From JPMA 世界とつながるイノベーション創出環境の整備を

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発への遅れ等から日本のイノベーション創出力を懸念する声が相次ぎました。

近年、製薬産業を取り巻く状況やビジネスモデルは大きく変化し、上流の研究開発から、下流の製造、販売に至るまですべての段階を内製化する垂直統合型だったビジネスが水平分業型になりました。各ステージは高度・複雑化しており、それぞれに強みをもつ企業等との連携が進み、特に創薬研究ではベンチャー、アカデミアとのエコシステムの構築が不可欠となっています。

一方、日本のイノベーション創出力は、引用論文数の低下、海外留学生の減少、起業件数の停滞等が示すように国際比較において弱体化しています。資金力も不安要素に挙げられます。創薬には長い開発期間と莫大な資金が必要なうえ、低い成功確率というハードルがありますが、日本はベンチャーキャピタル(VC)投資で欧米に差を付けられ、特に臨床早期の資金が不足しています。こうした状況の打破にはエコシステムの強化、イノベーション人材の育成や失敗を恐れない風土づくり等、長期的な対応が必要です。

日本製薬工業協会 会長 岡田 安史 日本製薬工業協会
会長 岡田 安史

まず有望なベンチャー等と、シーズ実用化に必要な臨床試験や製造が可能な企業とのマッチングの推進に向け、産業界のニーズを確実に伝えるため、早期から両者がコンソーシアムのように一体となり、有望なシーズを磨くことが解決策です。

人材育成については、国家を挙げて若手研究者を支援し日本の研究力を高めるとともに、起業家精神旺盛な人材を生む教育に変えていく必要があります。政府が掲げる成長戦略の柱の一つである10兆円大学ファンドに大いに期待しているところです。

そして起業の活性化には、学生にとって憧れや目標となる成功例を生むことが重要です。2021年末に措置された創薬ベンチャーエコシステム強化事業のための補正予算を活用した取り組みに、製薬企業としても関与してまいります。

(「第33回 製薬協政策セミナー」講演内容より)

日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)

製薬協は、病院、診療所などの医療機関で使われる医療用医薬品の研究・開発を通じて世界の人々の健康と福祉の向上に貢献することをめざす、研究開発志向型の製薬会社が加盟する団体で、1968年に設立されました。

製薬協は、「患者参加型の医療の実現」に向けて、医薬品に対する理解を深めていただくための活動、ならびに製薬産業の健全な発展のための政策提言などをおこなっています。

製薬協は、国際製薬団体連合会(IFPMA)の加盟団体として世界の医療・医薬に関わる諸問題に対応し、各団体と連携を図りながら、グローバルな活動を展開しています。

新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会

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