トピックス 「eCTD v4.0(ICH M8)通知改正と運用開始に関する説明会」実施報告

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2022年3月11日に、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、製薬協共催にて、「eCTD v4.0(ICH M8)通知改正と運用開始に関する説明会」をWeb形式で開催しました。2022年2月18日付で発出された薬生薬審発0218第4号「『電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)による承認申請について』の改正について」の通知を受け、その運用開始に向けて、PMDAからeCTD v4.0の基本コンセプトや背景情報、そして改正通知の主要ポイントを主眼に説明がありました。また、製薬協からは、2021年、製薬協が参加したパイロットテストのコンセプトと、企業対応のポイントについて説明を実施しました。本稿では、講演内容を報告します※1。

1. 説明会開催要領

2017年7月5日付薬生薬審発 0705第1号「電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)による承認申請について」は、日本国内向けのeCTD v4.0実装ガイドであり、通知として発出されました。その後、改正通知2020年2月19日付薬生薬審発 0219第1号、2022年2月18日付薬生薬審発0218第4号が発出されました。2022年2月18日付薬生薬審発0218第4号では、eCTD v4.0の受付開始が2022年4月1日と明記されており、eCTD v4.0の運用を滞りなく開始できるよう、改正通知の発出後、速やかに今回の説明会開催となりました。

これまでの当該トピックに関する説明会では、集会形式では150名~300名程度の募集であり、2020年の改正通知のWeb形式の説明会でも約300名の参加でした。しかしながら、今回の説明会では、Web形式の説明会であるとはいえ、500名を超える参加があり、関心の高さがうかがえました。参加者は薬事業務担当者、薬事オペレーション担当者、一部申請電子データ担当者、eCTD作成にかかわる方(アウトソーシングベンダー含む)であり、Web形式開催のため、Q&Aセッションは事前募集で寄せられた質問へ回答する方式で行いました。

プログラム

 

1. eCTD v4.0運用開始に伴う情報提供 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査マネジメント部 齋藤 亮 氏
2. 令和4年改正通知の内容 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査マネジメント部 齋藤 亮 氏
3. eCTD v4.0の利用(審査員の立場から) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部 坂上 祐香 氏
4. eCTD v4.0に関連するPMDA公開ツール等の紹介 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査マネジメント部 蝦名 大五郎 氏
5. パイロットテストを踏まえた企業対応のポイント 製薬協 ICHプロジェクト ICH M8 玉村 聡子 トピックリーダー
6. 質疑応答(事前質問への回答) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構/日本製薬工業協会

2. PMDAからの説明

PMDAからは、3名のICH M8担当者より、4つのトピックの発表がありました。

eCTD v4.0運用開始に伴う情報提供について

1つ目のトピック「eCTD v4.0運用開始に伴う情報提供」では、eCTD v4.0の全体像の理解促進を図るため、改めて概要と背景の説明がありました。はじめに、eCTD v4.0導入の経緯について触れられ、これまで運用されてきたeCTD仕様のv.3.2.2に対して、いくつかの大きなインパクトのある変更要求が挙げられたこと、その改善を図るためにeCTD v4.0の開発と実装を目的としてICH M8 EWGで検討を行ったこと、2015年12月にStep 4の合意に至ったこと、に関する説明がありました。

国内実装における通知「電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)による承認申請について」は、前述の通り改正通知も発出され、別紙1~4で構成されています。これら別紙では、各別紙から他の別紙内容を参照する形式で記載があるため、網羅的な通読を推奨されました。

次に、eCTD v4.0の技術的概要、特徴として、用語のコード化、情報のマスタ化、既提出分からの差分提出の方法等が紹介されました。また、eCTD仕様v3.2.2と比較し、変更となる点として、試験データの提出方法(eCTDに試験データを含めて提出)や、過去に提出した文書の再利用、提出時の改訂連続番号(ライフサイクルカウント)等が紹介されました。

令和4年改正通知の内容について

2つ目のトピック「令和4年改正通知の内容」では、2022年2月18日に発出された改正通知について説明がありました。これは、eCTD v4.0の受付開始に先立ち実施された「eCTD v4.0パイロットテスト」の結果を反映して改正されているため、パイロットテスト結果と、改正された内容の紹介がありました。

パイロットテストはeCTD v4.0国内実装スケジュールに組み込まれており、2021年5月1日から2021年7月31日で実施されました。パイロットテストに関する要綱、および結果サマリーは、PMDAウェブサイトで公開されています。
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0106.html

パイロットテストにおいて、eCTD v4.0仕様に大きな課題は検出されなかったことが報告され、また検出された受付不可案件は、いずれも提出者による修正可能、もしくは対応方法が明確なものであったことが報告されました。また、今回の改正通知の主な変更内容と通知内で該当する変更箇所が提示され、それらはパイロットテストを通して挙がった要望への対応事項と、通知内容の解釈をさらに明確にする記述の変更に関するものでした。

eCTD v4.0の利用(審査員の立場から)について

3つ目のトピック「eCTD v4.0の利用(審査員の立場から)」では、PMDA審査員の立場から、新医薬品審査においてeCTDをどのように用いているかの紹介がありました。また、審査員が利用する予定のeCTD v4.0閲覧ツールの画面イメージの紹介に合わせて、eCTD v4.0の表示に関する特徴と、審査をより効率的に進めるために申請者に期待する情報の提供方法が提示されました。

eCTD v4.0に関連するPMDA公開ツール等の紹介について

4つ目のトピック「eCTD v4.0に関連するPMDA公開ツール等の紹介」では、eCTD v4.0に関連する3つのツールの概要が紹介されました。まず、eCTD v4.0検証ツールは、関連通知に記載された技術的かつ運用的ルールに基づき、適切にeCTD v4.0仕様で申請パッケージが作成されているかを、申請者がeCTDの提出前にチェックするためのツールです。本ツールは、以下、PMDAの「eCTD国内情報提供ページ」から入手可能です。
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0109.html

