From JPMA 製薬産業のビジネスモデルと医薬品産業政策について ~政策提言2023の発表にあたり~

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2023年2月16日に「製薬協会長記者会見」を開催しました。会見の冒頭で強調したのは、国家戦略としての医薬品産業政策の必要性です。

新薬創出は極めてリスクの高い特殊なビジネスですが、その永続性のために製薬企業は生み出したキャッシュ(営業CF)を将来の成長のために製品やM&A、パイプラインの獲得といった無形資産、設備投資と株主還元に投入しています。会見では、こうした再投資によって新薬創出を果たした内資系企業9社の売り上げが、全体(内資系企業53社)の売り上げの7割を占めるデータを示しました。また、国内売上高が縮小する中、他産業に比べても税収面で大きく国に貢献していることにも触れ、世界で戦うべき新薬を生み出す企業を応援する産業政策の推進を訴えました。

続いて、革新的な新薬を創出する企業と高品質な医薬品を安定供給する企業をしっかりと育成する医薬品産業政策の重要性を強調しました。

日本製薬工業協会 会長 岡田 安史 日本製薬工業協会
会長 岡田 安史

特許品の薬価が毎年引き下げられること等、イノベーションへの評価が厳しい現行の薬価制度・施策によって、日本の医薬品市場は停滞し、企業の投資意欲が低下し、ドラッグラグ・ドラッグロスは深刻化しています。この流れを断ち、医薬品産業の使命である健康寿命の延伸と経済成長への貢献を実現するには、国家戦略としての医薬品産業政策を講じ、投資を呼び込む魅力的な医薬品市場の構築が必要となります。

その実現には、日本の医薬品市場が全体で微増、特許品市場で4~5%の成長が見込める姿が求められ、医薬品市場における「メリハリ」の追求が不可欠です。具体的には、新薬は特許満了後速やかに後発品に置き換え、長期収載品の価格も速やかに引き下げるべきであり、一方で、革新的新薬についてはグローバルスタンダードで評価することにより特許品市場の持続的な成長が可能になると考えています。われわれはこの「メリハリ」をさらに追求することに異論はありません。しかし、それも後発品の安定供給問題や品質問題が起きてしまう産業構造では成り立ちません。安定供給に資する後発品企業への政府の十分な支援が必要であることを指摘しました。

飛躍的なデジタル技術の進展や人口構成が大きく変化する環境において、医療の効率化は必須です。効果的な医療提供体制についての国民的議論が必要です。そして、効率化で生まれた財源は、社会保障の持続性とともに、国民医療の質向上のために、さらなるイノベーションへの投資に再配分されるべきとの考えを述べました。

まとめとして、メリハリのある薬価制度、そして効率的な医療制度を構築することによって、主要先進国に比肩する成長市場を実現するとともに、国民皆保険制度の持続性とイノベーションの評価を両立していくことが、国家として大きな転換期にある今、取るべき選択肢であるとし、当日公表した「製薬協 政策提言2023」の内容を説明しました。

※会長会見の詳細および「製薬協 政策提言2023」の内容は、製薬協ニューズレター 2023年3月号 No.214 トップニュースをご参照ください。

(2023年2月16日開催 製薬協会長記者会見より)

日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)

製薬協は、研究開発志向型の製薬会社が加盟する任意団体です。1968年に設立された製薬協は、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献してきました。

製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携等、多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会

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