トピックス 「フランス製薬工業協会(LEEM)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(LEEM)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。今般、LEEMとの定期会合が2021年10月14日にオンライン形式で開催されました。双方合わせて40名近く参加し、活発な意見交換が行われました。会合の概要を以下の通り報告します。

オンライン会合の様子

冒頭、製薬協国際委員会の伊藤達哉委員長の挨拶では、COVID-19パンデミックにより世界は新たな局面に入り、私たちの働き方や生活様式が大きく変化したこと、ワクチンの迅速な臨床試験と承認によって製薬業界の評価が高まってきていること、そして、そのような大きな環境変化の中でCOVID-19後の新たな医療問題の解決に貢献する製薬業界または個社のベストプラクティスをお互いに学んでいくこと、COVID-19によって加速されたヘルスケアのデジタル化が今後どのように進化していくのかを理解することの重要性について述べました。

その後のセッションでは、フランス製薬工業協会(LEEM)より、2021年7月から運用が開始されたEarly access & Compassionate accessについて、最近の話題としてフランスの官民対話、2022年1月からの欧州連合(EU)理事会議長国就任、2022年4月の大統領選挙、デジタルヘルスの話題としてLEEMによるDigital Health Academyについて説明がありました。

製薬協からは、「製薬協 政策提言2021」、厚生労働省により今般発表された「医薬品産業ビジョン2021」のサマリーと製薬協からのステートメント、日本におけるDigital Healthの動向を紹介し、またフランスの薬価・保険償還制度等にかかわる意見交換を実施しました。

1. Topics

Assessment Revison and Early Access Reform in France

Director of Economic, Access and Export, LEEM Eric Baseilhac 氏                                 

このセッションでは、これまで複雑であったATU(未承認薬の暫定使用承認)システムの改革が行われ、early access(製薬会社が商品化する医薬品を対象)とcompassionate access(製薬会社が将来商品化するつもりのない医薬品を対象)という2つの簡素化されたスキームになることについて詳細な説明がありました。政府との交渉における改革の3つのゴール(プロセスの簡素化、製薬会社をもっと惹きつける方法、当局にとっての持続可能性)、early accessの手順における5つのクライテリア(重篤・希少・または障害のある疾患、延期できない治療、適切な治療法が存在しない、高い有効性と安全性の推定、革新性の推定)、申請する製薬企業への条件、販売承認後のearly accessの手順、プロセスの経済的な規制(リベートシステム)、希少疾病の薬剤に対するcompassionate accessについても申請企業の条件や経済的な規制について説明がありました。

JPMA Policy Recommendations 2021

製薬協 国際委員会 村上 伸夫 副委員長                                                

このセッションでは、最初にCOVID-19の日本の現在の状況について紹介がありました。その後、「製薬協 政策提言2021」についてその背景とサマリー、2021年5月17日に行った米国研究製薬工業協会(PhRMA Japan)、欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)との共同記者会見の模様、厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021」のサマリーと製薬協のステートメントについて紹介し、LEEMへ3つのポイントを解説しました。

Interest or Questions of JPMA -Yuji Yahiro, JPMA

製薬協 国際委員会 欧米部会 欧州グループ 八尋 勇治 リーダー                                     

このセッションでは、主にフランスの薬価・保険償還制度等について日本から合計11の質問を投げかけました。early accessとcompassionate accessについては前のセッションですでに説明があったため、その他の質問について別途回答があり、必要に応じて追加のビデオカンファレンスを実施することとなりました。


Discussion
製薬協からはearly access、compassionate accessと、過去のnominative ATUとcohortとの違い、移行期の取り扱い、今後適応される製品にどのように影響があるか、early accessの5つのクライテリアの中でイノベーションはどのような定義となるのか等について質問し、LEEMから詳細な回答がありました。

LEEMからは、新型コロナウイルスが発生したことによって日本では製薬企業に対してのイメージはどう変わったか、予見性、透明性に関する政府と製薬業界の議論の方向性等について質問がありました。

2. Current Context in France

Strategic Council for Health Industries(CSIS)

