トピックス 「2021年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」を開催

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製薬協コード・コンプライアンス推進委員会は、2022年3月1日、「2021年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」を、2020年度と同様にオンライン形式にて開催しました。会員会社73社から、コンプライアンス管理責任者とコンプライアンス実務担当者132名が出席し、表1のプログラムに従って実施されました。以下、本会の概要を報告します。

表1 「2021年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」プログラム
表1 「2021年度コンプライアンス管理責任者・実務担当者会」プログラム

(1)開会挨拶

会の開催に先立ち、製薬協コード・コンプライアンス推進委員会の田中聡委員長は、2021年度の本委員会の基本方針ならびに重点課題「会員会社のコンプライアンス推進の支援」「透明性ガイドラインに基づく適切な情報公開の推進」「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインへの対応」「行政および日薬連、公取協、IFPMA等の国内外の関係団体との連携、情報の収集・発信およびフィードバック」について、その概要を紹介しました。

また、2022年1月に透明性ガイドラインの改定が承認されたこと、販売情報提供活動ガイドラインに対する会員会社の取り組みを共有したことを報告し、国際製薬団体連合会(IFPMA)、アジア太平洋経済協力(APEC)におけるグローバルな動向を収集して情報発信を行っていくと述べました。

製薬協 コード・コンプライアンス推進委員会 田中 聡 委員長 製薬協
コード・コンプライアンス推進委員会
田中 聡 委員長

(2)会員会社のコンプライアンス取り組み紹介

中外製薬サステナビリティ推進部の相川仁氏は「内部通報制度に関する取組み状況」と題した講演を行いました。

最初に、企業の不祥事は内部通報での発覚が多く、内部通報制度に関する運用や取り組みは企業にとって重要課題であると述べた後、中外製薬における内部通報に関連するガイドライン・規程等の整備として、「中外製薬グループ コード・オブ・コンダクト(CCC)」、関連するガイドラインや規程の紹介がありました。

中外製薬では複数の通報・相談窓口を設置し、相談者が窓口を選択できる相談しやすい体制としていることを紹介しました。また、これらの相談窓口を担当する社員は適切な対応ができるように、社内外の研修を受講して知識・スキルを身につけるように努めていると述べました。

また、通報・相談しやすい環境作りを心がけており、適時・適切に通報・相談できるようにするための啓発活動として、ポスターの活用や担当者を写真で紹介していると述べました。また、コンプライアンス意識調査を毎年実施しており、そこで把握した相談者の不安や疑問をなくすためのQ&A作成や、これまでの相談事例を掲載していると紹介しました。相談者から「ポスターを見て相談した」「同じような事例が紹介されていたので相談した」といったコメントもあり、これらの活動が成果を上げていると報告されました。

中外製薬 サステナビリティ推進部 相川 仁 氏 中外製薬 サステナビリティ推進部
相川 仁 氏

最後に2022年6月に施行される改正公益通報者保護法についてもポイントを紹介したうえで、社員が疑問に思ったことを相談しやすい環境で受け付けることができ、これに適切な対応を繰り返すことが重要であると締めくくりました。

(3)特別講演

日本経営協会総合研究所組織行動部門主席研究員の山根郁子氏は、「具体的な数値で考えるコンプライアンスサーベイ」と題した講演を行いました。

山根氏は講演の趣旨について、コンプライアンスサーベイを実施することにより、従業員の意識を数値化することの意義と目的を再確認し、調査結果の活用方法をみなさんと考えることである、と述べました。また、コンプライアンスサーベイの結果に一喜一憂するのではなく、なぜスコアが高い(低い)のか、その原因を分析し、調査結果をもとに施策の展開や職場風土の改善等を「実践する」ことが重要であると強調しました。

前提編では、コンプライアンスの定義は、法令遵守は言うまでもなく、法規範、社内規範、社会規範も踏まえて遵守する行動であること、またその目的は、自発的な活動として、企業価値の向上・事業継続のために行うものであり、ステークホルダーの信頼を得るものであると述べました。

さらに、コンプライアンスサーベイとよく似たものとして、「内部通報制度」「チェックリスト」を取り上げ、意義と目的の違いを説明しました。

日本経営協会総合研究所 組織行動部門 主席研究員 山根 郁子 氏 日本経営協会総合研究所
組織行動部門 主席研究員
山根 郁子 氏

本編では、コンプライアンスサーベイを(1)調査目的と問題意識の整理、(2)枠組みと項目作成、(3)実査、(4)集計、(5)分析、(6)報告、(7)調査のお礼&周知、(8)アクションプランの実践、の8つのステップとして、その進め方について順に解説しました。

「(2)枠組みと項目作成」では、コンプライアンスサーベイにより、コンプライアンス意識をレベル化できれば、目標と課題が見えてくる。従業員の判断基準は、会社の組織風土や上司から大きく影響を受けているため、調査項目には、組織風土や上司・職場に関する項目を含めるのが望ましい、と解説しました。

「(5)分析」では、実際の質問項目を各自が回答し、他社平均と比較しながら、結果と考察のプロセスを追体験しました。

「(6)報告」では、属性別の回答傾向やコロナ禍での回答傾向、自由記述の対応例等、調査実務家としてのノウハウの紹介がありました。

「(8)アクションプランの実践」では、調査結果から会社・各部門の良好な点と課題点を把握し、アクションプランとして次年度の行動計画に落とし込んで実践する、また研修のテーマ選定等に活用してほしいと述べました。

最後に、調査結果は、経営陣や部門長だけでなく、従業員へのフィードバックもぜひ行ってほしいと述べました。職場でのフィードバックの際の留意点として、コンプライアンスサーベイは、職場活性や活動施策の反映に活かすことが主目的であり、データは、「心理的な事実」をあらわすものとして、単にスコアの高い低いだけではなく、スコアの背景にあるもの、たとえばメンバーがなにに問題を感じているのかを探り、共有化して、職場運営改善に活動ベクトルを合わせていけるような活用をお願いしたい、また、個人の回答が特定されることがないよう十分な配慮をする等、安心して回答できる仕組みで運用してほしいと述べました。

(4)閉会挨拶

製薬協の田中徳雄常務理事は、演者の相川氏、山根氏に謝辞を述べた後、コンプライアンス管理責任者・コンプライアンス実務担当者の本会への参加および日々の活動への謝意を伝えました。

われわれ製薬産業は生命関連品を扱っていることから、ほかの業界より早くからコンプライアンスの徹底に取り組んできましたが、心もとない1社のコンプライアンス違反が発生すれば、製薬産業全体に対する社会の信頼を大きく失墜することになると強調しました。安定供給にまで影響を与えている昨今のGMP違反の事案にも触れ、「あの時、徹底的に点検しておけば」と思っても遅い、失った信用を取り戻すには、築き上げた時間の倍以上を要すると述べました。

現状、残念ながらコンプライアンス違反はゼロにはなっていません。本日の講演にもあった内部通報等でトラブルに発展してしまうのは、初期対応が悪かったことも大きな原因であり、会社が真摯に受け止め、適正な対応を行い、会社が変わったというメッセージを通報者および全社に伝えることが重要であると説明されました。各社の研修は熱心に実施され、知識はあるが、実際にその場面になって適切な対応ができるか。行動が伴ってはじめて倫理観を発揮できたと言える、と強調しました。

製薬協 田中 徳雄 常務理事 製薬協 田中 徳雄 常務理事

最後に、お願いとして、「コンプライアンス部門を通じてMRを守ってほしい。会社を元気にしてほしい。その責任がみなさんにある!」と締めくくりました。

(コード・コンプライアンス推進委員会 実務委員 玉田 隆司

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