トップニュース 「第20回 製薬協フォーラム」を開催

印刷用PDF

「製薬協フォーラム」は、医薬品産業に深い関係をもつ各界の代表者と会員会社の代表が一堂に会し、忌憚のない意見交換を行うことによって、医薬品産業に対する理解を深めることを目的に毎年1回開催されます。2020年は中止となりましたが、2021年は11月25日に経団連会館(東京都千代田区)にて講演会のみというかたちで、「第20回 製薬協フォーラム」を開催しました。

会場の様子

はじめに

今回は、厚生労働省にて初代医務技監を務め、昨夏まで新型コロナウイルス感染症対応を指揮した国際医療福祉大学副学長の鈴木康裕氏より「新型コロナウイルス感染症への対応 ~医薬品の研究開発・製造・供給に与えた示唆~」と題し、講演をお願いしました。以下は、講演内容の採録です。

講演内容

2020年1月に初めて国内で感染者が確認されて以来、すでに1年半以上が経過していますが、その間いくつもの流行の波があり、ピーク時には、保健所の余力やPCR等の検査のキャパシティの不足、重症者を収容する病床の不足等が課題となりました。

国際医療福祉大学 副学長
鈴木 康裕 氏

それとともに、この新しいウイルスに対する根源的治療法が少ないことが、感染症自体の広がり以上に大きな社会的影響を投げかけていましたが、ワクチン接種率が医療従事者や高齢者を皮切りに増加し、死亡者数が大幅に減少していく中で、通常の季節性インフルエンザの致死率(感染者に占める死亡者の割合)を下回ることが確定的となれば、(感染の流行の規模自体は別として、)新型コロナウイルスが社会問題として取り上げられること自体は、一定の収束を見ることになるでしょう。

そうした中、今回のパンデミックにおいて、我が国の医薬品の研究開発、製造や供給に対して、そのスピードや平時からの備えについて厳しい見方が報じられています。

それぞれの事象について、誰かを「悪者」に仕立て、それを非難して自己満足するのではなく、なにが原因であり、どうすればそれを回避できるのかについて、衆知を集めて検討・分析し、確実に乗り越えることこそ重要だと考えます。具体的には、承認に係る制度的課題や研究開発を促進する環境整備、供給や投薬・接種を支援する体制が挙げられます。

制度上の課題のみを見ても、医薬品医療機器等法(薬機法)には、同等の審査水準にある諸外国で承認を得た場合に速やかに国内承認を行う「特例承認」という制度はありますが、先立つ外国の承認を後追いするものであり、我が国が先例となる承認を迅速に行う立て付けになっていません。また、欧米で導入されている「緊急使用許可」の制度が国内にはなく、いったん承認を受けると、よほどのことがない限り承認が取り消されることはありません(これは特例承認の先例が欧米における緊急使用許可である場合も同様)。せっかく薬機法に導入した「条件付き早期承認」の制度も今回のパンデミックでは活用されることはありませんでした。

治験についても、一定の配慮が必要であり、国内では患者さんが少ないために国際共同治験が必須な場合、すでに外国では第III相の治験も実施され、サロゲートマーカーが判明している場合の国内製品の治験のあり方、海外製のワクチンを国内導入する場合に求める治験データの内容等については、感染の状況に応じた柔軟な対応が必要ではないでしょうか。

終わりに

こうした次のパンデミック到来を見据えた、さまざまな行政、学会、業界に求められる対応について、多くの示唆に富む講演となりました。

製薬協 岡田 安史 会長

 

(事務局長 猪口 時男

このページをシェア

TOP