General Manager, LEEM Philippe Lamoureux 氏                                         

このセッションでは、2021年6月に開催されたCSIS(官民対話)について説明がありました。LEEMは、成長の回復、イノベーションへのアクセスに関してフランスをヨーロッパの基準とすること、フランスの研究エコシステムを改革すること、業界の回復に必要なリソースを提供し特定のスキルに関する需要を予測すること、ハイレベルな常設のCSISのガバナンス調整を行うため、首相の直接指揮のもとで各省にまたがりヘルス方針の展開と統一を担当する委員会を設置することという5つのポイントで政府と交渉し、大統領のエマニュエル・マクロン氏は、研究エコシステムの改革、患者さんのアクセスのイノベーションへ向けた改革、フランスの業界の魅力と競争力を向上させる等、非常に強固な措置を公言したとの説明がありました。

French Presidency of the European Union Q1-Q2 2022

General Manager, LEEM Philippe Lamoureux 氏                                          

このセッションでは、フランスが2022年1月から6月までEU理事会の議長を務めることについて紹介がありました。優先事項として、経済回復と医薬品(の域内)生産を含む戦略的自治が重要であり、その他に、環境保護への移行、防衛、ヨーロッパの将来に関する協議、およびデジタル等について説明がありました。デジタルについては、フランス国内と同様にヘルスデータが優先事項の一つとなり、健康については、ヘルスユニオン、デジタルヘルス、がん・希少疾患・薬剤耐性(AMR)がフランス政府の優先事項であること、LEEMとしては、想定されるアジェンダに基づき、すでにステークホルダーとの接触を増やしていることが共有されました。

Presidency election in May 2022

General Manager, LEEM Philippe Lamoureux 氏                                          

このセッションでは、2022年4月のフランスの大統領選挙について説明がありました。世論調査の動向、製薬業界への影響等について共有がありました。

Discussion
製薬協からは、CSISにおけるCommitment to growth、社会保障財政法における医療保険支出目標額の状況、気候変動に対するポジションや政策に関するLEEMの取り組み、欧州共通医療技術評価(HTA)、AMR対策について質問を投げかけ、LEEMより回答がありました。

3. Digital Health

LEEM’s Digital Health Academy

Digital Project Manager, LEEM Livia Darmon 氏                                          

このセッションでは、デジタル変革において医療関連企業をサポートするため、LEEMが創設したDigital Health Academyについて紹介がありました。Digital Health Academyは3つの柱として、広範囲な治療分野における継続的な学習、テーマに応じたカンファレンス、イノベーションのハブを掲げ、製薬会社25社以上を集め、LEEM Digital Commissionの最優先事項として実行されていること、最終的にはヘルスケア企業を超えて医療専門家やデジタル企業等、より幅広いオーディエンスに対応することを目指していくことについて説明がありました。

Current Status of Japanese Government

製薬協 国際委員会 欧米部会 デジタルヘルスグループ 岡本 雅子 リーダー                          

このセッションでは、日本におけるデジタル化促進のための政府の取り組みについて紹介がありました。2021年9月に新しく設立されたデジタル庁のミッション、ビジョンと4つの柱、マイナンバーカードの普及、プログラム等の最先端医療機器の審査に関する抜本的な改革である「DASH for SaMD」、日本におけるテレメディシンの状況、バーチャルな臨床試験分野での取り組み等、日本の最新情報を共有しました。

Discussion
製薬協からは、COVID-19のパンデミック以前と比べたテレメディシン機能を使うことによるバーチャルな臨床試験の導入の状況、Digital Health Academyにおけるイノベーションハブの今後の取り組み方針、フランスで承認を受けた治療用アプリの状況に関する質問を投げかけ、LEEMより詳細な回答がありました。

LEEMからはヘルスデータの取り扱いにおける個人情報の保護に関する質問がありました。

終わりに

最後に製薬協の中川祥子常務理事は、LEEMとの定期会合は今回で27回を迎え、今後もこの歴史ある2国間の定期会合において両者の連携がますます強化されることを期待していること、また、フランス・パリでオリンピック・パラリンピックが開催される2024年には本会合は30周年となるため、今後3年間はさらに、いくつかの観点で実りある連携をしていきたいと述べました。

今回、各セッションにおいて活発な意見交換が行われ、相互に理解を深めることができ、非常に有意義な会合となりました。

次回は2022年度に開催の予定です。

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ)

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