概要については、「eCTD v4.0国内チェック項目一覧」と「eCTD v4.0検証ツール操作マニュアル(7.2項)」に関して、それぞれの位置づけや用途、eCTD v3.2.2検証ツールとの主な違いや、検証結果レポートの構成、エラー区分、設定データ更新の必要性とその方法、が紹介されました。併せて、eCTD v3.2.2検証ツールの最新バージョンをリリースしており、2022年4月1日申請品目から、eCTD v3.2.2を用いた提出でもファイルサイズ上限を500MBに変更することが発表されました。

次に、公開用eCTD v4.0オフラインビューアが紹介されました。PMDA内のeCTDの審査システムを介さずに、eCTD v4.0データをオフライン状態で閲覧するためのツールであり、審査員がどのようにeCTDを閲覧しているかの参考として公開する旨の説明がありました。本ツールは説明会開催後の2022年4月8日に公開され、現在、以下のPMDAのeCTD国内情報提供ページからダウンロードすることができます。
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0009.html

続いて、申請電子データシステムの変更が紹介されました。eCTD仕様v3.2.2と比較し、eCTD v4.0提出においての変更点と、共通点の説明がありました。変更点は、提出予告時の登録内容や、GW提出時のカバーレター情報入力でした。一方、共通点はGW提出の基本的な流れやeCTD受付番号の取得方法、申請電子データのバリデーションの内容と方法等でした。

最後に、eCTD v4.0に関する技術的問い合わせ先(PMDA eCTD担当:ectd@pmda.go.jp)が紹介され、経過措置期間中に、eCTD v4.0への移行を問題なく終えられるように協力依頼がありました。

3. 製薬協からの説明

eCTD v4.0の通知、概要やツール等は、PMDAから当該説明会で簡潔にわかりやすい説明があったため、製薬協からは、参加者のみなさんが安心して今後の対応に取り組んでいけるよう「パイロットテストを踏まえた企業対応のポイント」と題して発表しました。製薬協としてパイロットテスト参加にあたり、製薬協の方針や取り組みについて説明し、そこから得られた知見や改正通知から、企業対応ポイントを述べました。

PMDAから発表時に示されたパイロットテスト実施の目的は、以下の4点でした。

 

1) eCTD v4.0を用いた受け付け、国内実装ガイドに基づいて作成したeCTD v4.0の技術的検証
2) 国内実装ガイドに記載不備がないことの確認
3) 関連通知の解釈に大きな差異が生じていないことの確認
4) 必要に応じてQ&Aの発出や関連通知等の修正を検討

製薬協はこれを受け、実装ガイドに記載のユースケースを網羅的に確認して、解釈・運用で企業が問題なく対応できるかというポイントで参加したことを報告しました。eCTD v4.0の作成に係る参加者が多数と考え、実際の対応で発生する可能性の高いユースケースや、シナリオを示しながら、パイロットテスト実施のプロセスやポイント、エラーの種類等を説明しました。また、企業対応のポイントは、以下の6点を説明しました。

 

1) 関連部署の連携の必要性
2) 一度提出した文書を再利用するときの留意点
3) 資料のライフサイクル上の問題となるハイパーリンクの対応の留意点
4) 現行バージョンから増加するメタ情報の取り扱いと管理
5) 各社のPC環境・セキュリティ設定の留意点
6) チェンジマネジメントの重要性

パイロットテストの計画・準備段階では、通知を丁寧に確認しましたが、通知上で気づきにくい点や、わかりにくい点をピックアップしました。実際に、パイロットテストでeCTDを編纂してみることで、初めて気づいた点もあり、これらはポイントを絞って紹介しました。

4. Q&Aセッション

オンライン開催のため、今回は説明会開催前に寄せられた質問に対して回答する形式でPMDAから回答がありました。改正通知の発出後、2週間という短い質問受け付けの期間でしたが、押さえておくべき基本的事項を確認する質問や、技術的な深い質問が寄せられており、参加者のみなさんが、発出された改正通知を読み込んでいることがうかがえました。また、通知の英訳は、2022年度中に発行される見込みであるとの連絡がありました。

5. 終わりに

コロナ禍となって2年が経過し、急速なデジタル化対応が進められています。また、申請電子データの提出が義務化されてからも2年が経過しました。今般、申請電子データ提出は、eCTD v4.0適用からeCTDへ組み込まないと提出できないことが周知され、新しいeCTD規格への変更対応とともに、さらなる社内連携についても各社で意識され始めているものと考えます。

今回の説明会では、改正通知に記載のeCTD v4.0の受付開始日は2022年度初めであること、経過措置期間は4年間であること、が明確に説明されました。そして、改正通知と実装パッケージや、その他のツールの公開と環境が整ったこと、今後の活用に向けた丁寧な説明等があり、対応方法についての理解が進んだ説明会であったと考えます。

製薬協として、eCTD v4.0の取り組み促進の活動に、今後も継続して取り組んでまいります。

(ICHプロジェクト ICH M8 玉村 聡子、市川 佳代子

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