トピックス 「ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(LEEM)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。今般、vfaとの定期会合を2022年1月31日にオンライン形式で開催しました。双方合わせて約25名が参加し活発な意見交換を行いました。会合の概要を以下の通り報告します。

オンライン会合の様子 オンライン会合の様子

はじめに

冒頭、製薬協国際委員会の伊藤達哉委員長とvfaのInternational AffairsのSenior ManagerであるHarald Zimmer氏の挨拶から会がスタートしました。伊藤委員長は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより世界は新たな局面に入り、私たちの働き方や生活様式が大きく変化したこと、ワクチンの迅速な臨床試験と承認によって製薬業界の評価が高まってきていること、そして、そのような大きな環境変化の中でCOVID-19後の新たな医療問題の解決に貢献する製薬業界のベストプラクティスをお互いに学んでいくこと、COVID-19によって加速されたヘルスケアのデジタル化が今後どのように進化していくのかを理解することの重要性について述べました。

その後のセッションでは、vfaからはPrice & Reimbursement/Market Access、Patient Engagement、EU Pharmaceutical Strategy、Digital Health、Germany’s new governmentについて発表がありました。

製薬協からは、「製薬協 政策提言2021」、厚生労働省により今般発表された「医薬品産業ビジョン2021」のサマリーと製薬協からのステートメント、日本の新政権、2022年度の薬価制度改革のトピックス、デジタルヘルスについて紹介しました。

各セッションにおいてはvfa、製薬協の双方での質疑応答が行われ、それぞれにトピックスについて意見交換を実施しました。

Social landscape of Japan

製薬協 国際委員会 村上 伸夫 副委員長                                                 

このセッションでは、「製薬協 政策提言2021」について、その背景とサマリー、厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021」、ステートメント、日本の新政権について、2022年度の薬価制度改革のトピックスについて紹介がありました。

ディスカッションでは、vfaからは、日本のこれまでのワクチン接種とコロナワクチンの接種状況や、感染症対策の司令塔機能、日本におけるジェネリック医薬品の普及状況について質問があり、製薬協から回答しました。

Social landscape of Germany

vfa Sebastian Werner 氏、Eike Melchior 氏                                             

このセッションでは、vfaからドイツにおける価格・償還制度の最近の話題として、新しいマーケットアクセスのインセンティブとしてのReserve Antibiotics、Real World Evidenceの活用について、EU HTAのプロセスや方法について、また新政権における薬価・保険償還にかかわる議論とその影響等について説明がありました。

ディスカッションでは、製薬協から、EUにおけるジョイントクリニカルアセスメントについて今後のドイツ政府とのディスカッションのポイントや強制リベート、Real World Evidenceの活用における疾患レジストリーにかかわる行政からの支援等について質問し、vfaから現状について回答がありました。

Patient Engagement

vfa Bettina Benz 氏                                                         

このセッションでは、vfaの患者参画への取り組み、業界とステークホルダーとの監視組織である英国食品基準庁(FSA)およびその行動規範、ドイツ医療における患者参画の課題等についての説明がありました。vfaでは、FSA行動規範に基づいたうえで、国内および国際レベルの患者団体等との連携を積極的に推進しており、新たに患者コラボレーションマネージャーを設置、患者シンクタンクやEUPATI(医薬品の研究開発における患者のためのトレーニングプロバイダー)のプロジェクトへの企業参画の調整、患者コラボレーション分科会の監督やvfaの患者ポータルコンテンツ運用等を行っています。一方で、ドイツは医療政策への患者参画の影響度は弱く、ドイツ医療システムの最高意思決定機関であるG-BAに患者組織が関与するようになる等、強化されてきているものの、議決権はない等の課題があるとコメントがありました。

EU Pharmaceutical Strategy

vfa Katja Standke                                                          

このセッションでは、vfaによるEU Pharmaceutical Strategyに対する取り組みについて説明がありました。vfaにとっての最重要事項は医薬品アクセスであり、ドイツは欧州医薬品庁(EMA)による承認後、最も早くアクセスが実現される国であるため、EU Pharmaceutical Strategyが悪影響を与えることがないよう、EFPIAとも連携して、欧州および国レベルでインプットを行っていることが紹介されました。その他、製薬協からの質問に対して、ドイツがEU議長国として果たした役割を含めて、医薬品の安定供給に関する欧州レベルでの検討の状況と、ドイツでの対応の現状について回答がありました。

Digital Health

製薬協 国際委員会 欧米部会 デジタルヘルスグループ 岡本 雅子 リーダー                                  

このセッションでは、日本におけるデジタル化促進のための政府の取り組みについて紹介がありました。2021年9月に新しく設立されたデジタル庁のミッション、ビジョンと4つの柱、マイナンバーカードの普及、プログラム等の最先端医療機器の審査に関する抜本的な改革である「DASH for SaMD」、日本におけるテレメディシンの状況、バーチャルな臨床試験分野での取り組み等、日本の最新情報を共有しました。

ディスカッションでは、製薬協から、ドイツにおけるバーチャル臨床試験の実施状況について質問がありました。vfaからは、ドイツ当局の動きは早くはないものの、COVID-19禍ということで少しずつではあるが進み始めているとコメントがありました。

Digital Health

vfa Tobias Manner-Romberg 氏                                                   

このセッションでは、ドイツにおけるデジタルヘルスの取り組み状況について紹介がありました。ドイツの新しい連立政権では、デジタル化は最優先課題となっており、活発に議論が行われていること、そしてデジタルヘルス申請については、ドイツは先駆け的な存在であり、欧州市場が追随しようとしていること。また、欧州保健データスペースの設置に関する議論の状況について共有がありました。

ディスカッションでは、製薬協からは、欧州保健データスペースに盛り込まれているデータの種類について質問がありました。vfaからは、現在検討が進められており、たとえば、データの匿名化を踏まえて、健康に関するさまざまなデータを含めていく予定であるようだとコメントがありました。

Germany’s new government

vfa Ulf Birke 氏                                                           

このセッションでは、ドイツにおける新しい政権と製薬業界への影響についての説明がありました。社会民主党が、緑の党と自由民主党とともに率いる3党連立政権が誕生し、パンデミックとの戦い、経済力の回復、さらなるデジタル化、人口学的・社会的変化への対応等に直面している中、イノベーションと医療経済、特に先端医療推進への焦点が大きな課題となっていることが紹介されました。社会民主党と緑の党の2党は、効能追加や薬価制度、特許保護についての議論で明確な立場を打ち出していない状況もあり、今後、製薬業界を取り巻く環境が厳しくなる見込みであるという内容でした。vfaとしては、医薬品市場改革法(AMNOG)のさらなる改善に向けて働きかけていくとのことです。

終わりに

製薬協の中川祥子常務理事は、ドイツで新政権が発足する中、vfaと製薬協は密に連携し、ドイツまた日本で開催されるG7の準備においても協力しあうことの意義や、デジタルヘルスと医療・社会制度の重要性が増していく中、今後の医療・福祉の問題に取り組むために、もっと世界規模で知識を交換する必要性を述べ、製薬協とvfaが、世界中の患者さんを取り巻く問題を解決するために、一緒になってともに取り組んでいきたいと締めくくりました。

今回もオンライン開催となりましたが、各セッションにおいて活発な意見交換が行われ、相互に理解を深めることができ、非常に有意義な会合となりました。

次回は2022年度に開催の予定です。

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ)

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