トピックス 「第2回 日本-マレーシアシンポジウム」開催される

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2022年7月14日に「第2回 日本-マレーシアシンポジウム」がマレーシア国家医薬品規制庁(NPRA)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の主催にて開催されました。7年ぶりの開催となった今回の「日本-マレーシアシンポジウム」はオンライン形式で行われました。本シンポジウムは、日本とマレーシアの薬事の相互理解を深めることで両国の医薬品規制や開発のための協力体制の基盤形成を目指しています。

シンポジウムの参加者

今回のシンポジウムでは基調講演のほか、迅速承認制度、再生医療等製品の非臨床試験、E-Labeling、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのファーマコビジランス(PV)等、両国の医薬品の規制に関する最新の情報の共有および討論が行われました。

日本からPMDA理事長の藤原康弘氏をはじめ、PMDA、厚生労働省、製薬協会員会社が出席し、マレーシアからはNPRAのDirectorであるRoshayati Mohamad Sani氏をはじめ、NPRAおよびマレーシア産業界から400名弱が本シンポジウムに参加しました。

基調講演では、マレーシア側からはNPRAのRoshayati Mohamad Sani氏より、COVID-19パンデミックにおけるマレーシアでの規制措置、東南アジア諸国連合(ASEAN)内の薬事規制ハーモナイゼーション、および薬事規制に関する日本・マレーシア間の協力について発表がありました。日本側からはPMDA理事長の藤原氏より発表があり、臨床開発のエコシステムの促進や薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)およびPMDAアジアトレーニングセンター(PMDA-ATC)における国際協力について話がありました。

以下の稿ではマレーシア側の発表を紹介します。

Expedited Review

NPRA, Centre of Product & Cosmetic Evaluation, Head of Biologics Section, Azizah Ab. Ghani 氏                 

現在ASEAN各当局間で進めているASEAN合同評価(ASEAN Joint Assessment)の取り組みについて説明がありました。ASEAN合同評価は複数の国々に対して同時に申請が可能となるASEAN加盟国間での共同審査スキームです。合同評価を利用したスキームでは、申請者はASEAN内の申請希望国に対し同時に申請を行い、最低3ヵ国以上の規制当局(National Regulatory Authorities、NRA)が参加し、各当局合同で審査が行われることになります。評価完了後、合同評価報告書が出され、各々のNRAはそれに基づいて個別に承認可否の判断を行うことになります。申請資料のアップロード、オンラインでの審査や照会発出は、共通のプラットフォームを通じて行われる予定で、現在、適切な管理運営ツールやITプラットフォームの確立を進めているところです。またそのほか、マレーシアにおける既存の迅速審査制度として、優先審査、簡略審査のほか、パンデミック等の災害に対応した迅速審査制度についても説明がありました。

Sharing experiences and challenges on E-Labeling

NPRA, National Pharmaceutical Regulatory Division, Head of New Drug Product Section, Rosliza Lajis 氏              

マレーシアでは、2019年にE-Labeling導入に向けての産官合同のタスクフォースが始まりました。このタスクフォースでは、どのような形でE-Labelingを導入するのか、また将来課題となる点について調査が進められています。Rosliza氏の説明では、今後E-Labeling実装にあたり、プラットフォームや実装方法、農村部でのアクセシビリティ、コスト、製品コードの変更等について議論と検証が必要であるとしています。また、2022年Q3にはガイドラインやConcept Paperが発行され、2023年には製薬企業による自主的なパイロットも行われる予定です。E-Labelingの本格実装は2024年以降になる見込みで、マレーシアでは慎重に検証を進めながら、すべてのステークホルダーにとって納得できる形での実装を目指しているところです。

Pharmacovigilance of COVID-19 vaccines

NPRA, Head of Pharmacovigilance Section, Azuana Ramli 氏                                   

COVID-19ワクチンのファーマコビジランスの事例について紹介がありました。マレーシアではCOVID-19ワクチンは条件付き承認として登録され、PV上の承認後要件として綿密な安全性モニタリングが行われています。予防接種後有害事象(AEFI)の報告形式としては、マレーシアでは当局のポータルサイト(Quest3+)を通じて、医療機関や製薬企業だけでなく患者さんからも直接AEFIの報告を行えるようになっています。AEFIの報告はデータベース化され、各ワクチンの有害事象の頻度が解析され、一般に公表されています。マレーシアでは、ITを利用してワクチンの安全性情報のシグナルをしっかりキャッチし国民に広く発信するようなシステムが、ワクチンプログラムとして運用されています。

最後に

今回のシンポジウムはオンラインでの開催となりましたが、COVID-19下における規制当局の対応やASEAN合同評価、E-Labeling等、非常に濃い内容の有意義な話を聞くことができました。COVID-19パンデミックによって規制当局はこれまでの審査方式を修正する必要が生じましたが、この困難によってより効率的でフレキシビリティのある方法が取られるようになったことがわかりました。また、今回のシンポジウムの開催を通じて日本・マレーシア両国が薬事規制の相互理解を進められたことは、日本・マレーシアのみならず、日本とASEAN全体の国際協調につながります。日本の革新的医薬品をマレーシア、そしてASEANの国民へより迅速に届けることができる良いきっかけになったと感じています。

(国際委員会 アジア部会 マレーシアチーム 木原 潤一

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