トピックス 「バイオジャパン2021」開催・参加報告 バイオ医薬品委員会セミナーについて

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「バイオジャパン2021」が2021年10月13日~15日に、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催されました。例年同様に併催された「再生医療Japan 2021」に加え、2020年度よりリニューアルした「healthTECH JAPAN 2021」も引き続き開催されました。2021年もコロナ禍での開催となりましたが、10月に緊急事態宣言が解除され状況も少し落ち着いた中、会場とオンライン形式のハイブリッドにて行われました。2020年同様に参加者・会社の減少が懸念されましたが、2020年を超える約1万4890名が来場し、事務局のご努力とともに、海外も含め幅広く事業機会を求めるオープンイノベーションの指向が、本会の成功につながったものと確信しました。製薬協も主催団体の一つとして参加し、会員会社のみなさんが多数発表するとともに、多くの会社・団体がアライアンスブースを出展し、アカデミアやベンチャー等と面談する等、活発な情報交換と交流が行われました。

セミナー会場の様子

「バイオジャパン2021」バイオ医薬品委員会セミナー

次世代バイオ医薬品における製造基盤の強化

製薬協バイオ医薬品委員会では、バイオ医薬品の製造に関する話題について、アカデミアおよび産業界のそれぞれの立場で議論することを目的として、「バイオ医薬品製造最前線」と題した取り組みを過去数年間にわたり続けており、2021年度はCMO(受託製造)/CDMO(受託製造開発)の活用を目指した「次世代バイオ医薬品における製造基盤の強化」というタイトルで、2021年10月14日に開催しました。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科特命教授で、バイオ医薬品委員会の内田和久技術実務委員長がコーディネーターとなり、“三密”対応で制限もある中、所属の異なる立場から幅の広い議論が行われ、会場は満席となりました(参加者約120名)。

セミナーのイントロダクション

内田技術実務委員長による現状のオーバービューがありました。国内外で新しいモダリティによるバイオ医薬品、ワクチン(たとえば次世代抗体、ウイルスベクター、mRNA/DNAワクチン等)の開発が進められています。このような革新的な治療薬、ワクチンを迅速に開発し、安定供給するためには製造基盤の整備が必要です。また、国家安全保障上の観点から国内での製造の重要性も高まっています。新規モダリティに対応したバイオ医薬品製造基盤強化に向けたアカデミア、製薬企業、CMO/CDMO企業の戦略・最近の取り組みや、アカデミア等のシーズ展開に向けたバイオ製造の現況等について理解し、国内における製造基盤整備の方向性・あるべき姿やバイオ人材像等について議論を進めるとの説明がありました。

さらに、

1. CMO/CDMOも含めたバイオ医薬品製造基盤の将来像についての展望
2. ワクチンとバイオ医薬品の設備上の接点
3. 製造基盤における課題(例 ADC:高活性設備対応となると委託先は国内にない)
4. バイオ専門人材の不足と必要性
5. CMO/CDMOの新たな活用の仕方(開発・製造の水平分業)
6. アカデミアの視点(小回りの利く施設の国としての整備)
7. ワクチン開発・生産体制強化戦略について

といった各演者が講演中に触れる議論のポイントが示され、その後、4名の発表者から、この議論のポイントに即して、プレゼンテーションがありました。

各演者による講演内容

まずCMO/CDMOを活用する立場である第一三共バイオロジクス本部常務執行役員バイオロジクス本部長の籔田雅之氏より、「第一三共における次世代バイオ医薬品の製造技術基盤強化に向けた取り組み」についての発表がありました。製薬企業内で、既存の保有しているバイオ技術基盤を次世代バイオ医薬品に展開するものの、すべての技術を社内にそろえるのは困難であり、CDMOとの協業や、アカデミアや他社との共同開発、技術導入等による新たな技術基盤の獲得も必要である点、外部リソースも用いた人材育成が必要であることが述べられました。

製薬協 バイオ医薬品委員会
内田 和久 技術実務委員長

次に、CMO/CDMOの立場から、タカラバイオ取締役専務執行役員COOの峰野純一氏と、AGC執行役員化学品カンパニーライフサイエンス事業本部長の小室則之氏より発表がありました。峰野氏は、「タカラバイオの遺伝子治療CDMOとしての取り組み」というタイトルで講演し、国内に事業基盤があるCDMOの代表的な立場での発表を行いました。国内で遺伝子治療製品の製造を行うためのワンストップサービスの展開を目指し、さらに新たなモダリティに関してもその方針のもと事業拡大を行うことが話されました。また、海外のCDMOを買収しながら、世界各地に製造サイトを展開するタイプのCDMOの代表となる小室氏は「AGCの日米欧での次世代バイオ医薬品への取り組み」というタイトルの講演で、日米欧3極で治験から商用まで、高いレベルのGMP生産体制を展開しつつ、最先端の技術で製造開発の課題を解決して、顧客ニーズに応える戦略をとっていると述べていました。

さらに、アカデミアからは、大阪大学医学部附属病院未来医療センター准教授の岡崎利彦氏から「アカデミアCPCからの提言」というタイトルで講演がありました。各アカデミアが保持する細胞加工施設(Cell Processing Center、CPC)の運営が、人的、予算的にも厳しい運営を迫られている点、さらにアカデミア発のシーズを効果的に企業へ受け渡す技術移転の仕組みの重要性と、それが海外ではうまくいっているが、国内ではできていない点を強調していました。

第一三共 バイオロジクス本部
常務執行役員 バイオロジクス
本部長 籔田 雅之 氏

まとめ

各演者の発表後、簡単な討論を行いました。その中で、「(1)製薬会社は、社内リソースを整理したうえで、各モダリティとそれに関する生産技術を社内で整備するか、CDMO等の外部リソースを活用すべきかを常に判断している。(2)大手CDMOは(1)のニーズに応えるため、事業の選択と集中より、どうしてもすべてのものを社内でワンストップでそろえることで、競争力を高めようとしている」ということが整理されました。

さらに、これらの流れの中で、「資本力の弱いアカデミアシーズは、国内で研究開発を続ける場合、どうしても初期フェーズの治験薬の製造等で開発資金がかかるので、(1)(2)の流れに乗りにくい(海外では、投資等なんらかの形でこの資金が供給される)。そのため、国内で、アカデミアシーズを企業に橋渡しするには、ある程度、国費を投入した病院と生産施設をリンクさせた橋渡し専門の研究・開発組織が必要である」との意見もありました。

次回の「バイオジャパン2022」は2022年10月12日~14日、パシフィコ横浜にて開催されます。

製薬協のブース

(薬事・バイオ医薬品部長 伊藤 哲史、バイオ医薬品委員会 技術実務委員長 内田 和久

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