。

ICH Awards授賞式の様子 ICH Awards授賞式の様子

ICH Eガイドラインの最新動向

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 安藤 友紀 氏                                          

ICH E6(R2)改訂の際のパブリックコメント募集時(2016年)に、欧州医薬品庁(EMA)およびICHに対して、国際的なコンソーシアム等が「臨床試験のデザインや実施に関するより重要な事項に焦点を置くことによって、質の向上を目指すべき」という意見のOpen letterを提出し、以下のGCP Renovation(医薬品の臨床試験の実施の基準の更改)を進めることとなったという背景が説明されました。

  1. 試験のタイプやデータソースの多様化に適切かつ柔軟に対応
  2. ICH E8の近代化およびそれに続くE6(R2)の改訂
  3. 改定に際しては外部ステークホルダーの意見を聴取して反映

また、今回のフォーラムで紹介されたE8、E6、E19以外の検討中のEガイダンスについても、今後、Eガイドラインの作成・改訂では、医薬品開発の効率化・適正化、そのための手法がさらに検討されることになります。ガイドラインで示されるのは基本的に原則という方針のもと、当局との早期からのコミュニケーションの実施の重要性に加え、記載の文言の意図を含めて理解することやその周知や議論のための期間も重要であるというメッセージが示されました。

ICH E8(R1)(臨床試験の一般指針の改訂)

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 坂口 宏志 氏                                          

今回のE8の改訂のポイントである下記が説明されました。

  1. 臨床試験のライフサイクルに関するガイダンスを提供すること
  2. 「臨床試験における質(Quality)」を目的への適合性(fit for purpose)」として捉えること
  3. 立案およびデザインの検討にあたっては、“Quality by Design”の考え方を導入したこと

特に、Quality by Designについては、試験の質を治験実施計画書および手順の中に作りこむことにより、積極的に質の向上を目指しており、質に関する重要な要因(Critical to quality factors:CTQ要因)に焦点をあてたリスクに応じたアプローチによって、CTQ要因に対するリスク管理を行うことが重要であることが説明されました。

また、E8は概念的なものであるために取っ付きにくいかもしれないが、2022年12月23日に「『臨床試験の一般指針』の改正について」として国内通知が発出されたので、この機会に改めてみなさんに確認してほしいとのメッセージが示されました。

ICH E6(R3)(医薬品の臨床試験の実施の基準の改訂)

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 大庭 泉 氏                                           

今回のE6改訂の目的は「臨床試験のデザインやデータソースの多様化に対応するため、GCP Renovationの一連の作業として、ICH E8の近代化に引き続き、現行のICH E6(R2)ガイドラインを改訂するもの」であることが説明されました。また、ガイドラインの構成は、現行のR2を置き換えるものとして「Overarching Principles and Objectives」が作成されるとともに、「Annex 1-Interventional clinical trails」は、追加の考慮が必要な内容として「Annex 2-Additional considerations for non-traditional interventional clinical trials」として作成されることが説明されました。

なお、本ガイドライン改訂作業は、アカデミアを中心とした各ステークホルダーとワーキンググループが意見交換を行うStakeholder Engagement Sessionを定期的に開催しながら実施しているため、通常のガイドライン作成よりもStep 2以前に各ステークホルダーから多くの意見を聴取しており、それに対応しているためにタイムラインが遅れているとの報告がありました。

ICH E19(A Selective Approach to Safety Data Collection in Specific Late-Stage Pre-Approval or Post-Approval Clinical Trials)

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 西岡 絹恵 氏                                         

最初に、本ガイドラインのタイトルがStep 4になった際に、より内容がわかりやすいタイトルに変更されたことを述べたうえで、本ガイドラインの内容について説明がありました。

本ガイドラインの「選択的安全性データ収集」とは、承認前または承認後の特定の後期開発ステージの臨床試験において、ある種のデータ収集を減らすことを意図していますが、まずは薬剤の安全性プロファイルが十分に特徴づけられているか、臨床試験の目的等にかなっているのか等を考慮する必要があります。そのうえで、選択的収集が適切に正当化され、的確にデザインされている場合には、多数の規制当局により認められた選択的安全性データ収集を利用する臨床試験として実施され、重要な科学的疑問に答えるための有効性および安全性の大規模臨床試験の実施を促進し得るための手法として、本ガイドラインを活用してほしいとのメッセージが示されました。

まとめ

今回の講演およびパネルディスカッションでは、過去のICH活動から将来への展望について、ガイドラインごとの各論ではなく、有効性ガイドライン全体やICHと外部ステークホルダーとのコミュニケーションといった横断的な説明および議論が行われました。創設当初は日米欧のみの規制当局および業界団体であったICHも、現在では総勢56団体の組織体制となり、その影響範囲が広がっています。

外部ステークホルダーとの協働も進めることによって、医薬品開発をより効率的に最適な方法で進める重要性も各ガイドラインで検討されるようになりました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により医薬品開発をめぐる環境が抜本的に変化している中、それに関係するガイドライン等も適切に改訂作業が行われています。

前述のようにICHとして日々活動していることが、本フォーラムを通じて改めて周知されました。しかしながら、ガイドライン制定にはどうしても時間を要すること、開発する医薬品の目的等によっても状況が変わることから、ガイドラインを原則にしつつも、規制当局と密にコミュニケーションをとりながら、状況に応じた適切な方法で進めていくことが不可欠だと改めて感じました。

午後のパネルディスカッションの様子 午後のパネルディスカッションの様子

(ICHプロジェクト 角 真智子

このページをシェア

TOP