トピックス 「ICH仁川会合」開催される

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2022年下期の医薬品規制調和国際会議(ICH)の会合が、11月12日~16日に仁川(韓国)にて開催されました。対面会議を原則に開催されましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で渡航が難しい参加者に向けて、オンライン参加も可能として運営されました。

会合の様子 会合の様子

本会合では、総会に提案し議論される内容の準備やICHの運営を担う管理委員会、全メンバーが参画する総会等が行われました。また、技術的ガイドラインについて検討する10の専門家作業部会(ワーキンググループ)の議論も同時期に並行して実施され、ICHガイドラインの作成進捗が図られました。今回の総会では、Q13原薬および製剤の連続生産がStep 4に到達しました。かつてより会合の規模は縮小されているものの、徐々にではありますが、COVID-19まん延以前のICH会合運営に戻りつつあります。

仁川会合の参加団体の内訳は、創設メンバーである日米EUの産官6団体、常任メンバー2団体、メンバー12団体、常任オブザーバー2団体、その他のオブザーバー団体から24団体でした。現地仁川には、世界各国から280名以上が参加し、製薬協からも24名が参加しました。

以下に、仁川会合での特記事項を記載します。

1. 新規オブザーバーの加入

ICHの新規オブザーバーとして、チュニジア医薬品局(DPM)の加入が承認されました。この結果、ICHメンバーは20団体、オブザーバーは1増で36団体となり、ICHは総勢56団体の組織体制となりました(末尾の参考資料参照)。

2. ICH技術トピックの動向

仁川会合では、全10トピックのワーキンググループが活発な議論を行い、進捗が図られました。

会合をもった専門家作業部会

・Q1/Q5C informal WG:Targeted Revisions of the ICH Stability Guideline Series
・Q3E EWG:医薬品および生物製剤の溶出物および滲出物の評価と管理
・Q9(R1)EWG:「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」の改定
・Q13 EWG:原薬および製剤の連続生産
・E2D(R1)EWG:「承認後の安全性データの取扱い」の改定
・E6(R3)EWG:「医薬品の臨床試験の実施の基準」の改定
・E11A EWG:小児用医薬品開発における外挿
・M4Q(R2):「コモン・テクニカル・ドキュメント—品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン」の改定
・M13A EWG:即放性経口固形製剤の生物学的同等性試験
・M15 informal WG:Model-Informed Drug Developmentに関する一般原則

Q1/Q5CおよびM15については、2022年に設置された新規のワーキンググループとなります。

Step 4到達

Q13原薬および製剤の連続生産について、Step 4到達が総会で報告されました。今後、各規制当局における実装のプロセスに入ります。

そのほかにも、管理委員会、総会では、全既存トピックの進捗管理等の議論も行われました。以下のトピックについては、前回のICHアテネ会合以降に重要なマイルストンに到達したことが報告されています。

E19:A Selective Approach to Safety Data Collection in Specific Late-Stage Pre-Approval or Post-Approval Clinical Trials(安全性データ収集の最適化)(2022年9月にStep 4到達)
S1B(R1):「医薬品のがん原性試験に関するガイドライン」の補遺(2022年8月にStep 4到達)

Step 2到達

以下のトピックについては、今後、各国・地域でパブリックコメントが実施されます。

M11:Clinical electronic Structured Harmonized Protocol(CeSHarP)(2022年9月にStep 2到達)
Q5A(R2):ヒトまたは動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価の改訂(2022年9月にStep 2到達)

3. ICHアワード

ICHガイドラインの検討に功績があった専門家を表彰する「ICHアワード」が2022年より立ち上がり、2022年は12名が受賞しました。日本からは、当局側3名、業界側2名が受賞することとなり、ICHの作業部会における重要なリーダーシップや持続的な貢献が認められました。なお、業界側の受賞者としては、製薬協から初めて、医薬品評価委員会データサイエンス部会の小宮山靖副部会長、および品質委員会ICH品質グループの仲川知則グループ長の2名が受賞しています。

4. 次回ICH会合

2023年6月9日~13日の日程で、バンクーバー(カナダ)にて開催予定です。次回も対面での会合を予定しています。
 

なおICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるようにしています。今回のICH仁川会合の成果や各トピックのコンセプトペーパー、作業計画等はICHウェブサイト(https://www.ich.org/)よりご覧いただけます。

【参考資料:ICHメンバー、オブザーバー一覧(2022年11月現在)】

表1 メンバー(20団体)
表1 メンバー(20団体)

表2 オブザーバー(36団体)
表2 オブザーバー(36団体)

 

(国際規制調整部長 加藤 真理子

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